●2度のセーフティカー導入で分かれたピット戦略
スーパーフォーミュラ第4戦オートポリス大会。15日午前中に行われた予選では今シーズンスーパーGTでもポールポジションを獲得し、先週のもてぎ大会では優勝も飾った#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手がスーパーフォーミュラでも今季初ポールポジションを獲得。
2番手にはスーパーGTでその野尻選手とコンビを組んでいる #6 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 福住仁嶺選手がフロントローに並び、その福住選手のSFでのチームメイト #5 DOCOMO TEAM DANDELION RACING 山本尚貴選手が予選3番手となるなど、HONDAエンジン搭載車が予選トップ3を独占しました。
そして迎えた決勝。予選でクラッシュした2台もチームメカニックの懸命な作業によって無事にダミーグリッドにつき、今シーズン初めて年間エントリーしている20台フルグリッドでの戦いとなりました。
42周を予定していたレースディスタンスは、11月の開催ということでタイヤのウォームアップの関係からフォーメーションラップを1周増やしたことから41周となり、気温22℃路面温度28℃という想定外の暑さとなったコンディションの下、定刻通り14:40にフォーメーションラップが始まります。
このフォーメーションラップでは5番グリッドについていた#65 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹選手がエンジンストールで出遅れますが、フォーメーションラップ中に追い抜きを行い、5番グリッドからスタートに臨みました。
全車がグリッドにつきシグナルレッドからのブラックアウトで決勝レースの火蓋が切られると、14番グリッド、今般のコロナ禍の影響で入国できない外国人選手に代わって開幕戦から代役参戦している #15 TEAM MUGEN Red Bullカラーのマシン笹原右京選手がエンジンストールしてしまい再スタートを切るも最後尾まで下がってしまいます。
上位陣では3番手山本選手が出遅れて5番手までポジションを落とす一方、6番手スタートの #50 Buzz Racing with B-Max 松下信治選手が抜群のスタートを決め、4番手までポジションアップ。FIA-F2参戦のため2年ぶりとなったスーパーフォーミュラ参戦でもその速さと存在感を見せつけます。
6周目、10番手を走っていた#4 KONDO RACING サッシャ・フェネストラズ選手の左リヤタイヤが外れてしまいコース脇にマシンを停めると、このタイミングでフォーメーションラップでのスタート手順違反によるドライブスルーペナルティが課せられた65号車大湯選手がピットロードに入りペナルティを消化しますが、その直後のタイミングでセーフティカー(SC)が導入されレースは1回リセットされます。
このSCランは、タイヤ交換義務が認められる10周目に解除され、その周には最後尾からスタートした#7 carrozzeria Team KCMG 中山雄一選手が、そしてその翌周には#64 TCS NAKAJIMA RACING 牧野任祐選手と、今般のコロナ禍でこれまでなかなか日本に入国することができず、今大会がスーパーフォーミュラ初レースとなった #51 Buzz Racing with B-Max シャルル・ミレッシ選手がピットインしタイヤ交換義務を消化しました。
ここオートポリスはタイヤにとって厳しいコースである上、想定外の暑さとなったことからタイヤ交換をできるだけ引き伸ばしたい思惑が各陣営にある中、早めのピットインと迅速なタイヤ交換作業でアンダーカットを狙った第2戦岡山のウィナー#39 JMS P.MU/CERUMO・INGING 坪井翔選手と、ドライブスルーペナルティで最後尾までポジションを落としながらもSCでその遅れを取り戻すことに成功した65号車大湯選手が12周目にピットイン、タイヤ交換義務を消化してピットアウトしていきます。
ところがその坪井選手の左リヤタイヤが無常のパンク!タイヤ交換から半周もせずにコースサイドにマシンを停め、そのままリタイヤとなってしまいます。
SC導入が予想されるこのタイミングでトップを走っていた16号車野尻選手がピットイン。
野尻選手はチームメカニックの非常に素速いピット作業でピットアウトし、すでにタイヤ交換義務を消化している64号車牧野選手の前でコースに復帰しますが、コールドタイヤでの走行で万事休す。しかしそのタイミングで狙い通り再びSCが導入されポジションをキープします。
このSCのタイミングで多くのマシンがピットになだれ込みタイヤ交換を行いますが、2番手を走行していた5号車山本選手、3番手#1 VANTELIN TEAM TOM’S ニック・キャシディ選手、スタートのエンジンストールから9番手までポジションを取り戻していた15号車笹原選手がステイアウトを選びます。
また、暫定トップでピットに入ってきた6号車福住選手はピット作業で他車に遅れを取り11番手まで、実質8番手までポジションを落としてしまいました。
●見えないライバルとの闘いを制したのは…
16周目にSCランが解除されると暫定トップの山本選手以下タイヤ交換義務を消化していない3台のマシンは、ピットインする事でのロスタイムぶんおよそ30秒を残り25周で稼ぐため全力でプッシュします。
また野尻選手以下すでにタイヤ交換義務を消化したマシンは、燃料のぶん重量は減っていきますがレースディスタンスの約2/3である25周を、ギャップを保ちながら現状のタイヤで走りきるタイヤマネジメントをしなければなりません。
17周目に5.1秒だった見た目上のトップ山本選手とタイヤ交換義務消化済みのトップ野尻選手とのタイム差は周回を重ねるごとに広がっていき、ファイナルラップ目前の39周目には25.4秒のギャップを築いた山本選手が40周目でピットイン。メカニックの素早いタイヤ交換作業で野尻選手の直後となる2番手でコースに復帰します。
そしてファイナルラップで山本選手は、それまでの周回より2秒も速い1.26.960というファステストラップを記録し野尻選手を猛追しますがわずか0.664秒及ばず2位でチェッカー。
ポールポジションからスタートした野尻選手が1週前に開催されたスーパーGTに続き2週連続での優勝をポール・トゥ・ウィンで見事に飾りました!
レースに「たられば」はありませんが、3位でチェッカーを受けた64号車牧野選手とは最終的には9秒以上のギャップがあったことを考えると、牧野選手の前でピットアウトできるタイミングで山本選手がもう1周でも早くピット作業をしていたら、結果はまた違うものになっていたのかもしれません。
こうしてHONDAエンジン搭載の3チームが表彰台を独占し、2週連続の国内トップカテゴリでのHONDA祭りとなりました。TOYOTAエンジン搭載車としては2度目のSCでのピット作業でジャンプアップした#18 carrozzeria Team KCMG 国本雄資選手の4位が最高位となりました。今回の結果を受けドライバーズランキングでは、野尻選手がポイントリーダーの#20 ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 平川亮選手から15ポイント差の3位、そこからさらに4ポイント差で4位に山本選手が上がってきました。
毎戦違うドライバーが優勝し混沌としてきたチャンピオンシップ争いも残すところダブルヘッダーとなる鈴鹿と最終戦の富士を残すのみ。
例年ではすでにシリーズチャンピオンも決まり、オフシーズンテストやルーキードライバーテストが行われている12月のスーパーフォーミュラ。未知の領域でのガチンコバトルで日本一速い男の称号を手にするのはいったい誰になるのか。いよいよ目が離せなくなってきました。
(H@ty)
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