スズキ「スイフトスポーツ(ZC32S)」3代目デビュー。6MTが価格172.8万円で買えたコスパ抜群のコンパクトスポーツ【今日は何の日?11月28日】

■スズキのスポーティ・フラッグシップとして進化した3代目

2011年にデビューした3代目スイフトスポーツ
2011年にデビューした3代目スイフトスポーツ

2011(平成23)年11月28日、スズキは3代目となる新型「スイフトスポーツ」を発表しました。

スイフトスポーツは、人気コンパクトカー「スイフト」のスポーツモデルとして2003年にデビュー。3代目は、“スポーティ・フラッグシップ”を開発コンセプトに、高次元のレベルアップが実現されました。


●スイフトのホットハッチとして誕生した初代スイフトスポーツ(HT81S)

2000年にデビューした初代スイフト(海外ではイグニスで販売)
2000年にデビューした初代スイフト(海外ではイグニスで販売)

2003年に登場した初代スイスポ(スイフトスポーツの略称、以下同表記)のベースは、2000年にデビューしたコンパクトカーの初代スイフトです。スイフトは、カルタスの後継車として登場し、軽自動車「Kei」の部品を流用したワイド版で、低価格が売りでした。

2003年にデビューした初代スイフトスポーツ(海外ではイグニススポーツで販売)
2003年にデビューした初代スイフトスポーツ(海外ではイグニススポーツで販売)

スイスポは、スイフトより全幅を50mm拡大、全高を15mm下げて、スポーティな3ドアハッチバックスタイルへと変貌。パワートレインは、排気量を1.5Lに拡大してハイチューニングされた直4 DOHCエンジンとクロスレシオの5MTの組み合わせです。

最高出力115PS/最大トルク14.6kgmのパワーを支える足回りは、専用サスペンションと4輪ディスクブレーキ、さらに専用エアロパーツやオーバーフェンダーも装備され、本格的なスポーツ走行が楽しめました。特に欧州では、JWRC(ジュニア世界ラリー選手権)で大活躍して、“黄色い弾丸(イエローブレット)”と呼ばれて多くの走り好きの若者から人気を集めました。

●2代目(ZC31S)で基本設計を刷新し人気のFFホットハッチに

2代目となるスイスポは、前年2004年の2代目スイフトをベースにして2005年に登場。初代で不評だった軽ベースのプラットフォームを、専用設計のプラットフォームに刷新し、世界戦略車となりました。

2005年にデビューした2代目スイフトスポーツ。専用プラットフォームに変更。
2005年にデビューした2代目スイフトスポーツ。専用プラットフォームに変更

スタイリングは、専用のエアロパーツやテールランプユニット、特にフロントバンパーの大型化によってスポーティさをアピール。エンジンは、JWRCのレギュレーションに準じて排気量が1.6Lに拡大され、初代と同様に高圧縮比や鍛造ピストンなどチューンナップが施されました。

軽量ボディに最高出力125PS/6800rpmを発生する高性能1.6L直4 DOHCエンジンを搭載した2代目スイスポも、軽快な走りで人気を獲得。スイスポの実質的な躍進は、このモデルから始まったのです。

●すべてを進化させレベルアップした3代目(ZC32S)

3代目スイスポは、高張力鋼板を積極的に使ったシャシーを採用し、剛性と強度を高めながら先代に対して約10kgの軽量化に成功。スタイリングは、大開口のグリルやフォグランプベゼル、ルーフエンドスポイラーなどを採用。インテリアも黒基調に赤のステッチを多用して、スポーティさをアピールしました。

2011年にデビューした3代目スイスポ
2011年にデビューした3代目スイスポ

エンジンは、先代と同じ1.6L直4 DOHCですが、可変吸気システムの採用や吸気抵抗を減らすなどをし、最高出力を10PS向上。組み合わされるトランスミッションは、6速MTと副変速機付きCVTの2種が用意されました。

足回りには、専用チューニングされたサスペンションや、乗り心地とコーナリングを両立させるショックアブソーバーを採用。これによって、さらにレベルアップしたスポーティで安定した走りが実現。それを実証するように、ジムカーナやダートトライアル、ラリーなど、国内のモータースポーツで大活躍しました。

車両価格が172.8万円(6速MT)と200万円を切る低価格で、これもスイスポ人気を加速しました。ちなみに、当時の大卒初任給は、20.1万円(現在は約23万円)程度でした。


スズキが得意とする軽量化をスポーツモデルに生かしたスイスポは、走りの楽しさを200万円程度の価格で体感させてくれる、唯一無二の存在です。来年2024年春頃には、次期スイスポが登場するとの情報があります。多くのファンが待ちわびています。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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