ダイハツ・ストーリアはお茶目な宇宙人顔!?イタリアンコンパクトのような佇まい【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第5回】

■ストーリアは超越した表現をめざしたフロントマスクが個性的

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第5回は、コンパクトながら自動車らしい上質さを目指した、新感覚ハッチバックに太鼓判です。

ストーリア・メイン
豊かな曲面で構成されたボディが自慢

1997年に創立90周年を迎えたダイハツは、環境への負荷など、あらためてコンパクトカーの価値を見直すべく「We do COMPACT」をスローガンに掲げました。その第1弾として、翌年の1998年に発表されたのが「ストーリア」です。

「新1000ccスタイル」を商品コンセプトに「より広く、より小さく」を目指したボディは、ショートノーズ、ロングキャビン、ロングホイールベースが基本。大人5名とゴルフバッグ2個を載せるべく、ノッチを付けたセダンスタイルを特徴としました。

一方、コークボトル形状のプランビューは、デザインテーマである「のびやかさ、ゆとりの演出」を表現したもの。どこかイタリア車を思わせるフォルムや佇まいは、やはり狙いとされた「上質」「個性」にも通じています。

ストーリア・フロント
まるでジャガーのような楕円のグリルが上質

フロントは、プラスティッキーさを排除し、往年の自動車らしさを表現するため、あえてプロテクターをメッキ製に。まるでジャガーやアバルトのような楕円グリルとの組み合わせが、時代を超越した表現を見せます。

滑らかで広いボンネットは、アーモンド形状の大きなランプで引き締められます。このランプは、同時にユニークでお茶目な表情を醸し出すことが特徴で、他にはない、いわば「宇宙人顔」を作っています。

サイドビューでは、大きくウネったキャラクターラインが特徴。パネル面は非常に柔らかですが、しかしラインはしっかり出ていて、モデラーの苦労が垣間見えるところです。さらに、下半身の広いパネルが弱々しく見えないよう、ホイールアーチモールが奢られました。

6ライトの大きなキャビンはクラスを超えたものですが、ボディの抑揚に上手く溶け込ませることで違和感はありません。リアドアで消える特徴的なサイドモールは社内でも賛否があったといいますが、伸びやかさを出すために既成概念を切り崩しました。

ストーリア・サイド
ショートノーズ、ロングキャビンのサイドビュー

●どこにもない個性を打ち出したい

リアビューでは、フロントのアーモンド形状を半分に切ったようなランプが、サイドの抑揚の流れをしっかり受け止めています。特徴的なノッチは、3次元曲面のリアガラスとともに、非常に豊かな面を構成します。

一方、インテリアデザインのテーマは「エモーショナル&エフィシャンシー」。助手席側の大きなポケットなど機能的なレイアウト、新しいシボや塗装、あるいは本革シートなど、上質な演出が商品コンセプトに合致します。

ストーリアは、当時のデザイン部が新体制になってからの最初の商品だったといいます。たとえば、欧州車にも負けない個性的なボディカラーは、コンパクトであってもオリジナリティを強く打ち出そうという新しい波から生まれたものです。

しかし、あまりに個性的なスタイルは、残念ながら2代目に継続することが叶いませんでした。それでも、当時のダイハツ車には、たしかに現在には見られない個性と自負が感じられるのです。

■主要諸元 ストーリア CX 2WD(5MT)
形式 GF-M100S
全長3660mm×全幅1600mm×全高1450mm
ホイールベース 2370mm
車両重量 840kg
エンジン 989cc 直列3気筒12バルブDOHC
出力 60ps/6000rpm 9.6kg-m/3600rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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