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■最高出力275馬力の2.4Lターボは事実上のフラッグシップ
●1.8L仕様も併売、2.4Lの価格は438万9000円~
スバル・レガシィツーリングワゴンの伝統を受け継ぎ、国産唯一のスポーツツアラーとして磨きをかけ続けるレヴォーグが、商品改良を発表しています。
注目は、新グレード「STI Sport R」です。
サスペンションやステアリングを可変させるドライブモードセレクトを搭載して、キャラの変化が楽しめるのはレヴォーグSTI Sportの特徴ですが、追加された新グレードSTI Sport Rは心臓部が2.4L水平対向ガソリン直噴ターボに進化しています。
従来からの1.8Lターボのスペックは最高出力130kW、最大トルク300Nmのところ、新しい2.4Lターボは202kW、375Nmとなります。もう、これだけでもパフォーマンスアップしていることに期待が高まります。
さらに四駆システムについても、1.8Lターボ車がアクティブトルクスプリット方式なのに対して、2.4Lターボ車では前後駆動力配分45:55を基本とするVTD-AWDとなっているのも違いです。
トランスミッションについては、いずれもチェーン式CVTであることには変わりありませんが、STI Sport Rには変速比幅を広げ、ダイレクト感をアップさせた「スバルパフォーマンストランスミッション」が与えられているのもトピックスのひとつ。とにかく走りを磨いた仕様というわけです。
そんな新しいレヴォーグSTI Sport Rのメーカー希望小売価格は438万9000円(アイサイトX装着車は477万4000円)。1.8LターボのSTI Sportが370万7000円(同409万2000円)ですから、パワートレインのグレードアップで約70万円の価格差があるということになります。
はたして、価格差に見合うだけのパフォーマンスの違いはあるのでしょうか。
●リニアリティと環境性能を実現した新型ターボ
旧型レヴォーグは1.6Lターボと2.0Lターボのラインナップとなっていました。今回の2.4Lターボは旧型における2.0Lターボの後釜という見方もできます。
そうした視線でみると、スペックが見劣りすると感じるファンは少なくないかもしれません。なぜなら、旧型の2.0Lターボは300馬力だったのに対して、新しい2.4Lターボは275馬力にとどまっているからです。
その辺りを気にしながらプロトタイプに試乗してみましたが、たしかに2.4Lという排気量に期待するほどのパワー感はありません。かなりブーストが抑えられているというか、小さめのタービンを余裕の排気量で回しているという感触で、完全にリニアリティ重視のセッティングとなっています。
しかし、それこそがレヴォーグSTI Sportの良さを引き出しています。具体的にいうと、大きく回り込んでいるようなコーナリングにおいてアクセルコントロールがしやすく、ボトムスピードも高くなり、また脱出時にアクセルを踏み込むタイミングも早くできます。
アクセル全開での弾けるようなパワー感においては旧型の2.0Lターボに軍配があがりますが、新しい2.4Lターボはそれよりもアクセルコントロールが楽しめて、なおかつシャシーのマッチングを考えたセッティングになっているという印象でした。
いずれにしても、この2.4Lターボエンジンは国内向けとしてはフルモデルチェンジを発表したWRX S4とレヴォーグSTI Sport Rにしか搭載されない、フラッグシップ的パワーユニットです。厳しくなる燃費規制の中、この2.4Lターボユニットを容易に横展開できるかといえば、それが難しいというのが現実でしょう。
つまり、2.4Lターボのパフォーマンスにふさわしいハンドリングを持っているレヴォーグだからこそ、このエンジンが与えられたという風に考えることもできます。実際、袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗しているときには、ボディ後方にラゲッジスペースを持つステーションワゴンであることを忘れてしまうほど、走りを楽しむことができました。
そこには、レヴォーグSTI Sportに搭載されているドライブモードセレクトで「スポーツ+」を選んだこともポイントなのですが、前述した新制御の改良型CVT「スバルパフォーマンストランスミッション」が、コーナリング性能を楽しめるように変速比をホールドした制御となっていたことも、大いに貢献していると感じました。
とにかく、スポーツツアラーというレヴォーグの持つオンリーワンのキャラクターが、2.4Lターボによってさらに引き上げられていることは確実です。
●エンジンの余裕は日常使いでも感じられる
さて、あらためて1.8LターボのSTI Sportと2.4LターボのSTI Sport Rの価格差である約70万円を出す価値はあるのでしょうか。
最初にお伝えしたいのは、パワーユニットの違いはピーク性能だけでなく日常使いでも感じられるということです。もともとレヴォーグというのは、ハンドリングが楽しめるステーションワゴンではありますが、2.4Lターボに合わせて各部をセットアップしたことで、全体的にレスポンスが上がっています。
つまり、何の気なしに乗っているだけでも、思いのままに操れる感は強まっています。
また100km/h巡行からの加速といったシチュエーションでは、軽くアクセルを踏み足しただけで素早く加速します。高速道路の制限速度が120km/hに上がっていくトレンドの中で、高速域での余裕というのはありがたい部分かもしれません。
とはいえ、1.8LターボのSTI Sportとの比較であれば、70万円の価格差に見合うだけのパフォーマンスアップをしているとは断言できないとも思います。
サーキットで比べると別ですが、通常の走り方においては1.8Lターボでも十分なパフォーマンスを持っていますし、無理している感じもありません。公道を走るぶんには、どちらのエンジンであっても常に余裕を感じていられるはずです。
その意味では、スバルのフラッグシップに乗っていたいという気持ちが強い方が、レヴォーグSTI Sport Rを選ぶと幸せになれるのではないでしょうか。
スバルSUVのフラッグシップであるレガシィ・アウトバックも日本仕様では1.8Lターボになっていることを考えると、レヴォーグSTI Sport Rは、かつてレガシィツーリングワゴンのスポーツグレードして名を馳せた「GT-B」の後継的モデルという風に理解すべきなのかもしれません。
(山本 晋也)