■2025〜2027年に6編成18両を導入
伊予鉄道は2023年11月14日のプレスリリースで、鉄道線(横河原線・高浜線・郡中線)向けの新型車両7000系を導入することを発表しました。
7000系は近畿車輛が製造。車体はステンレス製で、愛媛らしさを表現するためオレンジ色にカラーリングしています。
制御装置はVVVFインバータ制御と回生ブレーキを採用した他、LED車内照明や高効率な補助電源装置(SIV)を採用して省エネルギー性能を向上。 車内はバリアフリーに適合させ、車椅子スペースやLCD次駅案内表示器を設置しています。
また、行先・次駅案内の英語表記と英語アナウンスを導入して、外国人観光客にも対応。扉上部にはデジタルサイネージを導入して、中吊り広告の無い広々とした車内とします。
7000系は3両編成6本を導入。2025〜2027年に毎年2編成ずつ導入して、700系を順次置き換える計画です。投資額は約39億円で、環境省の国庫補助金を活用する予定です。
●伊予鉄鉄道線車両の現況
伊予鉄道の鉄道線で現在運行している車両は、7000系の置き換え対象となっている700系(3両編成4本/2両編成2本)の他、610系(2両編成2本)と3000系(3両編成10本)という陣容となっています。700系は元京王電鉄京王線5000系・5100系で、1987〜1994年に導入しました。
伊予鉄道では、1984〜1985年に京王電鉄京王線2010系を購入した800系を導入していて、700系と合わせて伊予鉄道で運用していた吊り掛け駆動の旧式車両を淘汰。さらに、冷房化を推進しました。なお、800系は2010年までに全車引退しています。
700系に淘汰された吊り掛け駆動の旧式車両のうち、100系106号は銚子電気鉄道に譲渡。デハ801として2010年まで使用し、引退後も銚子電気鉄道外川駅構内で保存されています。
800系・700系の導入により、吊り掛け駆動の車両は姿を消しましたが、残っていたカルダン駆動の高性能車600系も老朽化したので、伊予鉄道は1995年に610系2両編成2本をアルナ工機で新造して導入しました。伊予鉄道が鉄道線に新造車を導入したのは、600系以来37年振りです。
610系は、伊予鉄道初のステンレス車体を採用。一方、制御装置は京王5000系から流用したので、700系と同じ抵抗制御方式となっています。
600系の引退で、1950年代以前の伊予鉄車両は消滅しましたが、2000年代に入ると800系・700系の老朽化も進行しました。そこで、京王電鉄井の頭線3000系を購入、改造した伊予鉄道3000系を、2009〜2012年に導入しました。
京王3000系は、ステンレス車体にFRPの前面を採用して「ステンプラカー」と呼ばれた車両ですが、伊予鉄道に譲渡された編成はリニューアル改造で、FRPを普通鋼に交換しています。また、伊予鉄道への導入に際して、制御装置をVVVFインバータ制御に改造しています。3000系の導入で800系および700系の一部を置き換えました。
置き換えられた800系のうち、2両編成2本が銚子電気鉄道に譲渡され、2000形として2010年から営業運転をしています。2016年には700系2両編成1本も銚子電気鉄道に譲渡し、3000形として運行しています。
残った700系16両は引き続き運用してきましたが、610系以来20年振りの新造車として導入する7000系によって置き換えられる予定です。
これにより、伊予鉄道の鉄道線の車両は全車ステンレス車体となります。また、610系以外の車両はVVVFインバータ制御となって省エネルギー化も進行します。合わせて実質的に非化石電源由来の再生エネルギー100%かつCO2フリーの電気を使用する事で環境改善が進みます。
(ぬまっち)