■CX-60の、他車では見かけないあれこれ見つけた!
CX-60・ユーティリティ編の最終回。
整備性や、筆者が気に入った項目のほか、他車では見かけない、めずらしいCX-60のこの部分、あの部分を見ていきます。
といいながらも、ここに掲げるものの多くは過去にもごく少数ですが例があり、CX-60だけのものではありませんことをご了承ください。
●整備性
整備性といっても、前後ともライトはLEDで自前交換はできないし、フードを開ければすべてがカバーで覆われていて何かをいじることもできないし・・・、そのうちボンネットは溶接されるんじゃないかと思っています。
・フードを支えるガスステー
通常、開けたエンジンフードはつっかえ棒で支えられるものですが、CX-60は2本のガスステーで支持。つっかえ棒よりもコストがかかるということで、ガスステー式は高級車に限られるのが普通ですが、軽自動車ですらバックドアにガスステー2本を使っているのだから、思ったほど高いわけでもないんじゃないの・・・と思ったら、最新クラウンは全機種4気筒エンジンになったついでに(?)、フード支持もガスステーからつっかえ棒に格下げしていました。
筆者はつっかえ棒付きのクルマしか所有したことがなく、不便を感じたことはありませんが、工具やらオイルポットやらを片手に、他方の手ひとつで軽く開け閉めできるのはガスステー付きだからこそです。
・エンジンカバー
じっと眺めているうち、エンジンを覆う樹脂のカバーが、面倒な作業なく簡単に開けられることに気づきました。他社の他車はどうなのかな。
マツダマーク両脇のつまみを90°まわしてひっかけをはずし、ふたを開けるように持ち上げれば、はい、エンジンがこんにちは。要するに本来のフードの下にもう一枚フードがあるようなもので、ふた裏の黄色いフックをフード裏に引っ掛けて固定できます。
ふた裏には控えめな量の吸音材が施されており、アイドリング状態で開閉してみての音量には想像以上の違いがありました。室内で聞く音があれほど静かでも、カバーを上げれば音はやはりディーゼルで、あの静かさはこのカバーによるところが小さくないようです。
・カウル側の左右カバー
「いまのクルマは自分じゃあもういじれないヤ」のあきらめ心境で眺めていると見過ごしそうになりますが、カウル側左右のカバーも簡単に開けられます。
運転席側はブレーキフルードタンクが、左側はバッテリーが。CX-60のブレーキフルードを自前交換するひとは日本じゃまずいないし、すべきではないと考えますが、バッテリーのほうは緊急時も含め自前で交換も考えられます。けれど、フロントガラスが半分覆いかぶさっており、DIY交換はしにくいんじゃないかな。
・エンジンオイル量
筆者が最初に知ったのはポルシェ、次にアウディで、どうやらこれもヨーロッパ勢からの流れなのか。
これまでは、エンジンから引っこ抜いたオイルレベルゲージ先端の、L(LO)とH(HIGH)の間のオイル付着位置でオイル量を判断していましたが、他の国産車はまだ調べていないので知らず、このCX-60は、フィラーキャップはあるものの、そもそもこの棒っこがなく、エンジンオイル量をオーナーが直接見ることができません。
<エンジンオイル量の点検>
では、どうやって確認するか。クルマが自分で推し量ります。やってみました。
以下の手順で行います。
1.ボンネットが閉まっていることを確認する。
2.エンジンを始動する。
3.マツダコネクト、ホーム画面の「情報」を選ぶ。
4.「車両ステータスモニター」を選ぶ。
5.「エンジンオイルレベル」を選ぶ。
6.「計測開始」を選択する。
その待ち時間、数分かかると思ったらわずか数秒。
計測条件が整っていなかったのか、このメニュー文字がいつも薄いままでなかなか実践できなかったのですが、車両返却前日にようやく試すことが出来ました。ということは、これまではエンジン停止後10分以上経ってから(=循環していたオイルが下のオイルパンに溜まるまで待つ)点検するというやり方が常套だったのに、これはその逆で、一定距離走行後でないとできない。しかもエンジンをまわしながら計測・・・ガレージ作業の手始めはオイル点検からということはできなくなりました。
●独断と偏見・筆者が気に入った装備たち
・非常点滅表示灯
第3回の試乗後編で、「すばらしいアイデア」だから「もったいぶって後まわし」と書いた話をいよいよここで。
何でいままで誰も思いつかず、自分でもアイデアが浮かばなかったのだろう?
メーターパネル右下に置かれた非常点滅表示灯。通称ハザードですが、一般のクルマは赤三角のスイッチを押すとメーター内の左右のターンシグナルランプが同時点滅します。
CX-60ではさらにもうひとつ、メーター盤右下に、同時点滅する赤のパイロットランプをつけてくれました。
エンジンONのときとOFFのときとで違いがあり、ON時にハザードスイッチを入れると緑矢印の左右ターンシグナルランプと赤のパイロットランプの両方が点滅、エンジンOFF時は赤パイロットだけが点滅します。
路肩停車から発進するとき、ハザードONのまま右ターンシグナルを出して発進してしまうことがあります。でも外からはハザードのまま。自分の消し忘れを恥じることなく、ヨーロッパ車みたいにスイッチ自体が点滅してくれりゃあいいのにとスイッチのせいにしていましたが、何かの輸入車に乗ったときはそれでも忘れました(だめだこりゃ)。
なーんだァ、こんないい方法があったなんて。
残念ながら、この赤いパイロットランプがあるのは12.3インチメーター付きにとどまり、安い7インチマルチスピードメーターにはなく、ハザードスイッチを入れたときの働きはこれまでと同じです。
これはいまのところ内外眺めてもCX-60だけじゃないかな。この表示灯がマツダ車すべてに展開されるといいと思います。
・パノラマサンルーフ
いまや日本車は、電動スライドのガラスルーフがとっくに壊滅状態。かつては軽自動車にさえオプションで用意されていたほどなのに、いまのひとは予算をサンルーフにかけるくらいなら、エアロパーツや後席モニター付きオーディオにまわすのだそうな。
サンルーフ好きなので細かくいうと、パノラマサンルーフはXD Exclusive Mode、XD-HYBRID、PHEVそれぞれのPremium Sports、Premium Modernの5機種に標準装備、25S Exclusive Modeと25S、XDそれぞれのL Package、そしてXD-HYBRIDとPHEV各々のExclusive SportsとExclusive Modernに工場オプション。その他の機種では金輪際選べません。
ルーフは前後分割で、フロント側がチルト&スライド、リヤ側は固定で、後方からの電動式1枚シェードが全体を覆います。
致し方ないですが、残念なのは開く量が僅少なことで、筆者実測でチルトアップ量が17mm、スライド時の開口前後寸が165mm。アウタースライドゆえ、フルスライド時のガラス板の突出量は75mmとなります。可能ならもうちょい開いてくれたほうがいいのですが、それでもないよりははるかにましです。
開ければ換気も素早くできる、雨の日でもシェードを開ければ明るい、晴れの日ならなお明るい、夜間ドライブで、美しいビル街の照明、星や月の明かりの光を見上げることができる・・・こんないいものはないのに。
筆者が以前使っていた日産車のサンルーフで感じた不便は、パワーウインドウにあるエンジンOFF後の作動タイマーがガラスルーフにまでおよんでいないことでした。そもそもルーフ開+エンジンOFF+ドア開の3条件が揃ったときは警報ブザーを鳴らしてほしかった・・・友人との食事で3時間過ごした後、クルマに戻ったら屋根が全開でゾッとしたことがあります。もし雨が降っていたら・・・この配慮不足はCX-60にも。このへん、トヨタは抜かりなく、まるで筆者の不満を汲み取ったかのごとく、エンジンOFF後の作動タイマーも閉め忘れ防止のブザーもあります。
いまやBCM(ボディコントロールユニット)管理なのだから、タダ同然のプログラム改修で解決できると思うけどなア。
・半ドア警告灯
正式には、「半ドア警告灯/リヤゲート警告灯/ボンネット開警告灯」。4枚ドア、バックドアばかりか、ボンネットの開閉状況まで知らせる・・・マツダのアイドリングストップ(i-stop)の作動条件に、「すべてのドア、リヤゲート、ボンネットが閉まっていること」があり、ということはボンネット部にもすでにセンサーが備えられているわけで、だったらボンネットの開閉状況をランプ表示で知らせちまおうという発想。
他に従来型のランプもメーター左下に併設されています。
というわけで、せっかくカラーの液晶によるグラフィカル表示なら、クルマの絵の屋根部分をくりぬき、走行中のサンルーフ開時は青空の色を模した水色表示、エンジン停止後の閉め忘れ時は赤色にして、ブザーとともに警告してほしかったぜ・・・
●マニアック! ワイパー特集
ガラス表面をゴムのブレードで直接引っ掻く・・・本数はともかく、雨粒を取り除くワイパーは、その方式も見た目も大昔から変わっていません。変わってはいませんが、作動のさせ方はずいぶん変化しています。
ここではワイパーをクローズアップしてみます。
・フルコンシールド? ワイパー
外から見れば丸出しのままなのに、ガラスのセラミック塗装の陰に隠して中からは見えないor見えにくいようにしただけの、名ばかりのコンシールド(concealed)ワイパーのクルマが多いですが、CX-60のワイパーは、中から見ても外から見てもほとんどフルコンシールドと認めてもよい停止位置になっています。ただしマツダは、カタログにも資料にもとくに謳っていません。
<ワイパーのサービスポジション>
通常、ワイパーのゴム交換を行うときはアームを起こしますが、このCX-60は停止位置からそのまま起こすことはできません。フードに引っ掛かるからです。このことからも、「フルコンシールド」を名乗ってもいいほどの位置にまで下がっていることがわかります。
というわけで、交換作業ができる位置までアームを動かす機能、これがワイパーサービスポジション。輸入車や一部の国産車でもちらほら見かけるロジックです。かつてクリッカーでは他車種で紹介していますが、CX-60でもお見せします。
1.車両電源をONにする。
2.車両電源をOFFにする。
3.OFFにして30秒以内にワイパースイッチレバーをMIST位置(上方向)に2回押し上げる。
ワイパーが作動し、反転位置で停止。ここでアームを起こせば交換作業が可能になります。
交換が終わったら、次の手順でアームを元の停止位置に戻します。
1.起こしていたアームをフロントガラス上に下ろす。
2.車両電源をONにする。
3.ワイパースイッチレバーをMIST位置(上方向)に2回押し上げる。
1を忘れるとボンネットに傷をつけるので、注意が必要です。
・ウォッシャーノズル
フード上に黒い豆つぶのように、またはカウルトップ樹脂部に目立たないように配されるのが通例のウォッシャーノズルは、CX-60ではワイパーのトーナメント部(ゴムがはまっている部分)に直付けされています。
レバーを引いてもウォッシャー液がガラスに吹いてこないので、液タンクが空なのかと思いたくなりますが、ゴムがこれから掻くガラス面を直付けノズルからの液が先に濡らすため、在来の、ガラス中腹に2~4点噴射するタイプ、霧を吹き付けるように横広がりに濡らすタイプに対し、わずかな瞬間とはいえ視野が遮られないのがメリット。過去もいまも一部国産車で用いられた例がありますが、コストがかかるのか、なかなか広まることのない方式です。
もうひとつ、この方式は筆者の経験上、アームがカウル部にあるスタート時から噴射するので、空調コントロールを外気導入にしているとき、ウォッシャー液の匂いが車内に入り込んできます。CX-60もしかり。瞬時のことなので筆者は何とも思いませんが、要改良の声が大きければ、ウォッシャー液作動時、瞬間的に空調を内気循環と外気導入を往復させるロジックが加わるのでしょう。まあ、そうするほどのことでもないか。
なお、スタートして定常作動するとき、90°前後で反転し、戻ったときの反転位置は停止位置ではなく、停止位置から10mmほど上であることに、上の写真を撮っているときに気づきました。OFF時はいったん10mm位置で止まった後下がって停止位置に・・・何のためかな。
・ヘッドライトウォッシャー
「ライト編」で書いたとおり、リヤフォグランプ装着車には、セットでフロントワイパーデアイサー、ヘッドランプウォッシャー、大型ウォッシャータンク&ウォッシャー液残量警告灯が備わります。
で、目薬をさすようにウォッシャー液を噴射するヘッドランプウォッシャーは、そのスイッチがどこにあるのかさんざっぱら探したのですが見当たりませんでした。
見当たらないはずで、そのスイッチはフロントウォッシャーと兼用。ヘッドランプ点灯後に初めてフロントウォッシャーを入れたときに噴射。以後、点灯中はワイパーレバーの手前2回引きで噴射。
やや強風&暗めのくもり天候での走行時、オートライト点灯に気づかない状態で、ガラス汚れを落とすべくウォッシャーを作動させたらフード先で突如霧が発生、ここでライトウォッシャーが出ているのだと気づきました。
ただ、強風に踊らされた霧状の液が、となりのクルマにまで飛散し、ちょっとだけ悲惨なことに・・・ここはフロントウォッシャーと連動させるのではなく、専用のスイッチを別建てする方がいいと思いました。
もっかのところ、使うときは、となりのクルマのドライバーが梅宮アンナではないことを確認する必要があります(覚えているかい?)。
・ウォッシャー液量警告灯
・・・という具合に、ウォッシャーがらみの写真を失敗しながら撮っていたら、メーターにこんな表示が。
タンク注入口スレスレまで液面が見えることを確認したつもりが、見間違えたのか、満量だったのに使いすぎたのか・・・あわててカー用品店で買ったウォッシャー液で満タンにしましたが、いいチャンスなので、めったに撮れないこの表示を写真にしました。
この警告をしてくれるクルマは少ないのですが、ほんとうはブレーキと同じくらい備えていてほしい警告だと思っています。
・ウォッシャータンク
そのウォッシャータンクは、エンジンルーム車両右側に設置。いまどきのクルマらしく注入口だけが顔を出すにとどまり、タンク本体は隠れているので、液量を目視できないのが不便ですが、警告灯があるので文句はありません。容量は標準車が2.2Lで、ヘッドランプウォッシャー装着車が倍近い4.2L。筆者が前に使っていた日産車もこの方式で、不便だったので改造してランプをつけてやろうと思ったのですが、想像以上に複雑な電子回路が必要なことがわかり、あきらめました。みんカラを見ると自前で回路を作って警告できるようにしているひとがいますが、心から尊敬します。ほんと、みんなすごいよ。
・リヤワイパー
ついでといっちゃあなんですが、リヤワイパーも。
払拭範囲はこのとおり。ピボットがバックドアにではなく、ガラス面に設置されているので、そのピボット点を中心にほぼ180°回転し、扇子形というよりも半円形状で雨滴を拭ってくれます。
中から見たときの様子はこのとおり。
ここまでやっておきながら、フロントガラス側で同じことをするのを忘れた・・・
・この穴、なーんだ?
ワイパーの話はおしまい。最後は隠れた機能のお話。
フロントバンパー両脇の穴。バンパー側から見てもタイヤ側から覗いても向こう側の光が見える・・・メーカー確認したら、「タイヤホイールアーチ前方からカーテン状の風を吹き出し、ホイールアーチ表面の流れを整流して空力改善するアイテム」なのだと。
筆者はてっきり、これはブレーキ冷却の穴かと思い、ついでにディスクブレーキパッドの汚れを吹き飛ばしてくれればいいのにと思ったのですが、ホイールに付着したダストを洗浄するのすら面倒なのに、これがホイールハウス内に舞っちまおうものならなお掃除が大変なのでこれはアイデア倒れ。
空力改善といえば、高速路を走っての風切り音の少なさや、2トン近い車重のおかげもあるでしょうが、横風に吹かれてもまさにどこ吹く風で挙動を乱さなかったのも、空力改善の成果かもしれません。
というわけで、長々と続けてきたCX-60・ユーティリティ編はこれでおしまい。
次回は「車両設定編」です。
ごきげんよう。
(文・写真:山口尚志(身長176cm) モデル:星沢しおり(身長170cm))
【試乗車主要諸元】
■マツダCX-60 XD-HYBRID Exclusive Modern〔3CA-KH3R3P型・2022(令和4)年8月型・4WD・8AT・ロジウムホワイトプレミアムメタリック〕
★メーカーオプション
・ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 5万5000円(消費税込み)
・パノラマサンルーフ 12万1000円(同)
・ロジウムホワイトプレミアムメタリック特別塗装色 5万5000円(同)
●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm ●ホイールベース:2870mm ●トレッド 前/後:1640/1645mm ●最低地上高:180mm ●車両重量:1940kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/50R20 ●エンジン:T3-VPTH型(水冷直列6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ) ●総排気量:3283cc ●圧縮比:15.2 ●最高出力:254ps/3750rpm ●最大トルク:56.1kgm/1500~2400rpm ●燃料供給装置:電子式(コモンレール) ●燃料タンク容量:58L(軽油) ●モーター:MR型 ●最高出力:16.3ps/900rpm ●最大トルク:15.6kgm/200rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池 ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/21.2/22.4km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:505万4500円(消費税込み・除くメーカーオプション)