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■「ぶたと燃料」は最低限必要な乗車前点検
リターンライダーとして四半世紀ぶりにバイクに乗るようになって、最初に感じたのは自分のイメージとスキルの乖離でした。
若い頃に乗っていたイメージでバイクを操作することはできないどころか、冷静に自分のスキルを見ると、公道を走るには不足している部分が多いと感じたのです。
そこでライディングスクールに行ってみようと思い立ったのですが、スポーツライディングを教えるようなスクールに行っても、自分のレベルでは猫に小判となるのは明らかです。
日常で役立ちそうなライディングスクールは、と探して見つけたのが、警察が実施している二輪車安全運転講習でした。白バイ隊員や安全運転指導員の方に公道で大事なポイントを教えてもらうのが、自分のニーズにもっとも合っていると感じたのです。基本的に講習無料というのも魅力でした。
二輪安全運転講習は座学から始まります。そこで白バイ隊員の方から出てきた言葉が「ブタと燃料」というものでした。
最初は、リターンライダーが、とても扱えないような高性能バイクに乗っていることを「豚に真珠」と注意喚起をするのかと思いましたが、「ブタと燃料」というのはそういう話ではありません。
安全運転の基本となる運行前点検、乗車するときに最低限チェックしたい項目を短くまとめた言葉だったのです。
●ブ=ブレーキ、タ=タイヤ、と=灯火類
ブ=ブレーキ
タ=タイヤ
と=灯火類
燃料=燃料残量
この4つの項目を、エンジンをかける前にチェックすべしというわけです。
二輪の場合は、ブレーキはエンジンをかけずとも効き具合は確認できます。レバーやペダルを操作したときにブレーキランプ(灯火類)がきちんと点灯するかも同時にするのがポイントです。ただしエンジンをかける前であっても、キーをオンにしないとブレーキやウインカーといった灯火類のチェックはできませんので、そこは注意が必要です。
タイヤについてはパンクしているかや傷ついているかどうかを目視するのはもちろん、空気圧についてもきちんと確認すべきということでした。たしかに、空気圧のチェックがおろそかになってメーカー指定値より下がっているとハンドリングが悪化するなどライディングに直接影響します。数値で管理できるよう、簡易的なものでもいいのでエアゲージを用意するのが理想ということです。
筆者は電動空気入れも用意して、空気圧を合わせるようにしていますが、ガソリンスタンドなどでは無料でエアを入れられるところも多いので、そうしたサービスを利用するのもいいでしょう。
●燃料メーターがない二輪はタンク内を覗いて確認
燃料残量についてはメーターを見ればわかるじゃないか、と思うかもしれませんが、意外なバイクが燃料計を用意していなかったりします。
筆者の愛機であるホンダCBR1000RR-Rには燃料計はなく、残量警告表示があるのみです。
ですから、乗る前には必ずバイクを揺らして燃料タンク内でガソリンが揺れる音を聞いています。残量が少ないな、と感じたらキャップを開けて中を覗き込むこともありますが、基本的にはチャプチャプと音がするようになったら給油しています。ガス欠というのは、簡単に防ぐことができる一方で、いざエンジンが止まってしまうと余計な危険を招くことになるからです。あえてリスクを背負いにいく必要はないと思います。
その意味では、ツーリング先でも休息から走り出す前には「ブタと燃料」を意識することはトラブル防止に有効ではないでしょうか。
さらに個人的には、エンジンをかける前に数歩離れてバイクの全体を見るようにしています。実際の経験としては洗車したときに使ったウェスをマフラーのところに置きっぱなしだったことに気づいたことがありました。そのまま走り出してもウェスを落とすだけだったかもしれませんが、もしチェーンに絡まっていたら…と思うとゾッとします。
うっかり忘れてしまうこともありますが、これからも「ブタと燃料」を意識していこうと思う次第です。