トヨタ「MR-S」デビュー。MR2の後継車は、オープンスポーツに変貌して188万円という破格の安さで登場【今日は何の日?10月12日】

■クーペスタイルのMR2からフルオープンに変貌したMR-S

1999年にデビューしたミッドシップオープンのMR-S、軽快な走りと優れた操縦安定性を実現
1999年にデビューしたミッドシップオープンのMR-S、軽快な走りと優れた操縦安定性を実現

1999(平成11)年10月12日、トヨタから1984年にデビューした日本初の2シーターのミッドシップスポーツ「MR2」の後継として「MR-S」がデビューしました。

クーペスタイルのMR2に対して、MR-Sはフルオープンモデルに変わりました。


●日本初の量産ミッドシップスポーツMR2誕生

1984年、トヨタから日本初のミッドシップスポーツ「MR2」が発売され、大きな注目を集めました。

スラントノーズにリトラクタブルヘッドライト、リアはハイデッキのスポーティなスタイリングを採用。パワートレインは、1.5L 直4 SOHCおよび1.6L直4 DOHCエンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせが用意されました。

1984年に登場した日本初の量産ミッドシップスポーツのMR2
1984年に登場した日本初の量産ミッドシップスポーツのMR2

発売直後、スポーツカーとしては性能不足という指摘があったため、1986年にはスーパーチャージャーエンジンを追加し、1989年の2代目では排気量を2.0Lに拡大して、走りに磨きをかけました。

MR2は、初のミッドシップということで大きな話題を呼び、標準モデルが139.5万円という破格の安さでしたが、評判の割に販売は限定的で伸びませんでした。ちなみに当時の大卒初任給は13.5万円(現在は約23万円)程度です。

●MR2に続いたMR-Sは、オープンスポーツに大変身

MR2の流れを継いだMR-Sはクーペからフルオープンに変わり、ミッドシップのシャープなハンドリング特性、加えて970kgの軽量ボディと高い剛性を両立していることが特徴でした。

1.8L直4エンジンをシート背後に横置き搭載したミッドシップMR-S
1.8L直4エンジンをシート背後に横置き搭載したミッドシップMR-S

1.8L直4エンジンをシート背後に横置き搭載したミッドシップ、トランスミッションは5MTのみ。エンジン性能は、スポーツカーのパワーユニットとしては平凡ですが、軽量なボディのおかげで、特にコーナリング時に俊敏な走りができました。

一方で、10-15モード燃費はスポーツカーらしからぬ14.2km/L、ハードなスポーツ走行でも10km/L以上を達成するなど、燃費の良さも注目されました。

オープンモデルながら、標準グレードが188万円と200万円を切る手頃な価格が魅力でしたが、生産台数は2007年までの8年間で7万7840台と、微妙な結果となりました。ちなみに、当時の大卒初任給は19.6万円(現在は約23万円)程度でした。

●ホンダを中心に過去に存在したミッドシップモデル

1990年にデビューした初代NSX。2代目は、2022年に生産終了
1990年にデビューした初代NSX。2代目は、2022年に生産終了

ミッドシップは、正確にはミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)で、車体中央付近にエンジンを搭載して後輪を駆動させる方式。重心が中央近傍に設定できるので、ステアリング操作に対してレスポンス(回頭性)が良く、操縦安定性が優れているため、スーパーカーなど高性能スポーツを中心に採用されています。

国内では、最近生産を終えましたがホンダのスーパースポーツ「NSX」や「S660」がミッドシップでした。過去には、MR2、MR-S以外にも、ホンダの軽スポーツ「ビート」「S660」、マツダの軽スポーツ「オートザムAZ-1」などがありました。

また、走りというよりパッケージング上のメリットを狙ったミッドシップとしては、トヨタのミニバン初代「エスティマ」、軽トラのスズキ「アクティ」とホンダの「バモス」、軽ワンボックスのスズキ「エブリイ」、軽乗用の三菱自動車「アイ」、ホンダ「ホンダZ」が採用していました。


日本では、NSXの生産終了を最後にミッドシップスポーツは消滅しました。ミッドシップでは、どうしても室内と荷室空間が確保しづらいという実用面での制約があり、特別な車となってしまいます。

また、スーパーカーのような車は別にして、「シビックタイプR」のようにFF車の運動制御が進化しているので、スポーツモデルでもミッドシップのメリットが薄れているということもあります。しかし車に何を求めるかは人それぞれ。究極の走りを支えるミッドシップの特性には、揺らぎはありません。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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