いよいよ2022年9月23日(金・祝)に開業する西九州新幹線・武雄温泉〜長崎間に乗ってみました

■在来線+新幹線のリレーで所要時間は30分短縮

博多から長崎へ向かう新しいルートの一部となる、西九州新幹線・武雄温泉〜長崎間が9月23日(金・祝)に開業します。

開業を前に連日訓練運転を行っているほか、試乗会も行われています。9月10日には報道関係者向けの試乗会が開催され、実際に乗車してみました。

連日走り込みを続けている西九州新幹線

西九州新幹線が開業した後の博多〜長崎間のルートは、博多〜武雄温泉間を在来線の特急「リレーかもめ」または「みどり(リレーかもめ)」に乗車して、武雄温泉駅で西九州新幹線「かもめ」に乗り継ぐ「リレー方式」となります。

乗り換えは同一ホームによる対面方式としていて、乗換時間は3分程度としてロスを減らし、博多〜長崎間の所要時間を従来よりも30分程度短縮します。

今回の試乗会では佐賀駅から「リレーかもめ」を想定した臨時列車を運行して、対面乗り換えを体験できるようになっています。

●実際に乗ってみた

佐賀駅に入線してきた臨時列車は「リレーかもめ」にも使用される885系電車。現在は博多〜長崎間を運行している特急「かもめ」に使用されている車両ですが、西九州新幹線の開業後は博多〜武雄温泉間を運行する「リレーかもめ」や博多〜佐世保間を運行する「みどり」に転用されます。

「みどり」も武雄温泉駅を経由する列車で、一部列車は西九州新幹線と対面乗り換えする「みどり(リレーかもめ)」としています。

佐賀駅に入線した885系の試乗会列車
車内表示器には「リレーかもめ」が表示されました

「リレーかもめ」試乗列車は10時に佐賀駅を出発。博多駅から肥前山口駅(西九州新幹線開業後は江北駅に改称)までは現在の「かもめ」と同じルートを走りますが、肥前山口駅からは長崎本線と分かれて佐世保線を西に進みます。

西九州新幹線との乗り換え駅となる武雄温泉駅には10時24分に到着。ホームの反対側にはN700S「かもめ」試乗会列車が待機しています。 在来線と新幹線の間には改札がないので、乗り換えはスムーズ。実際の運転での乗換時間は約3分となっています。

武雄温泉駅の様子。右が西九州新幹線で左が「リレーかもめ」

実はこの同一ホーム対面乗り換えは、2004〜2011年まで九州新幹線新八代駅で「つばめ」と「リレーつばめ」で実施していた方法で、すでに実績があります。

かつて行われていた九州新幹線新八代駅での対面乗り換え

西九州新幹線「かもめ」に使用する車両はN700S。JR東海が開発した次世代新幹線のプラットフォームを利用した6両編成。車体塗装や内装デザインは西九州新幹線の独自性を持たせています。

●シートの色が車両によって違うのもオシャレ

武雄温泉で出発準備中のN700S「かもめ」試乗列車

客席は全車普通車として、グリーン車は設定していません。1〜3号車は指定席で、JR九州が得意としている木材をふんだんに使用したリクライニングシートを2+2列で配置しています。

肘掛けにはインアームテーブルとコンセントを装備。クッションは厚みがあって柔らかく、座り心地は快適です。

なお、クッションは号車毎にカラーが異なります。また、3号車には車椅子対応座席と車椅子対応スペース、多機能トイレ、多目的室を設置しています。

4〜6号車の自由席は東海道・山陽新幹線用のリクライニングシートを3+2列で配置しています。しかしカラースキームが違うので印象は大きく変わっています。

武雄温泉駅を出発した西九州新幹線「かもめ」試乗列車は、ポイントを渡って下り線に入ると最高速度260km/hまで一気に加速していきます。さすがは新幹線で一番高い加速力2.6km/h/sを誇るN700Sです。

N700Sは山陽新幹線で最高速度300km/h運転を行っているので、性能的にはかなり余裕があって、乗り心地は非常に快適です。

佐世保線から離れていき、トンネルをいくつか通過すると嬉野温泉駅に到着。

嬉野にはかつて肥前電気鉄道の駅があったそうですが、1931年に廃止されていて、実に91年振りに鉄道が通るそうです。ちなみに肥前電気鉄道の痕跡はほとんど残ってないようです。

嬉野温泉駅を出発すると、再びいくつものトンネルを通過して長崎県に入ります。県境には峠があるので、トンネルも長め。逆に地上区間は一瞬です。

大村湾を臨むことができます

長崎県に入って数分走ると進行方向右側に大村湾が見えてきて、新大村駅に到着します。この付近は数少ない景色も楽しめる区間です。

新大村駅を出発してトンネルを抜けると諫早駅に到着。諫早駅からはまたいくつものトンネルを通過。最後のトンネルを出ると、そこはもう長崎の市街地で、程なくして長崎駅に到着します。

長崎駅に到着した試乗会列車
在来線ホームから見物している人たちも!

西九州新幹線「かもめ」は武雄温泉〜長崎間に22往復、車両基地のある新大村と長崎の間に下り2本、上り1本が設定されます。

武雄温泉駅から長崎駅までは各駅に停車しても所要時間は約30分。諫早駅にしか停車しない最速列車は24分程で走破してしまいますが、博多〜長崎間の所要時間が30分短縮される効果がどれほどとなるのか期待したいところです。

長崎駅を出発するN700S「かもめ」。このシーンがこれからの日常です

なお、博多〜武雄温泉間についてはまだ最終的な決定には至っていません。もし新鳥栖〜武雄温泉間がフル規格の新幹線で開業すると、博多〜長崎間の所要時間は大幅に短縮できるのはもちろんのこと、新大阪と佐賀・長崎を直結することができるのですが、果たしてどのようになるのか、今後の展開を見守りたいと思います。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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