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■耐久信頼性だけでなく出力、燃費などに大きな影響を与える
●性能や使用環境に見合った規格のオイルを使用してこそバイク本来の性能を発揮
バイクのエンジンオイルは、過酷な運転条件や環境条件でも適切に潤滑機能を発揮しなければいけません。そのため、エンジンオイルはバイクの性能や用途、使用環境などに対応できるように、性状によっていくつかの規格に分類されています。
オイルの役割と規格、それらの性状の特徴について、解説していきます。
●エンジンオイルの基本的な役割
高速で回転運動、往復運動するエンジン部品は、オイルの潤滑作用によって部品を保護しています。また、その他にも以下のような作用が働き、摩擦や摩耗を軽減して耐久信頼性を確保しています。
・気密性を保つ密封作用
・燃焼で発生する熱を吸収して放出する冷却作用
・局所的な荷重や圧力の上昇を油膜で分散させる緩衝作用
・錆や腐食からエンジンを守る防錆作用
・燃焼による汚れを洗い流す洗浄作用
●オイルの種類
オイルは主成分となるべ-スオイルと添加剤で調製されます。ベースオイルとしては、植物性オイル、鉱物性オイル、化学合成オイル、半化学合成オイルの4つに分けられます。
・植物性オイル
植物の種子から採った油をベースにしたもので、潤滑性能に優れています。ただし、酸化しやすいので一般のバイクには向かず、主にレース用バイクに使われています。
・鉱物性オイル
ガソリンや灯油などのもとになる原油から製造されます。もっとも古くからあるオイルで、酸化しにくいのが特長です。
・化学合成オイル
化学的に作られたオイルで、不要な成分が含まれていないので、劣化しにくく低温から高温まで安定した性能を発揮します。ただし、生産コストが高いのが課題です。
・半化学合成オイル
鉱物性オイルに化学合成オイルを混合したもので、高性能の割に安価なのが特長です。
●オイル粘度の重要性
オイルが潤滑作用を発揮する上で重要なのは、流動性を示す粘度です。
粘度は温度に大きく依存し、温度が低いと粘度は高く「ネバネバ」状態に、温度が高いと粘度が下がり「サラサラ」状態になります。粘度が高いと高温でも油膜が形成されますが、粘性抵抗が大きくなり燃費や出力が悪化します。一方で粘度が低いと、粘性抵抗が小さくなり燃費や低温始動性は向上しますが、油膜切れが発生しやすくなります。その結果、潤滑作用が低下してオイル消費の増加や摺動面の損傷を招きます。
最高油温で安定した油膜が形成できる粘度で、燃費のために低温で低い粘度が保持できるエンジンオイルが理想です。
●何を見たらオイルの粘度は分かる?
粘度の指標としては、SAE(米国自動車技術者協会)が規定したマルチグレード「〇W-△」が一般的に使われています。どれぐらいの低温までエンジンの始動が可能か、どれくらいの高温までエンジンが壊れず耐えられるかを示す指標です。
〇Wは低温時の粘度指数を示します。数字が小さいほど粘度が低いサラサラのオイルで、低温時の始動性の目安を示します。
△は高温時の粘度指数です。数字が大きいほどネバネバのオイルで、高温時の油膜保持性を表しています。
その他、バイク専用オイルの規格としてJASO(日本自動車規格)規格とAPI(米国石油協会)サービス分類があります。JASO規格では、摩擦特性に関して4ストロークエンジン用として4グレード、2ストロークエンジン用として3グレードに分類されています。APIサービス分類では、摩耗防止性や酸化安定性、清浄性などオイルの耐久性を表しています。
オイルの潤滑性は耐久信頼性だけでなく、始動性や出力、燃費などに大きな影響を与えます。オイル交換時に、メーカー推奨以外のオイルを使う場合は、その性状や規格を十分理解することが重要です。
(Mr.ソラン)