軽商用バッテリーEV・ホンダ「N-VAN e:」はN-VAN同様、助手席側ピラーレスドアや低床設計を受け継ぐ

■航続距離の目標は、WLTCモードで210km以上。2024年春の発売予定

2023年9月28日、ホンダは新型軽商用バッテリーEV(BEV)の「N-VAN e:」のティザーサイトをオープンしました。

同モデルは10月25日のプレスデーからスタートする(一般公開は10月28日〜)「ジャパンモビリティショー2023」にも出展されます。

充電口をフロントに配置することで、乗降時やドアの開閉時の干渉をなくしている
充電口をフロントに配置することで、乗降時やドアの開閉時の干渉をなくしている

輸送、運送業界でもカーボンニュートラルを実現するため、電動化車両へのニーズが急速に高まっていて、とくに大手運送会社は今後、電動化をさらに加速させるはず。

しかし日本勢の商用BEVは、極端に選択肢が少なく、軽自動車では復活を果たした三菱ミニキャブ・ミーブのみ。スズキ、ダイハツ、トヨタも2023年5月に、航続距離200km程度の商用軽EVバンを明らかにし、スズキ、ダイハツ、トヨタが、それぞれ2023年度内に導入する予定です。

「N-VAN e:」の充電イメージ
「N-VAN e:」の充電イメージ

ホンダの「N-VAN e:」は、その名のとおり、N-VANがベースです。

パワーユニットは、電動アクスルの小型化をはじめ、大容量かつ薄型化されたバッテリーが採用され、高電圧部品の集中配置により、商用車に必要なラゲッジスペースと実用的な航続距離を確保しているそうです。

助手席側のピラーレス(写真はガソリンモデルのN-VAN)
助手席側のピラーレス(写真はガソリンモデルのN-VAN)

N-VANの美点である、商用車としての積載性や広々したキャビンは健在で、荷室のフロア下に搭載されるバッテリーを薄型化。床はフラットで低く、天井を高くすることで、広く、大容量なラゲッジスペースが用意されます。

また、助手席から後席までフラットにすることで、長尺物の積載も可能。さらに、助手席側のセンターピラーをなくした大開口部により、横側からも多様な荷物の積み降ろしができるなど、ベース車の美点が受け継がれています。

気になる航続距離は、配送業務に十分対応する航続距離として、WLTCモードで210km以上を目標に掲げて開発。また、エアコンの消費電力を抑え、実用航続距離の延長に寄与するECONモードも設定されそうです。充電、給電では、より短時間で充電できる6.0kW出力の普通充電器に対応。充電時間は約5時間で、夜間に充電すれば翌朝からフル充電でスタートできます。

充電時の使い勝手も考慮されていて、車両前部に充電リッドを配置することで、充電、給電時にも充電コードなどを気にせずに、乗降やドア開閉が可能になります。

「N-VAN e:」のエクステリア
「N-VAN e:」のエクステリア

加えて、ディーラーオプションで設定されるAC車外給電用コネクターの「Honda Power Supply Connector(パワーサプライコネクター)」を使えば、N-VAN e:の駆動用バッテリーで合計1500Wまでの電化製品を使用することもできます。停電や災害時などでも簡単に電気を取り出すことができます。

ほかにも、可搬型外部給電器「Power Exporter e: 6000(パワーエクスポーターイー)」「Power Exporter 9000」を使うことで、それぞれ最大6kVA、9kVAの高出力給電が可能。災害時だけでなく、移動販売車やキャンプなどのレジャー用等でも、出力の高い冷蔵庫や冷暖房器具など、複数の電化製品を同時に使用することができます。

使用済み自動車のバンパーがリサイクルされた「バンパーリサイクル材」を採用
使用済み自動車のバンパーがリサイクルされた「バンパーリサイクル材」を採用

走りは静かでスムーズなBEVの利点を備えつつ、ブレーキ操作に対してリニアに反応する電動サーボブレーキを軽商用バンとして初採用(ホンダ調べ)。減速時に安心感のあるブレーキフィールを実現します。スムーズなブレーキの掛かり方で、車内の積載物を荷崩れさせづらいコントロール性も得られるとのこと。

また、積載時や降坂時の走りにも配慮されていて、ブレーキディスクローターのサイズアップや、Dレンジと比べて減速度を大きくするBレンジも設定されています。

エクステリアもN-VANのデザインを踏襲しながら、使用済み自動車のバンパーがリサイクルされた「バンパーリサイクル材」をフロントグリルなどに採用。

インテリアには、使いやすいスクエアな空間や、ニーズに合わせてフレキシブルに使える収納をはじめ、エアコン操作部やシフトポジションスイッチなどの機能をドライバー席側に集中配置するなど、利便性、操作性の向上も盛り込まれています。

「Honda Power Supply Connector」のイメージ
「Honda Power Supply Connector」のイメージ

そのほか、BEVらしい装備として、スマホのHondaリモート操作アプリを使うことで、出発前のタイマー設定、充電待機時間設定、最大電流量設定、最大充電量設定、外部給電下限SOC(残充電量)設定を遠隔で行うことも可能です。快適な移動と電気代の抑制、航続距離の最大化にも寄与します。

さらに、安全運転支援機能が全タイプに標準化されるとともに、軽商用バンとして初めてサイドカーテンエアバッグが前席両側に標準装備されます。

なお、2023年6月より、日本でヤマト運輸と「N-VAN e:プロトタイプ」を使った実用性検証が開始されているだけでなく、海外でも2023年9月から、インドネシアで国営石油会社のプルタミナとの実用性検証がスタートされています。

商品配送における実用的な航続距離や走り、バッテリーの信頼性や充電プロセスなどの実用性検証が重ねられていて、発売に向けて準備が進められています。なお、発売開始は、2024年春の予定です。

(塚田勝弘)

【関連リンク】

N-VAN e:先行情報サイト
https://www.honda.co.jp/N-VAN-e/new/

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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