ヤマハのネオレトロな原付二種スポーツ「XSR125 ABS」が登場。若者ライダー向け新型の特徴や魅力をチェックしてみた

■クラシカルな外観と扱いやすさが魅力の125ccモデル

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が、新型の原付二種スポーツ「XSR125 ABS(以下、XSR125)」をついに正式発表し、2023年12月8日に発売することを明らかにしました。

発表会のステージに登場した新型XSR125
発表会のステージに登場した新型XSR125

2023年3月~4月のモーターサイクルショー(大阪・東京・名古屋)で初披露され大きな話題を呼んだこのモデルは、レトロな外観とパフォーマンスを調和させた「XSR」シリーズの125cc版。

従来、ヤマハはこのシリーズに、900ccの「XSR900」、700ccの「XSR700」といった中・大型モデルをラインナップ。いずれも近年世界的に人気が高い「ネオレトロ」と呼ばれるジャンルに属することで、根強い人気を誇っています。

そのシリーズ末弟として登場したXSR125は、特に近年増加している若いライダー向けに開発されていることがポイント。シリーズ共通のクラシカルな外観を継承しつつも、初めてバイクに乗るライダーでも扱いやすい特性や、ギアチェンジなどの操作でバイクを操る感覚を楽しめる工夫が盛りだくさんだといいます。

そんなXSR125の発表会が、2023年11月9日に東京都内で開催されたので、このモデルの特徴や魅力などをチェックしてきました。

●ヤマハの「XSR」シリーズとは?

ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶXSRシリーズは、前述のとおり、レトロなスタイルを現代風にアレンジしたスポーツバイクです。

右からXSR900、XSR700
右からXSR900、XSR700

シリーズ最初のモデルは、2016年に登場したフラッグシップのXSR900。ネイキッドスポーツの「MT-09」をベースに、丸目1灯ヘッドライトなどでビンテージ感あふれる外観を演出。

2022年にフルモデルチェンジを受けた現行モデルでは、最高出力120psを発揮する888cc・直列3気筒エンジンや、路面状況などに応じ出力特性などを制御する「トラクションコントロール」などを採用。クラシカルな外観だけでなく、スポーティで扱いやすい走りが魅力の大型モデルです。

また、2017年には兄弟車としてXSR700も発売。こちらは688cc・直列2気筒エンジンを搭載し、アップライトなバーハンドルによる楽な乗車姿勢や、フィット感のあるダブルシートなどを採用。街乗りはもちろん、郊外のツーリングまで多様なシーンでリラックスできる乗り味が魅力のモデルです。

XSRシリーズの元祖となるXS650
XSRシリーズの元祖となるXS650

ちなみに、車名にある「XS」とは、ヤマハ初の4ストローク車として1970年に登場した「XS-1」、その後継モデル「XS650」が由来。

当時、日本では高速道路が普及したことで、バイクにも大型化・高速化へのニーズが高まっていました。また、世界市場でも大排気量モデルに多くの人気が集まっていた時代でした。

そんな背景のなか、細身のダブルクレードルフレームにスリムなOHC・バーチカルツインエンジンを搭載したXS-1は、日本はもちろん各国で大ヒットを記録。後に続くヤマハ製ロードモデルの礎となったバイクです。

●なぜギア付きの125ccモデルを開発?

そんなバックボーンを持つシリーズ最新作がXSR125。ヤマハでは、この原付二種モデルを「近年増加する若年層の2輪免許取得者に対応するため」に開発したといいます。つまり、10代後半や20代の免許を取ったばかりの若者ライダー向けということですね。

発表会では、XSRシリーズが若いライダーに人気が高いことも解説された
発表会では、XSRシリーズが若いライダーに人気が高いことも解説された

確かに125ccクラスであれば、より大型のモデルと比べ価格が比較的リーズナブルですから、若者にも手が届きやすいといえます。

また、軽量な車体などによりバイク初心者でも乗りやすいことも魅力。しかも、今回登場したギア付きモデルであれば、バイクを自分で自在に操る感覚も味わえることで、スクーターモデルと違った楽しさを味わえます。

ちなみにヤマハは、このモデルの他にも2023年10月16日に125ccスーパースポーツモデルの「YZF-R125 ABS(以下、YZF-R125)」と、その兄弟車となる155cc(軽二輪)モデル「YZF-R15 ABS(以下、YZF-R15)」を発売。

シャープな外観を持つネイキッドスポーツでも、2023年11月10日に「MT-125 ABS(以下、MT-125)」という原付二種モデルを発売しており、いずれもターゲットは若いライダーだといいます。

ネオレトロバイクは2010年頃から欧州で人気が高まったジャンル
ネオレトロバイクは2010年頃から欧州で人気が高まったジャンル

XSR125を含めた4モデルは、どれも前述したモーターサイクルショーで初披露されたのですが、なかでも大きな注目を集めたのが、今回発表されたXSR125だといえます。

ヤマハによれば、兄弟車のXSR900やXSR700の場合も、購入ライダーの年代層は「10代~30代が多い傾向にある」とのこと。他のヤマハ製バイクと比べ、より多くの若い年代が、ネオレトロなXSRシリーズを買っているというデータがあるそうです。

XSR125は、そうしたXSRシリーズに属することと、街にもマッチするスタイリッシュな外観を持たせることで、より若いライダーなどに注目を集めていることがうかがえます。

●レトロさと個性を演出した外観デザイン

そんなXSR125の主な特徴を紹介しましょう。まず外観デザインは、オーセンティックでレトロな外観を持つXSRシリーズのフォルムを継承しつつも、「新たな個性を持たせていること」がポイントだといいます。

ヘッドライトやテールランプ、メーターなどに丸いデザインを採用
ヘッドライトやテールランプ、メーターなどに丸いデザインを採用

たとえば全体のサイドビューは、先端から後端にかけてのラインを水平基調とすることで、究極のシンプルさを表現。また、ヘッドライトやテールランプ、メーターなどに丸いデザインを採用したほか、カスタム感のあるタックロールタイプのシート、所々に配置されたアルミ製パーツなどにより、クラシカルなだけでなく、上質で愛着が湧くスタイルも演出しています。

さらに、前後17インチのブロックパターンタイヤやエンジンガードなどによるタフなイメージ、スリムな燃料タンクなどで軽快さも両立。気軽さや頼れる雰囲気を持たせた独特のシルエットが特徴です。

シルバー
シルバー

なお、カラーバリエーションには、「シルバー」「ライトブルー」「ブラック」「オレンジ」の4色を設定。好みやライフスタイルなどに応じたセレクトができる、幅広いカラーを用意しています。

●新開発エンジンは扱いやすさも魅力

エンジンには、新開発の124cc・水冷4ストロークSOHC単気筒を採用。最高出力11kW(15PS)/10000rpm・最大トルク12Nm(1.2kgf-m)/8000rpmを発揮するこのエンジンは、「VVA」という可変バルブ機構を採用していることがポイントです。

新開発の124cc・水冷4ストロークSOHC単気筒エンジン
新開発の124cc・水冷4ストロークSOHC単気筒エンジン

エンジン内で燃焼する混合気を採り入れる吸気側バルブを動かすカムに、低速向けと中高速向けを装備し、7000~7400rpmの回転数で切り替わるというのがこの機構。これにより、全域で優れたトルク特性を発揮し、ライダーの気分によって様々なシーンが楽しめる加速性能や、加速感を味わえるといいます。

特に、XSR125では、専用のECUを採用した他、よりスポーティな設定のYZF-R125やMT-125が採用するトラクションコントロールも「あえて」非採用に。これらにより、よりライダーが意のままに操れる乗り味とし、市街地からワインディングまで、幅広いシーンを楽しめる設定となっているそうです。

ワイドなバーハンドルなどで自由度の高いライディングポジションを実現
ワイドなバーハンドルなどで自由度の高いライディングポジションを実現

他にも、加減速時にストレスのないシフト操作を実現する「アシスト&スリッパー(R)クラッチ」も採用。クラッチレバーの軽い操作性に寄与すると共に、減速時に過度なエンジンブレーキがかかりにくいことで、より安定した走りも実現します。

●独自のデルタボックス型フレームを採用

車体関連では、ヤマハ独自の「デルタボックス型フレーム」を採用。特にXSR125では、走行中に車体が受ける縦・橫の衝撃やねじれなどに対し、最適な剛性バランスを実現。

硬すぎず、柔らかすぎない、適度な剛性を持つことで、街乗りから郊外のワインディングなど、幅広いシーンで高い操作性を実現しています。

独自のデルタボックス型フレームを採用
独自のデルタボックス型フレームを採用

また、サスペンションには、高い剛性を誇る倒立式フロントフォークも採用。インナーチューブ径37mm、ストローク130mmのこのサスペンションにより、優れたショック吸収性や良好なタイヤ接地感などを実現しています。

加えて、裏面のリブ形状をチューニングしアーム長とのバランスを図った軽量アルミ製リヤアーム、140/70-17サイズのワイドなリヤタイヤなどとの組み合わせは、軽快で扱いやすいハンドリングに貢献。

ワイドなリヤタイヤ
ワイドなリヤタイヤ

ニーグリップしやすい形状のスリムな燃料タンク、アップライトなバーハンドル、スリムな車体などにより、コンパクトなライディングポジションも実現し、様々なシーンで自由な走りを楽しめるバイクに仕上がっているといいます。

なお、価格(税込)は50万6000円。前述の通り、2023年12月8日に発売される予定です。

(文:平塚 直樹/写真:平塚 直樹、ヤマハ発動機)

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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