新世代エンジン「ダイナミックフォースエンジン」をトヨタが発表。「TNGA」をベースにエンジンを一新【今日は何の日?12月6日】

■エンジンの基本技術をブラッシュアップして熱効率40%超を達成

2016年に発表されたダイナミックフォースエンジン、2.5L直4直噴エンジン+モーター
2016年に発表されたダイナミックフォースエンジン、2.5L直4直噴エンジン+モーター

2016(平成28)年12月6日、トヨタは新たに開発した新世代エンジン「ダイナミックフォースエンジン」を初公開しました。

トヨタの次世代開発コンセプト「TNGA」の一環として、新プラットフォームに世界トップレベルの熱効率40%の新エンジンを搭載。新型「カムリ」から適用を開始。以降、主力モデルへの展開が進められています。


●TNGAは、トヨタの次世代車づくりの開発コンセプト

TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)とは、新しいプラットフォームをベースにした車づくりの開発方針や開発手法を指します。

TNGAは、
・商品力の向上
・モジュール化による車づくりと開発効率化
・ものづくり改革
・グローバル標準への取り組み
・TNGAと連動した調達戦略

この5つの取り組みで構成されます。これらの5つのポイントを踏まえて、車の基本性能である“走る、曲がる、止まる”をレベルアップさせ、商品力強化を図ることが目標です。

そのために、プラットフォームを中心に車の骨格を全面的に見直し、同時に車の中核となるエンジンについても、ダイナミックフォースエンジンによって一新を図ったのです。

●TNGAコンセプトに基づいた新プラットフォーム

トヨタは、まずTNGAコンセプトに基づいた新しい高剛性プラットフォームを構築しました。

TNGAによる新プラットフォーム
TNGAによる新プラットフォーム

剛性を上げるために骨格の見直しや高張力鋼板の採用拡大、さらにトヨタ独自のLSW(レーザースクリュー溶接)を車体接合に採用し、ねじり剛性を従来比で30~65%改善。ねじり剛性を高めれば、走行安定性や衝突安全性の向上、快適な乗り心地などに繋がります。

2015年12月にデビューしたTNGAプラットフォームを初めて適用した4代目プリウス
2015年12月にデビューしたTNGAプラットフォームを初めて適用した4代目プリウス

2015年末に発売された4代目「プリウス」が、この新プラットフォーム(コンパクトカー向けGA-C)を適用した最初のモデルで、従来型に対して剛性を65%向上。

以降、カローラ(GA-C)、カムリ(ミドルクラス向けGA-K)、クラウン(高級車向けFR用のGA-L)、ヤリス(FFコンパクトカー向けGA-B)と、現在は4種類の新プラットフォームが順次展開されています。

●TNGAコンセプトに基づいたダイナミックフォースエンジン

新プラットフォームに続いて2016年のこの日、トヨタは新たに開発した新世代エンジン、ダイナミックフォースエンジンを初公開しました。

2016年に発表されたダイナミックフォースエンジン、2.5L直4直噴エンジン
2016年に発表されたダイナミックフォースエンジン、2.5L直4直噴エンジン

ハイブリッドなど電動化技術が進んではいるものの、CO2削減のためには大多数を占めるエンジンの熱効率向上が必要。先行開発から製造まで、一気通貫で行う体制で開発した最初のダイナミックフォースエンジンは、2.5L直4直噴エンジンとハイブリッド用エンジンで、2017年「カムリ」に初めて搭載されました。

2017年10月にデビューした10代目カムリ。TNGAに基づき新プラットフォームとダイナミックフォースエンジンを搭載
2017年10月にデビューした10代目カムリ。TNGAに基づき新プラットフォームとダイナミックフォースエンジンを搭載

吸入空気量の増大と筒内流動(タンブル流)の適正化、燃焼効率に優れた高速燃焼、シリンダー内の混合状態を適正化するマルチホール直噴インジェクター、駆動損失を減らす連続可変容量オイルポンプなど、高度な基本技術を組み合わせることで、ガソリンエンジンは40%、ハイブリッド用エンジンは41%という世界トップレベルの驚異的な熱効率を(いずれも燃費は、従来比で20%向上)実現したのです。

新プラットフォームにダイナミックフォースエンジンを搭載し、これをベースに4種のプラットフォームに合わせ、排気量や気筒数を増減させたエンジンを搭載するという具合に、プラットフォームとエンジンをモジュラー化することで、現在もモデル展開を図っています。


トヨタTNGAのようなプラットフォーム戦略やモジュール化は、2010年以降ほぼすべての自動車メーカーが取り組んでいる優先テーマです。ユーザーの要求の多様性や環境規制にスピーディかつ低コストで対応するため、標準化、共用化、モジュール化は必須なのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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