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■今年は特にレベルが高い日産自動車大学校の3台
●新型エルグランドを日産自動車に提案!?「ELGRAND GLASSIER(グラシア)」
毎年、学生が制作する個性的な車両を出展している日産自動車大学校。今年もその京都校と愛知校が計3台を東京オートサロン2024に出展していました。
まずは、京都校の1台。ミニバンですが、ミニバンらしからぬノーズのデザインと、一直線のテールランプが高級感を漂わせています。
近づいてみても、あくまでも自然な仕上がりのこの車両。実は、現行型であるE52エルグランドがベース。
E52エルグランドは現行型とは言え、2010年に登場しているからもう14年の歳月を経ている御長寿モデルとなっています。しかし、自動車のモデルチェンジにおいて御長寿は、必ずしも褒め言葉だけでなく、次期型を開発できない車種という場合もあります。
エルグランドの日産における内部事情がどうなのか知るよしもありませんが、隣のアルヴェルの大ヒットに押されているのは誰が見ても明らか。
ならば、日産系列の学校に通う学生として、新型エルグランドを日産に提案しよう、という意気込みで作ったのが、この「ELGRAND GLASSIER(グラシア)」なのです。
まず、エルグランド・グラシアの顔は、どこかで見たことあるな…と思う人も多いハズ。
それもそのはず、現行エクストレイルのマスクを用意。しかしそのフィッティングは見事で、知らなければ元々この顔のミニバンだよね、と思われるのが普通なくらいの仕上がりです。
ボンネットやフェンダーなどは、エルグランドとエクストレエイルのものをカットして接続。しかし、その仕上がりはつなぎ目がどこなのか、言われないと気付かないレベルの綺麗なラインと面で構成されています。
フロントマスクは当然、SUVのエクストレイルのほうが縦に短いワケで、そのためバンパーの下部分を延長していると言うんですが、その部分もどこかまったくわからないくらいに綺麗に仕上がっています。
後ろに回ると、一文字のコンビネーションランプは日産アリアからの流用。こちらも違和感などまったくなく収まっています。
注目すべきは、その一文字の端っこ部分。どうしてもボディとの接合部分に無理が生じることが多くなりがちです。この車両の場合、なんとアリアのリアクォーターパネルを部品として購入。コンビランプの切れ込み部分のみをカットしてボディに溶接し、ランプとのフィッティングをまったく違和感なく処理することに成功しています。
全体は、昨今のアウトドアブームに対応するようにオフロード走破性をイメージ。アールテレイン系タイヤを履かせ、ルーフテントを装着。ドアミラーのオレンジは、朝陽が登る朝焼けをイメージしたと言います。
日産自動車さん、エルグランド・グラシアはこのままの状態で新型エルグランドとして発表しても大丈夫だと思いますよ。
●大人気の日産パイクカーが欲しい!「SETO(セト)」
お隣にあったのが、やはり京都校が手掛けた、その名も「SETO(セト)」。セトはフランス語で”7”を表し、製作したカスタマイズ科7期生に因んだネーミングなんだそうです。
ベース車両は遠くから見ると良くわかりますが、日産キューブ。しかし、その顔とテールには4台目ブルーバード(410)が移植されています。
しかし、現在では希少価値もあると思われる410ブル。顔やテールが簡単に入手できたかというと、意外にも校内にレストアベースとしてあったものの、あまりにもボディのクサりが酷く、このままでは廃棄処分と決まってしまい、使える部分を移植できたのだそうです。
フロントマスクは綺麗に収まり、その個性的なフロントフェンダーの微妙な出っ張りラインも410ブルそのもの。それもそのはず、フロントフェンダーはAピラーに繋がる部分まで410ブルのものを使用しているとのこと。フェンダーの膨らみあたりからは、キューブのものに接合しているそうです。
テールランプも410ブルをそのまま使用しながら、メッキバンパーとともに、これまた違和感ない仕上がりに収まっています。
このセトのコンセプトは、自分たちが欲しいのはこんなクルマ。日産が作って大ヒットしたBe-1やフィガロなど、パイクカーをもう一度作って欲しいという発想から来ています。
つまり、若者が欲しくなるこんなパイクカーを出してはいかがだろうか?という、こちらも日産自動車への提案だったのです。
京都校の川嶋校長、ぜひ学生さんの2作品を商品企画部へ持って帰ってくださいませ〜。
●オーテックバージョン4ドアGT-R再び…「アドニススカイライン」
そして、もう1台がスカイライン。こちらも自分たちが乗りたいのはこんな車、ということで始まったカスタマイズのベースはセダン。
なんでも、若者にアンケートを取ると一番乗りたいのはミニバンでもSUVでもなく、セダンだったという結果から、選んだジャンルだとか。運良く、実習車を終えたR34スカイラインセダンが校内にあったので、それを使ったとのこと。
その仕上がりは、不自然さがまったくないものの、細部を見ると、ノーマルとは明らかに違うラインや面構成に溢れています。
フロントの左右に取り付けられたスポイラー、サイドステップ、リヤバンパーはオリジナルにFRPで製作。フロントフェンダーやドアからつながるリヤブリスターフェンダーも、FRPとパテで成形。
苦労したであろうトランクのスポイラー形状は、一旦ルーフの高さくらいまで盛り上げたものを丹精込めて削り出して製作。なんでも1ヶ月くらいも付きっきりになったとか。
ボディカラーもやはり若者にもっとも人気があるという結果から、ホワイトに塗装。車名はギリシャ神話に出てくる美少年「アドニス」から、美しく出来上がったその姿に「アドニススカイライン」と命名。
オーテックバージョンでR34GT-Rにも4ドアがあったんだっけ?と勘違いしちゃいそうなくらいの美しい造形と仕上がりを実現していました。
全体に、仕上げの美しさと現実的なコンセプトが今年の日産自動車大学校に共通していると感じました。
(文・写真:クリッカー編集長 小林 和久)