阿蘇カルデラの南側を走る「南阿蘇鉄道」の全線運行を熊本地震から7年ぶり再開。新型車両MT-4000形、トロッコ列車ゆうすげ号も運行

■甚大な被害を大規模な工事によって復旧

●全線運行は2023年7月15日7年ぶり

2016年に発生した熊本地震で被災して運休となっていた南阿蘇鉄道立野〜中松間が2023年7月15日に復旧。7年ぶりに全区間での運行を再開しました。

7年振りに全線での運行を再開した南阿蘇鉄道
7年振りに全線での運行を再開した南阿蘇鉄道

南阿蘇鉄道は熊本県のJR豊肥本線立野駅を起点として、熊本県の阿蘇カルデラの南側を走って高森駅に至る17.7kmの路線。1928年2月12日に国鉄宮地線(豊肥本線の前身)の支線として開業し、同年12月2日に高森線として独立。1986年4月1日に第三セクターの南阿蘇鉄道に転換しました。

2016年4月14日に発生した熊本地震では、南阿蘇鉄道も甚大な被害を受けました。このうち中松〜高森間についてはレール、枕木の浮き上がりや線路の歪みなど被害が比較的軽微だったため、震災から4か月後の2016年7月31日から運転を再開しました。

上松〜高森間は震災後4か月で運行を再開しました
中松〜高森間は震災後4か月で運行を再開しました

しかし、立野〜中松間については土砂流入や線路流失などの被害が大きく、特に立野〜長陽(ちょうよう)間は立野駅の法面崩壊、立野橋梁の橋脚損傷、犀潟山トンネルの亀裂および坑口のずれ、第一白川橋梁の破断・変形、戸下トンネルの亀裂など多数の箇所が被災。2017年4月に、国土交通省は復旧には5年の期間と65〜70億円の予算が必要と報告しています。

2019年11月、南阿蘇鉄道は運休区間を2023年夏までに復旧させる方針を示しました。復旧工事は、犀潟山トンネルの除去や第一白川橋梁の掛け替えなどかなり大規模なものとなりました。

一方、熊本県や南阿蘇村、高森町で構成する南阿蘇鉄道再生協議会は、南阿蘇鉄道からJR豊肥本線肥後大津駅までの乗り入れを構想。JR九州もこの構想に協力する意向を示しました。

南阿蘇鉄道はJR豊肥本線への乗り入れに備え、新型車両MT-4000形2両を2022年11月末に搬入し、2023年4月14日から営業運転を開始しました。

一方、立野駅は2023年3月31に新駅舎が完成し、南阿蘇鉄道のホームも改築されました。立野橋梁は橋脚を修復。第一白川橋梁は新しい鉄橋に架け替えられました。

●待望の運転再開イベントに地元は大盛り上がり

新型車両MT-4000形には記念ヘッドマークが取り付けられました
新型車両MT-4000形には記念ヘッドマークが取り付けられました

待ちに待った7月15日の南阿蘇鉄道全線運転再開。復旧区間はもちろんのこと、部分再開していた中松〜高森間の沿線も盛り上がりを見せ、各駅ではイベントが開催されました。

南阿蘇水の生まれる里白水高原駅に到着した列車を迎える沿線住民たち
南阿蘇水の生まれる里白水高原駅に到着した列車を迎える沿線住民たち

全線で運転を再開した南阿蘇鉄道は14往復を運行。うち1往復が木・金・土休日の運行、2往復がトロッコ列車「ゆうすげ号」です。また、JR豊肥本線へ肥後大津駅へは朝の2往復が直通します。

豊肥本線肥後大津駅まで乗り入れたMT-4000形
豊肥本線肥後大津駅まで乗り入れたMT-4000形

豊肥本線への直通により、通学が便利になるほか、2034年度末には肥後大津駅から熊本空港までのアクセス線が開業する計画になっていて、南阿蘇への観光客誘致への期待もかかっています。熊本地震から復興を遂げた南阿蘇鉄道の今後が楽しみです。

ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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