■ガソリンとほぼ同じと言われたCNF燃料。実は細かいところが違っていた
2023年7月8日(土)~9日(日)に、宮城県のスポーツランドSUGOで開催された、ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 第3戦「SUGOスーパー耐久3時間レース」。スーパー耐久の中でも注目を集めるクラスがST-Qクラスで、賞典外とはなりますが、レースを生かした車両開発を行うために設定されているクラスです。
『スーパー耐久と言えば水素カローラ』と言われるほど話題となっているこのST-Qクラスですが、カーボンニュートラルの取り組みは水素だけではなく、バイオディーゼル、そして今回の話題となる「カーボンニュートラル燃料(CNF)」を使ったGR86とBRZもST-Qクラスを走っています。
CNFとは、ガソリンの代替えとして使える燃料で、すでに空気中に存在する二酸化炭素を回収して燃料としています。その二酸化炭素も、現在は植物由来のバイオ系燃料となっていますが、将来的な目標は、空気中の二酸化炭素と再生可能エネルギーで作り出した水素を使っての合成燃料の量産、と言われています。
スーパー耐久で使われるバイオ系のCNFは、現在のところでは全て輸入品。ドライバーに聞いてもCNFはガソリンと遜色ない、ほぼ同じ使用感だ、と言われます。
しかし、科学的に見て本当に全く同じなのでしょうか?
このCNFについて、GRパワトレ開発部の小川輝さんにお話をうかがうことが出来ました。
まず、一般的なガソリンと現在スーパー耐久で使われているCNFを比べると、揮発温度に差があるとのこと。ガソリンに比べて、CNFの方が液体から気体に変わる揮発温度が高いので、CNFの方が燃え残りが多くなるようなのです。
その燃え残りは、シリンダーを通過し、エンジン下部のオイルパンに溜まっていきます。オイルパンにはエンジンの潤滑油、いわゆるエンジンオイルが入っていますので、そこにCNFの燃え残りやハイドロカーボンなどがたまると、エンジンオイルを薄めていってしまい、エンジンオイルとしての性能を保てなくなるというのです。
●目指すはCNF量産化
これらの燃焼の問題はトヨタ、スバルともに情報を共有し、CNFにクルマを合わせていくのか、クルマにCNFを合わせていくのかを、2022シーズンを通して議論してきたと言います。
そして、スーパー耐久でCNFを使ってレースを行い研究する課題の一つは、CNFの量産化で、2022シーズンを通して得られたデータと、それを元にした改良提案とを携え、バイオ系CNFの製造元である、ドイツのP1レーシングに行ったそうで、その改良されたCNFを今シーズンから投入しているということなのです。
改良されたCNFは、量産化を目指すため、JIS規格に適合するように性能調整されています。揮発温度は従来のハイオクガソリンと同程度となり、燃焼の効率も向上したと小川さんは語ります。
また小川さんは、「改良されたCN燃料を実際にサーキットで試してもらい、性能の確認を進めていくことで更なる改善につなげていきたいと思っています」とも語ります。
今現在、スーパー耐久では水素、バイオディーゼル、そしてCNFと、異なる燃料のアプローチでカーボンニュートラルへ向けた取り組みを行っています。バッテリーEVだけではゼロエミッションは実現しない、既存車のカーボンニュートラルも行わなくてはいけないという、トヨタをはじめとした日本の自動車メーカーの熱い取り組みを垣間見ることができる、スーパー耐久のST-Qクラス。
2023年7月29日(土)、30日(日)の第4戦 オートポリス戦には、再び液体水素カローラも参戦し、またCNF勢にはマツダ ロードスターの2リッターエンジン車も加わります。多種多様な車種でカーボンニュートラルを目指すST-Qクラスの雄姿を、オートポリスの現地やYouTubeでしっかりと見届けましょう。
(写真・文:松永 和浩)
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