スズキとフォルクスワーゲンの資本・業務提携解消をめぐる約4年の係争が完全決着【今日は何の日?2月10日】

■提携解消に関して残っていた未解決案件の和解が成立

2016年 スズキがVWとの資本提携解消に関して和解
2016年 スズキがVWとの資本提携解消に関して和解

2016年2月10日、スズキは資本・業務提携を解消したフォルクスワーゲン(VW)との間で残っていた未解決案件について、和解が成立したと発表しました。

フォルクスワーゲンがスズキへの損害賠償を取り下げ、スズキが和解金を支払うという対応で、スズキが提携解消を求めて4年弱にわたった係争が終結したのです。


●2009年、スズキはフォルクスワーゲンと資本・業務提携を締結

スズキは、1981年にGMと資本提携して主に小型車の開発などで長く協力関係にありました。しかし、GMの経営不振で2008年に提携が解消され、次なるパートナーを探していました。

そこで提携相手として浮上したのが、以前から交流のあったフォルクスワーゲンでした。スズキの狙いは、フォルクスワーゲンの持つ環境対応技術であるディーゼルエンジン技術、ハイブリッド技術など長期的な先進・先端技術の技術支援。一方、フォルクスワーゲンはスズキの強みである新興国への展開や小型車開発をスムーズに行い、スズキの低コスト技術を学ぶのが狙いでした。

スズキとフォルクスワーゲンは、双方の自主性を尊重した対等関係を前提にして、2009年に両社の提携を締結。スズキは、フォルクスワーゲンの出資比率を20%未満の19.9%に抑え、関連会社としてフォルクスワーゲンの持分対象となることを避けました。

●提携後に両社の思惑違いが露呈

提携発表の翌年早々から、協業プロジェクト遂行に突入。ところが、提携の大きな狙いであったディーゼルエンジン調達やハイブリッド車の技術供与などをフォルクスワーゲンは拒否し、スズキ側のフォルクスワーゲンに対する不信感が徐々に高まっていきました。

2011年に入って、スズキはフォルクスワーゲンの環境技術の開示が十分でないと主張、一方のフォルクスワーゲンは年次報告書でスズキを持分法適用会社と表記し、事実上の傘下企業と位置づけ、さらにスズキがフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)からディーゼルエンジンを調達したことを提携合意違反だと表明し、両者の溝は決定的となりました。

最終的に支配を目的とするフォルクスワーゲンと本当に対等な関係が築けるのかと疑念を抱いたスズキは、わずか2年後の2011年9月に提携解消を申し入れました。しかし、提携の証しであるスズキ株の買い戻しにフォルクスワーゲンは応じず、結局スズキは同年11月に国際仲裁裁判所に提訴したのです。

●フォルクスワーゲンの自社株買戻しとフォルクスワーゲンへの和解金を支払いで完全決着

国際仲裁裁判所は、企業、個人など国境をまたがる紛争を解決する機関のひとつ。国際仲裁では、第三国などから選んだ私人である仲裁人が判断し、仲裁結果には国際条約に基づき強制力があります。

国際仲裁裁判は、その後4年にもわたりスズキとフォルクスワーゲンの法廷争いが続きましたが、2015年8月にやっと裁判で提携解消が認められました。主な内容は、「包括提携の解除を認める」、「フォルクスワーゲンに保有するスズキの株の売却を命じる」、「フォルクスワーゲンが主張したスズキの契約違反については、一部認め引き続き審議する」というものです。

判決を受け、スズキはフォルクスワーゲンの持つ自社株を買い戻して、その後スズキの契約違反の和解金を支払うことで完全決着したのです。


スズキは、フォルクスワーゲン提携の解消直後2016年10月にはトヨタと業務提携に向けた検討を開始、2019年8月には資本提携に関する合意書を締結しました。軽のトップメーカーとして君臨するスズキといえども、今後のグローバル化や先進技術に単独で対応するのは難しいということでしょう。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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