マツダ「MAZDA6」生産終了。アテンザから引き継がれた22年の歴史を振り返る

■すべてを刷新してミディアムクラスのベンチマークを目指した初代アテンザ

2024年1月19日、マツダはフラッグシップモデルであるマツダ6の販売終了を発表しました。国内向けモデルの生産終了期間は2024年4月中旬を予定しています。

ここでは、20年以上マツダのフラッグシップモデルとして君臨したアテンザ/マツダ6の歴史を振り返ります。

初代アテンザスポーツのフロントスタイル
初代アテンザスポーツのフロントスタイル

2002年5月、マツダの次世代商品第1弾として、アテンザ(海外名:マツダ6)が導入されました。車名のアテンザは、イタリア語の「アテンツィオーネ(注目・配慮)」からの造語で、細部まで商品力の高い、注目に値する製品である。という意味が込められています。

初代アテンザセダンのフロントスタイル
初代アテンザセダンのフロントスタイル
初代アテンザセダンのリアスタイル
初代アテンザセダンのリアスタイル

アテンザは、当時のブランドメッセージである「ズーム・ズーム(子どもの時に感じた動くものへの感動)」を象徴する新型車でした。

卓越した運動性能を基本に、デザイン、パッケージング、クラフトマンシップ、安全・環境性能というすべての領域で、世界のミディアムクラスにおける新しいベンチマークを目指しました。

初代アテンザスポーツワゴンのフロントスタイル
初代アテンザスポーツワゴンのフロントスタイル
初代アテンザスポーツワゴンのリアスタイル
初代アテンザスポーツワゴンのリアスタイル

そのためアテンザは、走りなどのダイナミック領域を中心に、マツダのブランドDNAをユーザーに体現してもらうという、今までとは全く異なるコンセプトで開発されました。そしてプラットフォームをはじめ、搭載するエンジンまで新開発されただけでなく、ボンネットとボディの隙間をこれまでよりも狭くするなど、工業製品の精度を向上させたのが特徴です。

マツダスポーツアテンザスのフロントスタイル
マツダスポーツアテンザスのフロントスタイル

ボディタイプは5ドアハッチバックのスポーツ、4ドアのセダン、そしてステーションワゴンのスポーツワゴンの3タイプを用意。搭載しているエンジンは、2L直列4気筒DOHCと2.3L直列4気筒DOHCの2種類。組み合わされるトランスミッションは、2WD車では当初5速MTと4速ATでしたが、2005年のマイナーチェンジで6速MTと5速ATに変更されています。また、4WD車は5速ATを採用しています。

マツダスポーツアテンザの2.3Lターボエンジン
マツダスポーツアテンザの2.3Lターボエンジン

そして2005年8月には、4ドアセダンに最高出力272ps・最大トルク380Nmを発生する2.3L直列4気筒ターボエンジンを搭載したマツダスピードアテンザを追加しました。

マツダスピードアテンザは、高出力のターボエンジンに6速MTを組み合わせて、駆動方式には電子制御アクティブトルクコントロールカップリング4WDシステムを採用したハイパフォーマンスモデルでした。

●高い空力ボディを採用し走りの質感を向上させた2代目アテンザ

2代目アテンザ3台絡み
2代目アテンザ3台絡み

マツダアテンザは2008年1月にフルモデルチェンジを行い、2代目へと進化します。2代目アテンザは「最高の高速ロングツアラー」を目指して、クラストップレベルの空力性能を実現。高速走行時の安定性を向上させるとともに、乗り心地や静粛性などの快適性を高めたモデルです。

モデル体系は、初代同様に4ドアのセダン、5ドアハッチバックのスポーツ、スポーツワゴンの3つのボディタイプをラインアップしています。

2代目アテンザスポーツのフロントスタイル
2代目アテンザスポーツのフロントスタイル
2代目アテンザスポーツのリアスタイル
2代目アテンザスポーツのリアスタイル

2代目アテンザのデザインテーマは「Bold&Exquisite(大胆かつ精妙な佇まい)」。力強く冒険的ながら、絶妙な優美さを兼ね備えたさまを、日本の美意識を通じて表現しています。

アーチ型のルーフ形状が特徴的で、端正で上品な印象のセダン、スポーティで流麗なサイドシルエットが特徴のスポーツ。そして美しく張りのあるリアフォルムが印象的なスポーツワゴンの3モデルで、それぞれ個性を主張しています。

2代目アテンザセダンのフロントスタイル
2代目アテンザセダンのフロントスタイル
2代目アテンザセダンのリアスタイル
2代目アテンザセダンのリアスタイル

さらにドアミラー、アンダカバーなどの形状を最適化することで、空力性能を向上。2.5Lエンジンの2WD車は、床下の整流に効果的な馬蹄型フロントタイヤディフレクターを追加し、セダン&スポーツが0.27、スポーツワゴンが0.28というクラストップレベルのCd値を実現しています。

搭載されているエンジンは、初代と同じ2L直列4気筒と新開発の2.5L直列4気筒の2種類。初代の2.3Lエンジンはハイオク仕様でしたが、2代目に搭載された2.5Lエンジンはレギュラー仕様となっています。

2代目アテンザスポーツワゴンのフロントスタイル
2代目アテンザスポーツワゴンのフロントスタイル
2代目アテンザスポーツワゴンのリアスタイル
2代目アテンザスポーツワゴンのリアスタイル

組み合わされるトランスミッションは、2WD車は6MTと5速AT、4WD車は6速ATとなっています。スポーツとスポーツワゴンの2.5L 2WD車に6速MT搭載車を設定。4WD車には電子制御アクティブトルクカップリング4WDシステムを採用し、走行状況や路面状態に応じて、前輪と後輪のトルク配分を最適化することで、どんな状況でも高い走行安定性を発揮します。

安全性では、2.5Lエンジン搭載を搭載した全グレードにDSC(横滑り防止装置)およびTCS(トラクションコントロール)を標準装備し、安全で快適なドライビングを実現させる装備を充実させています。

2代目アテンザのインストルメントパネル 
2代目アテンザのインストルメントパネル
2代目アテンザのシート
2代目アテンザのシート

さらに当時、国内初となる時速60km/h以上の走行時に後方から接近する車両をレーダーで検知してドライバーに知らせる「リアビークルモニタリングシステム」を採用するなど、いち早く運転支援システムを搭載していました。

2010年にマイナーチェンジを実施し、外観デザインを変更しました。同時にセダンとスポーツワゴンに搭載している2Lエンジンを直噴タイプに変更しています。またグレードが整理され、5ドアのスポーツは2Lエンジン搭載車が廃止されました。

●フルスカイアクティブ採用で人馬一体感の走りに磨きを掛けた3代目アテンザ

2012年11月にマツダのフラッグシップモデル、アテンザはフルモデルチェンジを行い、3代目へとスイッチしました。

3代目アテンザは、当時のマツダの新世代技術「スカイアクティブ」と新デザインテーマ「魂動(こどう)」を採用し、意のままに操れる、上質でスポーティな走りと優れた環境・燃費・安全性能を実現しています。

モデル体系は、5ドアハッチバックのスポーツが廃止され、4ドアセダンとステーションワゴンの2種類となりました。

3代目アテンザの外観デザインは、マツダ車共通のデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を採用し、凛とした存在感と生命感のあるダイナミックな美しさを表現しています。

また魂動デザインを際立たせるため、こだわりをもつ職人の手で作り出すような、精緻で高品質な「匠塗」と呼ばれる専用プログラムで塗装される「ソウルレッドプレミアムメタリック」を設定しています。

3代目アテンザのインストルメントパネル
3代目アテンザのインストルメントパネル
3代目アテンザのシート
3代目アテンザのシート

インテリアは、オフセットのないペダル配置をはじめ、操作機器の適切なレイアウトや広い視界、疲れにくく快適なシートなど各部を見直し、人間工学を追究した理想的な運転環境を実現しています。

搭載しているエンジンは、スカイアクティブ技術を採用した高効率な2L&2.5L直4ガソリンエンジンと4L V8エンジン並の最大トルクを発生する2.2L直4ディーゼルターボの3種類。組み合わされるトランスミッションは6速ATを中心に、ディーゼル車に6速MTを採用しています。

さらに、マツダ独自のアイドリングストップシステム「i-stop」や、乗用車用として世界で初めて蓄電池にキャパシターを採用した減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」全車に搭載し燃費性能を向上させています。

安全装備では、マツダ独自の安全思想「マツダプロアクティブセーフティ」に基づき、先進安全技術「アイ アクティブセンス」を採用しました。事故が避けづらい状況では自動ブレーキを作動させるなど、衝突回避・被害軽減を図るプリクラッシュセーフティ技術に加えて、より早い段階からドライバーの認知支援を行うアクティブセーフティを取り入れることで、ドライバーの認知、判断を助けて安全運転をサポートします。

2014年の一部改良では、内外装の変更に加えて、カーコネクティビティシステム「マツダコネクト」を採用や運転支援システム「アイ・アクティブセンス」を進化させています。

2016年の一部改良では内外装の変更に加えて、2.2Lディーゼルターボエンジンの進化。さらにスカイアクティブビークルダイナミクスの第1弾となる「Gベクタリングコントロール」を全車に標準装備しました。

2018に実施した大幅改良では内外装の変更に加えて、次世代の車両構造技術「スカイアクティブビークルアーキテクチャー」の要素の一部を採用し、走行性能の向上を図っています。

2016年の改良後のアテンザのインストルメントパネル
2016年の改良後のアテンザのインストルメントパネル
2018年の改良後のアテンザにインストルメントパネル
2018年の改良後のアテンザにインストルメントパネル

また、搭載する全エンジンの進化、マツダの先進安全技術「アイ・アクティブセンス」の機能を進化させるなど、フラッグシップモデルに相応しい最新・最良の「走る歓び」を提供しています。

●ブランドイメージを明確化するために海外名のマツダ6に統一

マツダ6セダンのフロントスタイル
マツダ6セダンのフロントスタイル

2019年8月にマツダのフラッグシップモデルであるアテンザは、ブランドを鮮明化するために、海外名のマツダ6へと車名を変更しました。

マツダ6のインストルメントパネル
マツダ6のインストルメントパネル

車名を変更しただけでなく、2.5L直4ガソリンターボエンジンを追加。さらに、高速走行時や滑りやすい路面でもより安定した車両挙動を実現させるため、「Gベクタリングコントロールプラス」を標準装備しています。

また、快適性向上を目指してIRカットガラスの設定。利便性向上を追求してマツダコネクトにアップルカープレイやアンドロイドオート対応機能を追加しました。

マツダ6ワゴンのフロントスタイル
マツダ6ワゴンのフロントスタイル

2022年には一部改良を行い、2.2Lディーゼルターボエンジンの進化をはじめ、全車でパワーステアリングのアシスト特性の変更。運転支援機能「クルージング&トラフィック・サポート」を追加するなど全方位で進化しています。

マツダ6のシート
マツダ6のシート

そして、2002年に初代アテンザが誕生し、20周年を迎えることから特別仕様車の「マツダ6 20周年アニバーサリーエディション」を追加。ボディカラーにマツダ独自の塗装技術「匠塗」による新色のアーティザンレッドプレミアムメタリックを採用しています。

3代目アテンザとマツダ6は数少ない国産ステーションワゴンとして、多くのユーザーに支持されているモデル。マツダ6の生産終了により、車種ラインアップにおけるSUV比率がさらに高くなります。

(文:萩原 文博/写真:マツダ株式会社)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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