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■マイナーチェンジを行ったポロと一部改良の208を比較試乗
2022年6月、輸入車のコンパクトカーで人気の高いVWポロがマイナーチェンジを行い、商品力に磨きをかけました。また、ポロと同じクラスのプジョー208は2022年3月に仕様変更を行い、インテリアが変更されています。
今回、欧州コンパクトカーで人気の高いVWポロとプジョー208を試乗することができたので、変更したポイントとともに、それぞれのインプレッションを紹介しましょう。
●パワフルな軽快さがあるポロR-Line
ポロは2022年6月のマイナーチェンジで、内外装の変更をはじめ、エンジンの変更。運転支援システムや快適装備の充実が図られています。
外観では、新デザインのフロントバンパーとリアバンパーを採用し、スポーティな印象を強めています。
この前後バンパーの採用によって、ボディサイズは全長4,085mm×全幅1,750mm×全高1,450mmと全長が長くなっています。
またフロントマスクは、ラジエターグリルとLEDヘッドライトを組み合わせて先進的なイメージとなっています。
さらにLEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”の採用により、ヘッドライトとデイタイムランニングライトそれぞれのLEDストリップが、ヘッドライトの下縁にそって縁取られることで個性的なシグネチャーを形成します。
ポロに搭載されている1L直列3気筒ターボエンジンは、最高出力95ps、最大トルク175Nmを発生。
マイナーチェンジ前と排気量は同じですが、ミラーサイクル燃焼プロセスをはじめ、バリアブルターボジオメトリー機構を採用。
さらに、ガソリンエンジンPMフィルターの採用により、厳しい環境性能に対応した高効率なエンジンとなっています。
組み合わされるトランスミッションは7速DSGで、駆動方式は2WD(FF)のみ。
燃費性能はWLTCモードで17.1km/Lを実現しています。このマイナーチェンジで1.5Lエンジンは廃止されました。
運転支援システムは、“Travel Assist”と呼ばれる同一車線内全車速運転支援システムを採用。高速道路なでの移動中の安全性の向上と疲労の軽減に寄与しています。
また、LEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”はフロントカメラで対向車や先行車を検知し、マトリックスモジュールに搭載されたLEDを個別に制御することで最適な配光を可能としています。
快適装備では、9.2インチの大型モニターを搭載した純正インフォテイメントシスム”Discover Pro“を採用。
そしてデジタルメータークラスターやタッチコントロール式エアコンディショナーパネルを採用しており、先進的なインテリア空間を実現しています。
グレード構成は4タイプ。
従来のTrendlineに代わりLED ヘッドライトなどを標準装備するActiveBasic、Comfortlineに代わりデジタルメータークラスター“Digital Cockpit Pro”などを標準装備するActive。
そしてHighline に代わり同一車線内全車速運転支援システム“Travel Assist”やLED マトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”を標準装備するStyleを設定。
また、スポーティな専用内外装を身に纏ったR-Lineを設定しています。
今回試乗したのは、車両本体価格329万9000円のスポーティグレードのR-Lineです。
専用のエクステリアをはじめ、専用ファブリックシート、専用スポーツサスペンションに加えて、ドライバーの好みに合わせて、クルマの性格を変えられるドライビングプロファイル機能を標準装備しています。
装着されるホイールも215/45R17というサイズとなり、324万5000円のStyleと比べると、充実した装備内容から割安感を感じます。
今回は街乗りを中心に試乗しましたが、専用のスポーツサスペンション+215/45R17というサイズのタイヤによる乗り味は、全く硬さを感じることのない輸入車らしい芯の通ったものです。段差を乗り越えたときなどの段差はややダイレクトですが、収束が速いので非常にキビキビ感が強調されています。
やはりコンパクトカーのポロは、キビキビとした走りは魅力です。
スポーツサスペンションらしく、無駄な動きは非常に抑えられており、ドライバーのステアリング操作に対して、非常に素直に反応してくれるので、低い速度域でも運転することが非常に楽しめます。
R-Lineと背もたれに刻印された専用のシートは、座り心地が抜群で、ロングドライブでも体をしっかりと支えてくれるので、疲れにくいのが特徴です。
これまでベストバランスと思っていた1.5Lエンジンが廃止されましたが、今回試乗した1Lエンジンで全く不満に思う点はありませんでした。3気筒特有の振動や騒音もしっかりとチューニングされていて、質感が高くなっています。
7速DSGによる電光石火のシフトチェンジによって、常にトルクバンド内にエンジン回転を収めてくれるので、どんなシーンにおいても鋭い加速性能を発揮してくれます。
これほどパワフルで軽快さを感じられるのであれば、1Lという小排気量でも十分満足できるでしょう。
●スポーティさを全面に押し出したプジョー208GT
一方、プジョー208の現行モデルは2020年7月に日本に導入されました。ボディサイズは、全長4,095mm×全幅1,745mm×全高1,445mmとポロとほぼ同じ大きさとなっています。
プジョー208はCMPと呼ばれる最新のプラットフォームに、最高出力100ps、最大トルク205Nmを発生する1.2L直列3気筒ターボエンジンを搭載。
この1.2Lターボエンジンは、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを2015年から5年間連続で選出された名機と呼ばれるものです。
8速ATと組み合わされることにより、従来の3気筒エンジンのイメージを覆す低振動・低騒音を実現しています。
駆動方式は2WD(FF)のみで、WLTCモード燃費は17.9km/Lとなっています。
運転支援システムは、上級モデルと同じ充実したメニューのポロと比べると物足りなさはありますが、衝突軽減ブレーキのアクティブセーフティブレーキをはじめ、アクティブクルーズコントロールなど標準装備となっています。
そして、プジョー208は2022年3月に一部改良を実施。ガソリン車のオートマチックセレクターを指先だけで操作できるトグルタイプに変更。
この変更によってよりストレスフリーな操作性、センターコンソールの収納スペースの改善を図りました。
今回試乗したのは、車両本体価格333万7000円のGT。205/45R17というサイズのタイヤを装着した最上級モデルです。
オプション装備として10万2000円のパノラミックサンルーフそして25万3330円のナビゲーションシステムを装着しています。
プジョーはしなやかなネコ足が特徴と言われますが、デビュー当初の208はスポーティにやや触れていて、ネコ足というよりは硬さが全面に出た味付けでした。
スポーティと言えば聞こえは良いのですが、リアシートに座ると、路面からの衝撃がダイレクトにお尻に当たり、快適とは言えませんでした。
しかし、一部改良でトグルタイプのオートマチックセレクターを採用した試乗車は、この硬さの目立つ足回りから、しなやかさが特徴のネコ足へと変わっていました。
路面の荒れた部分を走行しても、衝撃をいなしてくれます。
コーナリング時では、適度なロールをしながら、スッとコーナーを駆け抜けていく回頭性の良さを感じました。
ポロとは全く違うアプローチでスポーティな走りを表現しています。
高バランスのポロに対してしなやかな乗り味が強調されたプジョー208。どちらも国産車とは一線を画した乗り味が特徴となっています。
個人的にはスポーティな走りを求めるユーザーならばプジョー208。家族での移動も考えているユーザーならば、運転支援システムが充実したポロがオススメです。
(文・写真:萩原 文博)