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■3つの大きなメリットは「枯渇しない」「どこにも存在する」「CO2を発生しない」
●EVは走行中のCO2排出量はゼロだが電気の製造過程でCO2が発生、再生エネルギーと組み合わせてこそ真のクリーン技術
EVは、走行中にCO2が排出されないことから次世代自動車の本命と位置付けられています。一方、電気の製造方法によって発生するCO2量は大きく影響されるため、製造過程でCO2が生成しない再生可能エネルギーが注目されています。
ゼロエミッションエネルギーとして注目されている再生可能エネルギーについて、解説していきます。
●再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、消費しても自然界の中で再び生産され、使い切る心配のないエネルギーを指します。化石燃料は限りある資源なので、枯渇性エネルギーです。
具体的には、太陽光や風力、バイオマス、地熱、太陽熱などが再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーには、3つのメリットがあります。
・資源が枯渇する心配がない。
石油や石炭など化石燃料は埋蔵量に限りがあるため、使い続ければそのうち枯渇してしまいます。対して太陽光や風は無尽蔵にあるため、繰り返し使うことができます。
・環境負荷が小さい、基本的にCO2を発生しない。
重要課題の地球温暖化は、人間が発生させる地球温暖化ガスCO2が主原因です。化石燃料を燃やせば大量のCO2が発生しますが、再生可能エネルギーはCO2が発生しないクリーンエネルギーです。
・再生可能エネルギーは、国内で調達可能
日本の石油は輸入に頼っており、場合によっては政情の影響を受けて供給が止まるリスクがあります。再生可能エネルギーは、自然の恵みが中心なので国内で調達できます。
●なぜクルマに再生可能エネルギーが必要か
現在、自動車メーカーは電動化技術、特にEVは次世代自動車の本命と位置付けられています。また、米国のZEV(ゼロエミッション車)規制や中国のNEV(新エネルギー車)規制によって、一定割合のEVを生産することが法制化されていることも、EVの普及を後押ししています。
ただし、考慮すべき問題があります。
それは、EVの動力源の電気をどのようにして製造するかによって、製造過程で発生するCO2が大きく影響されることです。最近は、走行中のCO2発生量だけでなく、下記のようなエネルギー源の全過程のCO2量で評価する手法が注目されています。
・Well-to-Wheel CO2
石油発掘から製造、輸送、貯蔵、クルマの走行までの全過程のCO2排出量
・LCA(ライフサイクル) CO2
上記Well-to-Wheel CO2に加えて、自動車の生産や廃棄、再利用を含めたライフサイクルのCO2排出量
例えば、原発や再生可能エネルギーで電気を製造する場合はWell-to-WheelやLCAのCO2量は低く、石炭や石油を使った火力発電の場合は高くなります。石炭の火力発電で電気を製造すると、例えEVでも全過程のCO2量でみれば、ガソリン車に対するメリットが大きく減少してしまいます。
●どんな再生可能エネルギーがあるか
再生可能エネルギーは、日本の法律で「太陽光、風力、その他の非化石エネルギーのうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるもの」(エネルギー供給構造高度化法)と定義されています。
具体的には、太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力、太陽熱、雪氷熱、温度差熱、地中熱、波力などです。この中で、現在注目されているのは、太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力です。
ただし、化石燃料をエネルギー源とする場合に比べていずれもまだコストが高く、供給が不安定なことが課題です。
最近、欧州ではクルマのCO2排出量の評価として、LCA(ライフサイクル)CO2を採用しようとする動きが出ています。この場合は、EVが絶対的に有利と言えないことになり、再生エネルギーを活用する内燃機関がまだ長く生き残っていく可能性が浮上してきます。
(Mr.ソラン)