ヤマハが2024年レース体制を発表。全日本トライアルに電動バイク「TY-E2.2」を3台投入

■MotoGPやWorldSBKには新ライダーが加入

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が、2024年に開催される国内外のレースに投入する主要チームやライダーを発表しました。

ファビオ・クアルタラロ選手と2024年型YZR-M1
ファビオ・クアルタラロ選手と2024年型YZR-M1

ヤマハでは、2024年シーズンも世界最高峰の2輪ロードレース「MotoGP(ロードレース世界選手権)」をはじめ、市販車ベースのマシンで争うレースの頂点「WorldSBK(スーパーバイク世界選手権)」など、海外の主要なレースに参戦。各カテゴリーで、ライダーのラインアップを変更することなども話題となっています。

一方、国内のレースでは、2023年の「全日本トライアル選手権」で実戦デビューを果たした電動トライアルバイク「TY-E2.2」を、昨年の1台から新シーズンでは一気に3台に拡大することも公表。全日本で史上初となる電動バイクによる優勝はもちろん、初のチャンピオン獲得が注目されます。

●日本人ライダーの佐々木選手はMoto2に参戦

まずは海外のレース体制。2024年シーズンも、ヤマハは世界最高峰のMotoGPに、ワークスチームの「Monster Energy Yamaha MotoGP」を投入します。

アレックス・リンス選手と2024年型YZR-M1
アレックス・リンス選手と2024年型YZR-M1

ライダーには、2021年のワールドチャンピオンであるファビオ・クアルタラロ選手と、ホンダのサテライトチーム「LCRホンダ」から移籍して新加入するアレックス・リンス選手を起用。アップデートされたワークスマシンの2024年型「YZR-M1」を駆り、3年ぶりの王座奪還を狙います。

また、MotoGPの登竜門といえる「Moto2」クラスでは、伝説のライダーとして知られるバレンティーノ・ロッシ選手が主宰するVR46とタッグを組んだチーム「Yamaha VR46 Master Camp Team」が3シーズン目となる戦いに挑みます。

佐々木歩夢選手
佐々木歩夢選手

ライダーには、日本人ライダーで250ccマシンで競う「Moto3」クラスの2023年ランキング2位となった佐々木歩夢選手を起用。また、Moto2で2年連続ランキング18位のジェレミー・アルコバ選手も加入します。

特に佐々木選手は、近年メキメキと実力を付けている注目ライダーだけに、MotoGPへとつながる上位進出をぜひ目指してもらいたいものです。

一方、WorldSBKでは、ヤマハのトップチーム「Pata Prometeon Yamaha WorldSBK Official Team」が参戦。ライダーには、元カワサキのワークスライダーで、2015〜2020年まで6連覇を獲得した実績を持つジョナサン・レイ選手が新加入。チーム4年となるアンドレア・ロカテッリ選手と共に、チャンピオン奪還に挑みます。

ジョナサン・レイ選手
ジョナサン・レイ選手

また、ヤマハ系のWorldSBKチームとしては「GYTR GRT Yamaha WorldSBK Team」も参戦。ライダーには、元MotoGPライダーのレミー・ガードナー選手と、Moto2などでも活躍したドミニク・エガター選手の2名が2023年シーズンと同様に継続参戦します。

ちなみにガードナー選手は、WGP(現在のMotoGP)500ccクラスの1987年チャンピオン、ワイン・ガードナーさんの長男としても有名ですよね。ぜひ父親譲りの才能ある走りを、2024年もヤマハの「YZF-R1」で披露して欲しいですね。

レミー・ガードナー選手
レミー・ガードナー選手

さらに、ヤマハでは「EWC(世界耐久選手権)」にも、2023年にチャンピオンを獲得した「Yamalube YART Yamaha EWC Official Team」が参戦。ライダーは昨年同様、ニッコロ・カネパ選手、カレル・ハニカ選手、マービン・フリッツ選手です。

ほかにも、ヤマハでは、モトクロス世界選手権やAMAスーパークロスといった海外の主要なオフロードレースに挑戦。いずれのシリーズでも、王座奪還を掛けた戦いに挑みます。

●TY-E2.2の3台投入で、電動バイク開発をさらに加速

一方、国内のレース。注目は、前述の通り、全日本トライアル選手権に3台の電動トライアルバイク「TY-E2.2」が投入されることです。

TY-E2.2(写真は2023年モデル)
TY-E2.2(写真は2023年モデル)

TY-E2.2とは、ヤマハが開発中の100%モーターとバッテリーで走る電動モデルのこと。「FUN×EV」というコンセプトのもと、CO2を排出しないことはもちろん、乗っても楽しい次世代のバイクを目指して開発しています。

2018年に発表された初代TY-E以来、世界選手権などを闘うことで進化を続けているのがこのモデル。2023年シーズンは、全日本トライアルの最高峰IAスーパーの第5戦・北海道大会から実戦投入され話題に。「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」から参戦する黒山健一選手のライディングでシリーズ後半4戦を戦い、第6戦・広島大会では2位を獲得。あと一歩で初優勝こそ逃しましたが、その高い戦闘力を実証しました。

そんなTY-E2.2ですが、ヤマハは、なんと2024年シーズンの全日本トライアルIAスーパーに、昨年の1台から3台へ参戦マシンを拡大するといいます。

全日本トライアルの第6戦・広島大会で、TY-E2.2を駆り2位に入った黒山選手
全日本トライアルの第6戦・広島大会で、TY-E2.2を駆り2位に入った黒山選手

ライダーには、2018年からTY-Eの開発ライダーも務めてきた前述の黒山選手が継続してライディング。チームは同じくワークスの「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」です。

また、2023年ランキング2位の氏川政哉選手が「bLU cRU VICTORY」から、ランキング4位の野崎史高選手が「Team NOZAKI YAMALUBE YAMAHA」から同じくTY-E2.2で参戦。

ヤマハでは、TY-E2.2を3台体制とすることで、開発をさらに加速。全日本史上初となる電動トライアルバイクでの優勝、初のチャンピオンを目指すと共に、市販の電動バイクなどに活用できるさまざまな技術の獲得を目指すといいます。

●全日本のロードやモトクロスでも連覇を狙う

ほかにも、ヤマハでは、「全日本ロードレース選手権」や「全日本モトクロス選手権」といった国内の主要なレースにも参戦します。

全日本ロードレース選手権JSB1000クラスで3連覇、通算12回目のチャンピオンを獲得した中須賀克行選手
全日本ロードレース選手権JSB1000クラスで3連覇、通算12回目のチャンピオンを獲得した中須賀克行選手

全日本ロードレース選手権では、最高峰のJSB1000に「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」が「YZF-R1」で参戦。ライダーは2023年に、2021年から3連覇、通算12回目のチャンピオンを獲得した中須賀克行選手を起用。また、2023年のJSB1000で初優勝などの活躍をみせ、ランキング2位となった若手の岡本裕生選手も継続して参戦します。

一方、全日本モトクロス選手権では、最高峰のIA1に「YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM」が参戦。ライダーは、2023年、22勝をあげIA1チャンピオンに輝いたジェイ・ウィルソン選手が2連覇を狙うほか、開幕戦の怪我による欠場があり、ランキング12位となってしまった渡辺祐介選手も起用。2名のライダーがワークスマシン「YZ450FM」で、クラス3連覇を目指します。

全日本モトクロス選手権の最高峰IA1クラスで。2023年の王者に輝いたジェイ・ウィルソン選手
全日本モトクロス選手権の最高峰IA1クラスで。2023年の王者に輝いたジェイ・ウィルソン選手

さて、2024年シーズンの各レースで、ヤマハのマシンやライダーたちが、どんな活躍を見せてくれるのか、今からとっても楽しみですね。

(文:平塚直樹

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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