目次
■バイクの性能を決定付けるエンジンのトルク特性と出力特性
●カタログに表示されたエンジン性能曲線図をみれば、トルク特性と出力特性が分かる
バイク用のエンジンも自動車用エンジンと同じ内燃機関で、エンジンの性能はトルクと出力で表されます。トルクは、燃焼エネルギーによってピストンを押し下げてクランクを回す回転力、出力はトルクに回転数を掛けた仕事量を表します。
エンジン性能の基本であるトルクと出力について、解説していきます。
●バイク用も自動車用も基本的には同じエンジン
バイク用のエンジンは、排気量や気筒構成に違いはあるものの、基本的には自動車用エンジンと同じ内燃機関です。
自動車用エンジンには、4サイクルのガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあり、バイク用エンジンには4ストロークガソリンエンジンと一部に2ストロークガソリンエンジンがあります。
エンジンは、燃料の持つ熱エネルギーをピストン運動に変換する熱機関です。燃焼が燃焼室内で発生するので内燃機関と呼ばれ、またピストンの往復運動で動力を発生するのでレシプロ(reciprocate:往復する)エンジンとも呼ばれます。
●エンジントルクとエンジン出力の関係
エンジンの燃焼エネルギーがピストンを押し下げ、連結したコンロッドとクランクシャフトによって回転力を発生します。この回転力をトルクといい、タイヤを回転させる動力源です。
トルクの単位はN・m(またはkg・m)です。自転車で言えば、ペダルを踏む力に相当し、加速力や登坂力に影響します。
エンジン出力は仕事量を表し、単位はkW(またはPS<馬力>)です。自転車で言えば、トルク(ペダルを踏む力)に回転数を掛けたものなので、出力が大きいほど自転車の速度が上がります。
トルクと出力の関係は、「出力=トルク×回転数」であり、両者は密接な関係があります。
●エンジンの性能とは
トルクや出力の総称であるエンジン性能は、動力性能だけでなく燃費やドライバビリティなどに大きな影響を与えるバイクを動かす原動力です。
通常、カタログには最大トルク値と最高出力値とともに、横軸をエンジン回転速度としたトルク特性と出力特性を示したエンジン性能曲線が記載されています。
エンジン性能曲線は、スロットル全開(アクセル全開)時に空燃比(吸入空気と供給燃料の重量比)と点火時期を最適化した時のトルク特性と出力特性を示します。
●自動車用エンジンとの違いは
バイク用エンジンは、自動車用に比べて高回転型が特徴です。
一般的な自動車用エンジンの最高出力回転は6,000rpm前後、一方バイク用エンジンの最高出力回転は10,000rpm前後で、15,000rpmを超えるモデルもあります。
エンジン出力は、先述のように「出力=トルク×回転数」なので、回転数を上げるほど出力は向上します。しかし、エンジン回転を上げるための障壁となるのは、ピストンの最高速度です。
エンジンでは、ピストンがシリンダーの中を往復運動しますが、一般的にピストン速度が30m/sを超えるとピストンとライナー間の潤滑油液膜切れを起こし焼き付きの可能性があること、またピストンの慣性重量の増大によってフリクションが増大するためです。
バイク用エンジンは、小排気量でショートストロークエンジンが多いのでピストン速度が遅いこと、さらに自動車に対して排気量あたりの重量が軽いので低中速域のトルクはそれほど必要ないため、高速トルク型の出力特性に設定できるのです。
バイク用エンジンと自動車用エンジンの違いは、同じ排気量のエンジンで比べてバイクの車体重量が自動車の1/4~1/5程度であること、また自動車ほど燃費や排ガスへの低減要求が厳しくないことに起因します。
これにより同じ内燃機関でありながら、求められるエンジン性能が自動車とは異なるのです。
(Mr.ソラン)