車の駆動方式で「雪道の走り方」はどう違う? FF、FR、4WDの注意点を解説

■滑りやすい雪道は駆動方式の違いが出やすい

実は滑りやすい路面では駆動方式による操縦性能の違いが明確に出る
実は滑りやすい路面では駆動方式による操縦性能の違いが明確に出る

FFやFRなどの駆動方式は車の性格を決める大きな要素ですが、乾いたアスファルトの上では違いがほとんど感じ取れません。

ですが、雪上や氷上のように滑りやすい路面では、駆動方式による操縦性能の違いが明確に現れます。

雪道では、駆動方式によってどのような違いが出るのでしょうか。FF・FR・4WDの各駆動方式の特徴と、雪道を走行する際の注意点を調べてみました。

●FFはアクセルを踏みすぎると曲がらない

多くのコンパクトカーはFFの駆動方式
多くのコンパクトカーはFFの駆動方式

FF(前輪駆動車)は「フロントエンジン・フロントドライブ」の略です。駆動するのは前の2輪のみですが、エンジンの重さが常にタイヤに乗っかっているので発進時にも滑りにくく、前輪に引っ張られるように車が動くので、直進時の安定感も高い特徴があります。

ただし、加速と操舵の両方を前輪だけで行う構造から、雪道でのFFはアクセルを踏みすぎた状態でハンドルを切ると前輪が横滑りしてしまう「アンダーステア」が発生して、カーブを曲がり切れなってしまうのが欠点です。

特に、上り坂や後席に人を乗せた状態での発進時は、前輪にかかる重量も減ってしまうので、余計にタイヤが空転しやすくなります。上りながらのカーブでは、もともと強いアンダーステア傾向がさらに強まるので、FFはアクセルの踏み込み量とハンドルを切る量を適度にバランスさせて操作する必要があります。

FFで後輪が滑り出すことは少ないものの、凍結した下りの坂でのブレーキ時などは後輪が滑り出し、ハンドルを切らずとも車の向きが勝手に変わってしまう「オーバーステア」が出ることもあります。

その際、とっさに逆ハンドルを切ってアクセルペダルを戻すと、余計に後輪が滑ったり、ハンドルを切った方向に走り出してしまうこともあるので、後輪が滑った際の適切な操作ができるかどうかもFFを安全に走らせるコツと言えるでしょう。

雪道でのFFの運転は、後輪を滑らせないように速度に注意しつつ、とにかく前輪の横滑りを起こさないように丁寧なアクセル操作を心がけることが肝心です。

●雪道に弱いFRはアクセルとハンドルの連携が重要

FR(後輪駆動車)は「フロントエンジン・リアドライブ」の略
FR(後輪駆動車)は「フロントエンジン・リアドライブ」の略

FR(後輪駆動車)は「フロントエンジン・リアドライブ」の略で、エンジンが前方にあり後方の2輪のみを駆動させて走る車を指します。

雪道において、同じ2WD(2輪駆動)でも、FRは駆動輪にかかる重量がFFよりも少ないので発進時にタイヤが空転しやすく、発進時にはFF以上に繊細なアクセル操作が要求されます。

走行中も、アクセルを踏みすぎてしまうと、後輪が空転することで車の向きが変わってしまうので、雪の路面状態によっては真っ直ぐ走らせるのも困難です。

その反面、カーブでは路面の状態やアクセルペダルの踏み加減によっては、後輪に押し出される形で前輪の方が滑り出してしまい車が曲がらなくなることもあります。

操作次第でアンダーステアもオーバーステアも出てしまうのがFRの特徴と言えるでしょう。また、駆動しない前輪が雪の抵抗を受けやすいせいもあって、スタックしてしまったら脱出不可能状態に陥ってしまいやすいのも、FRが雪道に適さないと言われる理由です。

FRの後輪はどうしても滑ってしまうため、常にアクセルとハンドルの連携操作を意識して運転する必要があります。

●雪道でも盤石な4WDはそのぶんスピードの出しすぎに注意!

4輪が駆動するため、滑りやすい路面でも安定した発進加速性能を発揮できる
4輪が駆動するため、滑りやすい路面でも安定した発進加速性能を発揮できる

4WD(4輪駆動車)は「フォー・ホイール・ドライブ」の略で、4輪すべて回転させて走行する駆動方式。FFとFRの良いとこ取りの駆動方式と言えます。メーカーによっては「AWD(オール・ホイール・ドライブ)」とも呼ばれます。

4輪が駆動するため、滑りやすい路面でも安定した発進加速性能を発揮できるのが4WDの美点です。滑りにくさによる安心感も心強く、雪道の長距離運転時の疲労軽減にも貢献してくれます。

4WDの基本特性はほとんどFFと同じです。ただし、高い安定性が災いして、カーブではFFより外側に膨らみやすい点に注意しましょう。また、滑りやすい路面でも簡単に走行できてしまうため、スピードの出しすぎにも注意が必要です。

●駆動方式ごとの特性を知ればより安全に雪道を走れる

3つの駆動方式のなかでもっとも雪に強いのは4WDで、次がFFです。FRはもっとも雪道の運転が難しい車になります。とはいえ、状況に応じて適切な操作さえできれば、よほど急な傾斜や雪深い場所でない限り、FFやFRであっても問題なく雪道を走行することができます。

どの駆動方式でも大切なのは、タイヤをなるべく滑らせないように操作することです。そのためには適切な速度管理と車間距離維持はもちろん、スリップを助長する急発進や急ブレーキ、急ハンドルを避け、駆動方式に応じた適切なアクセル操作とハンドル操作を行うことが大切です。

ブレーキに関しては、ABSが搭載されている車ならどの駆動方式でも大きな違いはありません。

雪道ではどれだけ気を付けてもタイヤが滑ってしまいます。車を滑らせない操作に加え、滑った際に現れる駆動方式ごとの特徴と対処法も覚えておくと、より安全に雪道を走行できるようになるでしょう。

言うまでもありませんが、上記のすべてがスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤ、チェーンを装着し、雪上走行対策をしたうえでの話なのはお忘れなく!

(鈴木 僚太[ピーコックブルー])