世界3大タイヤメーカーのひとつグッドイヤーの最新オールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズGEN3」の実力を国沢光宏が紐解く

自動車大国・北米における最大のタイヤメーカー、グッドイヤー。120年を超える歴史の中で、車以外に航空機やレーシングカー、月面探査車(!)に至るまで、様々なモビリティを動かすためのタイヤを供給してきました。なんとなんと、春夏秋冬いつでも安全、安心に走れるオールシーズンタイヤを初めて作ったのもグッドイヤーなんです。他を先駆けて40年以上の歴史を走り続けてきたグッドイヤー製オールシーズンタイヤですが、その最新モデルはどのような進化を遂げているのでしょうか。自動車評論家の国沢光宏さんがベクターの凄さの秘密を探りに行ってくれました!

■ベクターは1年中快適に履けるクルマの「靴」

初代ベクター(写真右)と最新のベクター(左)。グッドイヤーのオールシーズンタイヤには長い歴史があります
初代ベクター(写真右)と最新のベクター(左)。グッドイヤーのオールシーズンタイヤには長い歴史があります

日本では当然のことのように「雪が降ったらスタッドレスタイヤ」である。短い距離ならスノーチェーンというチョイスもあるけれど、脱着が面倒。冬のシーズンに何回か雪道を走るという人は、スタッドレスタイヤを選ぶことだろう。説明するまでもなく、スタッドレスタイヤには弱点多い。雪道を走るため柔らかい特殊なゴム(コンパウンド)とパターンを採用するためだ。

柔らかいとハンドルを切った時の手応えが悪くなり、加えて特殊なパターンのため舗装路での絶対的なグリップ性能は低下する。具体的に言えば、コーナリング性能やブレーキ性能が悪化し、タイヤのパターンノイズは増加。減りも早く転がり抵抗大きいので燃費まで悪化する。夏タイヤからスタッドレスタイヤに履き替えると、皆さん「う~ん!」と感じるんじゃなかろうか。

しかもシーズンの前後に履き替えなくてはならない。クルマにとってタイヤは「靴」みたいなもの。本当の「靴」でいえば、街中を走るならスニーカー。ハイキングに行くならトレッキングシューズを選ぶだろう。しかし最近になって街中も悪路も快適に使える『トレイルランニングシューズ』が出てきた。クルマにとってのオールシーズンタイヤも全く同じ。1年中履きっぱなしでOKなのだった。

●オールシーズンタイヤの始祖、それがベクター

1984年に登場した初代ベクター。写真中央はF1ドライバーのミケーレ・アルボレート
1984年に登場した初代ベクター。写真中央はF1ドライバーのミケーレ・アルボレート

最初に登場したオールシーズンタイヤは40年前のアメリカである。かの地では年間平均走行距離3万kmと走る距離長い。当時、冬タイヤといえばスパイクタイヤだ。舗装路を長く走るとあっという間にすり減ってしまう。そこで雪道も舗装路も走れるタイヤを作ってやろう、とグッドイヤーは考えた。かくして出来たのが『ベクター』というオールシーズンタイヤだった。グッドイヤー、長い歴史を持つ。

グッドイヤーが1917年に創設した大陸横断トラック便、Wingfoot Express。アメリカの物流を進化させた立役者です
グッドイヤーが1917年に創設した大陸横断トラック便、Wingfoot Express。アメリカの物流を進化させた立役者です

日本ではあまり話題に上がらないものの、グッドイヤーはミシュラン、ブリヂストンと並ぶ世界の3大タイヤメーカーである。タイヤ技術で最も難しいのは航空機とレース。どちらもタイヤにとって最も厳しい環境で使われる。なかでも航空機用は難易度が高く、作れるメーカーは前述の3社だけ。ちなみに大統領専用機エアフォース1のタイヤもグッドイヤーだったりする。

大きな機体を支えるグッドイヤー製航空機用タイヤ
大きな機体を支えるグッドイヤー製航空機用タイヤ

タイヤ技術=分子構造。グッドイヤーによれば、かなり以前から雪道も舗装路も走れるコンパウンドの開発を行なっていたという。天候の変化が大きいアメリカの道で長い距離を走らなければならないなど、ニーズは厳しい。考えてみたら飛行機は1つのスペックで路面温度60度を超える真夏の滑走路や、大雨の滑走路、アイスバーン当たり前になるアラスカの滑走路まで対応しなければならない。

●ベルランゴに装着して乗ってみた

ベルランゴにグッドイヤー ベクター 4SEASONS GEN3を装着して一般道・高速道路へ!
ベルランゴにグッドイヤー ベクター 4SEASONS GEN3を装着して一般道・高速道路へ!

長い長い前置きになった。今回試したのはグッドイヤーのオールシーズンタイヤで最も歴史ある『ベクター』シリーズの最新モデル「Vector 4Seasons GEN3(ベクターフォーシーズンズ ジェンスリー)」だ。今までのベクターより舗装路の走行性能を向上させると同時に、雪道性能も追求したという。

乗るとどうか。まず舗装路。一般道から高速道路まで試してみたが、タイヤに敏感なスポーツモデルのように引き締まったサスペンションを持つクルマでなければ夏タイヤと大差なし。

ステアリングフィールも騒音も、夏タイヤと言われたとしても解らないレベル
ステアリングフィールも騒音も、夏タイヤと言われたとしても解らないレベル

最近のクルマは騒音対策がしっかり出来ているため、黙ってハンドル握ったら、オールシーズンタイヤだと解らないと思う。厳密に言えばタイヤのパターンノイズは若干ボリューム上がるものの、オーディオを聞いていたら気にならないレベル。スタッドレスタイヤだと気になる直進付近のステアリングフィールも夏タイヤの範疇に収まっている。試乗に使ったシトロエン・ベルランゴだと解りにくい。

コーナーで横Gを掛けたり強めにブレーキを掛けても腰砕け感なし。グッドイヤーによれば開発は平均速度域の高い欧州で行なっているとのこと(タイヤの速度レンジも240km/h)。日本の流れに乗るくらいの速度域だと全く不安なし。これまた夏タイヤだと言われたら解らないレベル。転がり抵抗(燃費)やウェット性能、タイヤ寿命などは夏タイヤと同等レベルとのこと。

肝心の雪道性能だけれど、締め切り時点で試せず。先代のベクターは圧雪からアイスバーンまで走っている。圧雪について言えばスタッドレスタイヤと同レベルだと考えていい。アイスバーンだとさすがにスタッドレスタイヤには届かないけれど、速度を抑えれば何とか走れる。だからこそグッドイヤーの性能表示もアイスバーンを△(三角マーク)としているのだろう。年に数回程度雪道を走るというライトユーザーなら面白いチョイスだと思う。

(文:国沢 光宏/写真:前田惠介・GOODYEAR)

●GOODYEAR VECTOR 4SEASONS GEN3(グッドイヤー  ベクター  フォーシーズンズ ジェンスリー)サイズ一覧

●20インチ
255/40R20 101W ○
245/45R20 103W XL ○

●19インチ

255/35R19 96Y XL ○
235/40R19 96Y XL ○
245/40R19 98Y XL ○
255/40R19 100Y XL ○
245/45R19 102W XL ○
255/45R19 100W ○
235/50R19 103W XL ○
225/55R19 99V

●18インチ

235/40R18 95W XL ○
245/40R18 97W XL ○
225/45R18 95W XL ○
235/45R18 98Y XL ○
245/45R18 100Y XL ○
225/55R18 102W XL

●17インチ

225/45R17 94W XL ○
235/45R17 97Y XL ○
245/45R17 99Y XL ○
205/50R17 93W XL
215/50R17 95W XL ○
225/50R17 98W XL ○
205/55R17 95V XL
215/55R17 98W XL
225/55R17 101Y XL
215/60R17 100V XL

●16インチ

205/55R16 94V XL
215/55R16 97V XL
195/60R16 93V XL
205/60R16 96V XL
215/60R16 99V XL
215/65R16 102V XL

●15インチ

185/60R15 88V XL
185/65R15 92V XL
195/65R15 95V XL

●GOODYEAR VECTOR 4SEASONS GEN3 SUV(グッドイヤー  ベクター  フォーシーズンズ ジェンスリー エスユーブイ)サイズ一覧

●20インチ

255/50R20 109W XL ○

●19インチ

265/50R19 110W XL ○
235/55R19 105W XL

●18インチ

235/55R18 104V XL
255/55R18 109Y XL
225/60R18 104W XL
235/60R18 107W XL
235/65R18 110V XL

●17インチ

235/55R17 103Y XL
225/60R17 103V XL
215/65R17 99V
225/65R17 106V XL
235/65R17 108W XL

※全サイズチューブレスタイヤです。 ◯印はリムプロテクター付きです。
※XL(EXTRA LOAD)は、耐荷重性能強化タイプです。

●1898年創業のグッドイヤー。その歴史は「新開発」の連続

グッドイヤーのオールシーズンタイヤ
https://www.goodyear.co.jp/special/vector/

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