目次
■三菱自動車にとってアイミーヴ以来の純電気自動車
日産自動車と三菱自動車が共同開発してきた軽・電気自動車がついに発表されました。ご存知のように日産版の名前は「サクラ」、三菱自動車のほうが「eKクロスEV」といいます。
これまで両社が共同開発してきた軽自動車と同じく、メカニズムやボディ骨格は共通でフロントマスクの意匠などによってブランドごとの差別化をしている姉妹車となっています。
EV(電気自動車)の主要コンポーネントであるモーターのスペックは、最高出力47kW・最大トルク195Nm。航続距離に影響を与えるバッテリー総電力量は20kWhで、一充電航続距離は180km(WLTCモード)と発表されました。
単純にバッテリーをもっと積めば航続距離を伸ばすことは可能ですが、それでは価格も上昇してしまいますし、軽自動車という限られたスペースを考えると居住空間を減らしてしまうことにもなります。
日産と三菱自動車のエンジニアが熟考を重ね、軽自動車の使われ方を考えた結論が180kmの一充電航続距離であり、そのために必要なバッテリーが20kWhだったという見方もできます。
ちなみに、180kmの航続距離というのは1週間に1回充電すれば運用できるというイメージだといいます。たしかに毎日片道15kmの通勤に使うとして、平日5日間での走行距離は150kmほどです。こうしたシチュエーションを想定すると、新型の軽EVが積むバッテリーは最適なバランスといえるのかもしれません。
●eKクロスEVの一充電航続距離は180km
ちなみに、カタログスペックにおける航続距離180kmというのは、三菱自動車の軽EV「アイミーブ」の航続距離と同じくらいでした。
たとえば、2011年モデルのスペックを振り返ると、16kWhのバッテリーを積んだGグレードの一充電航続距離はJC08モードで180km、車両重量は1110kgとなっていました。
ちなみに、eKクロスEVの車両重量は1060~1080kgとなっています。バッテリー総電力量は増えつつ、軽量化を実現しているというわけです。
それにしても当時から軽自動車の使われ方をリサーチすると、180km程度の航続距離があれば十分にカバーできるという判断だったのは興味深いところです。
軽自動車ユーザーの使い方やニーズというのは10年経ってもさほど変わっていないのかもしれません。この機会にアイミーヴの中古車を見つけてきても同じように使えると考える人も出てきそうです。
もちろんJC08モードとWLTCモードでは測定時の走り方が異なるため、リアルワールドでの航続距離は変わってきます。その意味では新しいeKクロスEVのほうが使い勝手がいいのは当然です。CEV補助金を考えると、車両価格は185万円を切る設定ですから、あえてアイミーヴの中古車を選ぶメリットはないといえるでしょう。
●SCiBアイミーブの航続距離は120kmだった
ただし、そう簡単に話は進まないような気もします。というのも、アイミーヴの中でも、2011年に追加設定されたMグレードやその後継機がいまだに中古車市場で150万円に迫る価格で販売されているからです。
その理由は、2011年モデルのMグレードが東芝製SCiBバッテリーを積んでいたからです。このバッテリーは総電力量10.5kWhと小さく、JC08モードでの航続距離も120kmと短いのですが、SCiBが劣化しない特性を持っているということで、16kWhバッテリー車が順調に買いやすい価格になっているのに対して、高値安定状態をキープしています。
とはいえ、新車のeKクロスEVが実質的に185万円ほどのコストで買えるようになっている2022年に、10年落ちの中古車が150万円前後で流通し続けるというのは違和感があります。いくらバッテリーが劣化しづらいといっても所詮は10.5kWhの総電力量ですから絶対的な航続距離は長くなりようがありません。
しかしながら、中古車相場というのはユーザー人気の影響を多分に受けるため三菱自動車から軽EVの後継車が登場したから単純にアイミーヴ全体の相場が下がるとはいえません。
とくにeKクロスEVは電気自動車マニアの中では劣化しやすいことが指摘されがちな日産リーフと同系統のバッテリーを積んでいるといいます。そうなると、ますますSCiBバッテリーの10.5kWhアイミーヴの価値が再上昇する可能性もあります。
いずれにしても、eKクロスEVの登場という要因によってアイミーヴの中古車相場がどのように動くのでしょうか。新型・軽EVの売れ行きだけでなく、中古車相場にも注目していきたいと思います。