HKSがハイブリッド化した電動トランポに興味津々【東京オートサロン2024×バイクのコラム】

■ハイエースがハイブリッド&マルチ燃料に進化

HKSの「eハイエース・マルチエネルギー・コンセプト」は2015年式のワイドスーパーロング車をベースとしている。
HKSの「eハイエース・マルチエネルギー・コンセプト」は2015年式のワイドスーパーロング車をベースとしている。

カスタマイズカーの祭典、東京オートサロンが2024年も千葉県・幕張メッセで開催されました。

基本的には四輪イベントですので、バイクの展示はけっして多くないのですが、二輪ファン目線でとても気になる車があったので、情報共有したいと思います。

それが、HKS「eハイエース・マルチエネルギー・コンセプト」です。

HKSといえば、日本のチューニング業界をリードする上場企業であり、ガソリンエンジンのCNGコンバージョンやバッテリー交換式トラックの開発プロジェクトに関わるなど、環境テクノロジーにも強い会社として知られています。

このコンセプトカーは、2.7Lガソリンエンジンを積むハイエースを、HKS独自のハイブリッドユニットを使うことでシリーズハイブリッド化するキットを組み込んだプロトタイプ。さらに、エンジンはガソリンとCNGの両方に対応するバイフューエル仕様となっているのもポイントです。

●ガチの8耐参戦マシンをディスプレイに使う!

荷台には、かつてHKSカラーで鈴鹿8耐に参戦したマシンがディスプレイされていた。
荷台には、かつてHKSカラーで鈴鹿8耐に参戦したマシンがディスプレイされていた。

ベースとなっているのは、2015年式のハイエース・ワイドスーパーロング車。ここまで書けば、カンのいいバイクファンなら気づいたかもしれません。

HKSのハイブリッドeハイエースは、レーシングバイクをサーキットなどに運ぶトランポ仕様として作り込まれ、ディスプレイされていたのです。

リヤスペースに載っているのは、HKSカラーのYZF750。これは単にカウルをカラーリングしたものではありません。

ハイブリッド化しても荷台の使い勝手に影響ないのは特筆ポイント。電気を利用できるので車内でタイヤウォーマーを使うことも可能。
ハイブリッド化しても荷台の使い勝手に影響ないのは特筆ポイント。電気を利用できるので車内でタイヤウォーマーを使うことも可能。

1990年代に鈴鹿8耐に参戦したホンモノのマシンを引っ張り出してきたというのですから、昔からの8耐ファンであれば感涙ものではないでしょうか。

トランポとしてディスプレイしているのは、ハイブリッド&バイフューエル化しても、荷室への悪影響が皆無だからという点をアピールするため。ハイエースの使い勝手を損なうことなく、電動コンバージョンすることは開発時に重視したテーマだったといいます。

事実、ラゲッジフロアは完全にフラットで、トランポとして最適化されていることが確認できました。マシンと工具箱を収めても余裕が感じられるのは、さすがハイエースといったところでしょう。

●プラグイン対応の災害対応も意識した仕様

発電用モーターと駆動用モーターをトランスミッションのスペースに収める。ディファレンシャルなどはベース車をそのまま使う。
発電用モーターと駆動用モーターをトランスミッションのスペースに収める。ディファレンシャルなどはベース車をそのまま使う。

HKSのeハイエース・コンセプトは、外部充電に対応したプラグインハイブリッドにもなる設計です。エンジンで発電するだけでなく、走行前に充電した電力を走行に利用できるわけです。

さらに、走行用バッテリーの電力を引き出して、コンセントにつないだ電化製品を利用することも可能。レーシングマシン用トランポであれば、タイヤウォーマーを車両からの電力供給で動かすことも可能なわけです。

もちろん、電動工具やセッティングに利用するパソコンなどへの電力供給も可能なわけで、トランポとしての使い勝手も非常に優れたものとなりそう。

プラグインハイブリッドへのコンバージョンは、キャンピングカーのベースなど、ハイエースのホビーユースにおける可能性を広げてくれるのです。

床下には、ガソリンタンク、ハイブリッド用バッテリー、CNGタンクが見事に収まっているのが確認できた。
床下には、ガソリンタンク、ハイブリッド用バッテリー、CNGタンクが見事に収まっているのが確認できた。

あらためてHKS eハイエースのメカニズムを整理すると、エンジンは発電用モーターだけを動かすシリーズハイブリッド方式となっています。

コンバージョンのしやすさを考え、もともとのトランスミッションがあったスペースに、発電用モーターと駆動用モーターを背中合わせに配置。駆動用モーターはプロペラシャフトとベース車のディファレンシャルを利用して、後輪にパワーを伝えるという構造です。

こうした設計は、コストを抑えたコンバージョンを考慮したものですが、それはプラグインハイブリッド車が災害時の電力供給などに”使える”車として、地方自治体などで評価されているという背景もあります。

HKSのeハイエースは、趣味の世界だけでなく、公共的なシーンでの活躍も意識しているというわけです。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる