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■開幕からの連勝記録も「18」に更新
人工的に作られた丘や起伏に富んだダートコースを専用バイクで走り、速さを競う競技がモトクロス。その国内大会のなかでもトップライダーが参戦する「全日本モトクロス選手権」の最高峰IA1クラスで、ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)のジェイ・ウィルソン選手が年間チャンピオンを獲得しました。
ヤマハのワークスマシン「YZ450FM」を駆るウィルソン選手が栄光を手中にしたのは、2023年10月8日に決勝が行われた第7戦HSR九州大会(熊本県)。
2023年シーズンの全日本モトクロス選手権は全9戦が予定されていますが、開幕から全勝を続けているウィルソン選手は、残り2戦を待たずして早々と年間王者を確定したうえ、連勝記録を18まで伸ばす偉業も達成しています。
●最新のステアリング制御システムも開発
ウィルソン選手はオーストラリア出身の29歳で、元々オーストラリアとニュージーランドで計6回のチャンピオンに輝いている実力派のライダーです。
全日本モトクロス選手権には、2022年シーズンから参戦。ヤマハのワークスチーム「ヤマハ・ファクトリー・レーシングチーム(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)」へ加入し、オフロード競技用マシン「YZ250F」を駆って、主に250ccの4ストロークマシンで争うIA2クラスにエントリー。参戦1年目にして、年間チャンピオンを獲得するという偉業を達成しています。
2023年シーズンでは、全日本モトクロス選手権の最高峰クラス、主に450ccの4ストロークマシンなどで競うIA1へ昇格。ヤマハが新設した新チーム「ヤマハ・ファクトリー・イノベーションチーム(YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM)」の監督兼ライダーとして参戦します。
ちなみに、ヤマハ・ファクトリー・イノベーションチームとは、ステアリングアシストの新機構、「EPS(エレクトリック・パワー・ステアリング)」の開発を進めるために設立されたチームです。
ヤマハが2022年シーズンの全日本モトクロスに投入し話題を呼んだEPSは、高速走行時はハンドルの安定感、低速走行時は軽快なハンドリングなどを生むことを目指して開発しているシステム。いわばステアリングの電子制御システムともいえるもので、ヤマハは将来的に市販車への投入も視野に入れて開発を進めているといいます。
そんなEPSを投入したワークスマシンYZ450FMを駆るウィルソン選手は、2023年シーズンのIA1で、前述の通り開幕から全戦で優勝。ダントツのポイントランキング1位で年間チャンピオンに大手をかけ、今回の第7戦を迎えます。
●雨のレースで完全勝利
1大会2ヒート制に加え、2ヒートの総合15位までが出場できるIAオープンといった全3レースが開催された第7戦HSR九州大会。当日、ウィルソン選手は、雨によりマディ(ぬかるみ)となった朝のタイムアタック予選でクラッシュ。不幸中の幸いで大事には至らなかったことで、ヒート1のスターティンググリッドに並びました。
降り続く雨により難しいコンディションとなったヒート1のレースで、YZ450FMを駆るウィルソン選手は、ホールショットこそ逃したものの、好スタートを決めて1周目からトップに浮上。数々の国内トップライダーが追いすがるなか、序盤から徐々に差を広げ、中盤には2番手と約10秒差という独走状態に。そのままトップでチェッカーを受け、開幕から16連勝を達成します。
続くヒート2でも、ウィルソン選手とヤマハYZ450FMは、2周目からトップを走り、そのままゴール。開幕から17連勝を記録すると共に、2022年のIA2に続き、国内最高峰のIA1でのチャンピオンを確定しました。
なお、その後に行われた前述のIAオープンでも、ウィルソン選手が1周目からトップに浮上し、そのまま優勝。開幕からの連勝記録を18まで伸ばしています。
2023年シーズンの全日本モトクロス選手権は、第8戦の埼玉トヨペットCUP(10月28日〜29日/埼玉県・オフロードビレッジ)と、最終戦の第61回 MFJ-GPモトクロス大会(11月11日〜12日/宮城県・スポーツランドSUGO)を残すのみ。
ウィルソン選手とヤマハYZ450FMが、どこまで連勝記録を伸ばすのかが気になるところですね。また、ヤマハが開発を進め、ウィルソン選手がテストを手掛けるEPSが、どのような進化を遂げ、どのように市販車へ投入されるのかも今後注目です。
(文:平塚直樹)