日本GP3位も空しく、ホンダMotoGPのエース「マルク・マルケス」が2023年限りでチームを離脱する訳とは?

■かつての「最強タッグ」が11年目に破局

世界最高峰2輪レース「MotoGP(FIMロードレース世界選手権)」で、ホンダのワークスチーム「レプソルホンダ(Repsol Honda Team)」のエースとして11年間活躍してきた「マルク・マルケス」選手が、2023年シーズン限りでホンダを離脱することが発表されました。

雨の日本GPで激走するマルク・マルケス選手
雨の日本GPで激走するマルク・マルケス選手

ホンダ傘下のレース専門会社ホンダレーシング(以下、HRC)が2023年10月4日に公表した内容によれば、「HRCとマルケス選手との4年契約は、まだ1年残っているものの、契約の早期終了に両者が合意」したとのこと。

マルケス選手といえば、2013年のMotoGPデビュー以来、ホンダのワークスマシン「RC213V」を駆り、通算6度の年間チャンピオンを獲得した超実力派のライダーで、まさに「ホンダMotoGPの顔」ともいえる選手です。

2023年シーズンのホンダとマルケス選手は、不調でなかなか成績を出せなかったものの、10月1日に決勝が行われた日本GP(モビリティリゾートもてぎ)では、雨のレースで3位表彰台を獲得。日本のバイクファンを大いに湧かせてくれただけに、突然の離脱発表はとても残念だといえます。

●6度の年間王者など数々の記録を達成

マルケス選手は前述の通り、2013年に超大型新人としてワークスチームのレプソルホンダに加入。MotoGPデビューイヤーにいきなり年間チャンピオンを獲得しただけでなく、最高峰クラスにおけるタイトル獲得の史上最年少記録(20歳266日)を樹立しました。

マルク・マルケス選手
マルク・マルケス選手

翌2014年にも開幕戦からの10連勝を含め、シーズン全13勝という最多勝利記録で二連覇を達成。2016年から2019年には4連続のシリーズチャンピオンに輝き、通算6度のMotoGP王者となったほか、うち5回は三冠(ライダー、コンストラクター、チーム)も達成しています(2023年10月1日第14戦日本GP終了時点)。

当時のMotoGPといえば、ヤマハのバレンティーノ・ロッシ選手やホルヘ・ロレンソ選手、マルケス選手と同じレプソルホンダのダニ・ペドロサ選手、ドゥカティのアンドレア・ドヴィツィオーゾ選手など、強豪ライダーがひしめく激戦区でした。

ホンダとマルケス選手は、それらトップメーカーのマシンや実力派ライダーを抑えて次々と新記録を樹立し、まさに「絶対王者」の名を欲しいままにしたのです。

ところが、2020年シーズン、マルケス選手は開幕戦で激しい転倒を喫し、右腕骨折の大けがを負い戦線を離脱。それをきっかけに長期欠場をしてしまうなど、2022年シーズンまで体の故障との戦いが続くことになります。

●ホンダ離脱の原因は?

2023年シーズンのマルケス選手は、久しぶりに肉体面での不安がなくなり再起することが期待されていたものの、今度はマシン面で問題が発生。マルケス選手が休んでいる間に、ホンダのRC213Vは、ドゥカティやKTM、アプリリアといった欧州メーカー製マシンと性能的に差を付けられてしまったのです。

マシン差が出にくい雨のレースで実力を発揮したマルク・マルケス選手
マシン差が出にくい雨のレースで実力を発揮したマルク・マルケス選手

そのため、かつて最強タッグといわれたホンダとマルケス選手は、かなり苦しい戦いを強いられることに。しかも、2013年のデビュー時に20歳で最年少チャンピオンを獲得したマルクス選手も今や30歳。30歳代で引退するライダーも多いMotoGPでは、マルケス選手のキャリアもそう長くないのでは?といった指摘もなされていました。

そういった背景もあり、2023年シーズンの序盤から、マルケス選手が他チームに移籍するといった噂が出ることに。最近では、前述した10月1日の日本GP開催時に、マルケス選手とHRCが話し合いを行い、なんらかの結論を出すのでは…といった話も出ていました。

そして、日本GP直後の10月4日に先に紹介した「契約の早期終了」発表に。

HRCによれば、「両者はそれぞれの目標とゴールを達成するためには、別の道を追求することが最善であるとの結論に達し、2023年のシーズン終了をもって、その協力関係を終了することで合意」したといいます。

かつて、連勝街道をまっしぐらに進み、まさに蜜月関係だったといえるホンダとマルケス選手だっただけに、本当に残念な結果です。

MotoGP第14戦の日本GPで3位表彰台を獲得したマルク・マルケス選手
MotoGP第14戦の日本GPで3位表彰台を獲得したマルク・マルケス選手

あくまで私見ですが、ホンダとマルケス選手が3位となった今回の日本GPはかなり強い雨が降り、全24周のレースが中断し、半分の12周で終了。マシン差がさほど出ない豪雨で周回数も短かったことで、マルクス選手は実力を発揮しやすかったことがうかがえます。

また、「常勝」とまでいわれたマルクス選手にとっては、例え3位表彰台でも「勝ち」ではなく、満足できなかったのかも。つまり、日本GPの好結果もマルケス選手がホンダを離れる気持ちに変化が起きるほどではなかったのではないでしょうか。

マルク・マルケス選手
マルク・マルケス選手

なお、マルケス選手の2024年シーズンについてはまだ発表がありませんが、ドゥカティのサテライトチームで弟のアレックス・マルケス選手も所属する「グレシーニレーシング」への加入が有力ではないかといった噂が出ています。

また、マルケス選手の後任としてレプソルホンダに誰が加入するのかも、現時点では不明です。一説によれば、ホンダは2024年シーズン向けの新型マシン開発に、F1のエンジニアも加えて全力で行っているとのこと。

果たしてそのマシンを操る新ワークスライダーが誰なのか、そして「強いホンダ」が再び帰ってくるのかが気になるところです。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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