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■注目の高いBEVながら納期は最短で2.5カ月のRZ
2021年12月、トヨタ自動車は今後のBEV戦略に関する説明を行いました。その発表会では、開発を進めているトヨタ・レクサスブランドの電気自動車(以下BEV)を16車種披露しました。
その発表会の中で、2030年までに30車種のBEVを展開し、グローバル販売で年間350万台、レクサスブランドも同年までに、欧州、北米、中国でBEV100%を目指すと発表しました。
そして、2023年3月にレクサスは、カーボンニュートラル社会の実演に向けたバッテリーEV(以下BEV)展開の幕開けとなる、BEV専用モデルである「RZ450e」を発売しました。
RZ450eは、レクサス初のBEV専用モデルで、電動化技術がもたらすレクサスらしいクルマを、感性に訴えかける走りとデザインで体現し、BEVを軸とするブランドへ幕開けを告げるモデルとなっています。
ここでは、レクサスRZのインプレッションとともに、ライバル車といえる日産アリアとの比較を行ってみたいと思います。
●レクサス「RZ450e」をチェック!
BEVであるRZの外観デザインの特徴は、フロントデザインは内燃機関の冷却用構造を必要としないBEVの特徴を反映し、グリル開口部分がないことでしょう。しかも、レクサスの象徴でもあるスピンドルをグラフィックではない、立体の塊で表現し、「スピンドルボディ」という新たな表現へと進化させています。
RZのインテリアは、それぞれの乗員をもてなす空間づくりをベースに、クルマとドライバーが直感的につながり、より運転操作に集中できるコクピット思想「Tazuna Concept 」を取り入れているのが特徴です。
そして、シート表皮にはバイオ素材を約30%使用したサステナブルな素材と、温かみのある上質さを追求した「ウルトラスエード」を採用。クリーンでモダンな空間に、質感にこだわったシンプルなシート表皮を組み合わせることで、心地よい解放感を表現しています。
RZは、BEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用。バッテリーを車両フロア下に搭載することによる低重心など、運動性能に優れた特徴を活かし、操縦安定性と乗り心地の良さを高次元で両立しています。
さらに、グレードによってフロントとリアに「パフォーマンスダンパー」を採用し、ボディの無駄な動きを軽減するだけでなく、ダイレクトな応答性を実現させています。
RZに搭載されているパワートレインは、eAxleと呼ばれる高出力モーターを前後それぞれに搭載。これはモーター、トランスアクスル、インバーターを完全一体化し、コンパクトな構造が特徴です。フロントモーターが最高出力204ps・最大トルク266Nm。そして、リアモーターは最高出力109ps・最大トルク169Nmを発生します。
駆動方式は、ドライバーの意図に沿った気持ちの良い走りを実現する四輪駆動力システム「DIRECT4」を採用。このDIRECT4は車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどの情報を用いて、前輪: 後輪=100:0~0:100の間で制御し、発進加速性、操縦安定性の向上、低電費に貢献。RZ450eの満充電時の走行可能距離は、WLTCモードで494kmです。
今回試乗したのは、車両本体価格880万円のRZ450e バージョンLです。試乗車にはオプション装備の3万3000円のデジタルキーをはじめ、レクサスチームメイトアドバンスドパック(リモート機能付)+パーキングサポートブレーキ(周囲静止物)4万4000円、マークレビンソンプレミアムサラウンドサウンドシステム23万1000円、おくだけ充電1万3200円、寒冷地仕様3万1900円、パノラマルーフ26万9500円。そしてドライブレコーダー(前後方)4万2900円の、合計66万5500円のオプション装備を装着し、合計で946万5500円です。
RZ450eのボディサイズは、全長4,805mm×全幅1,895mm×全高1,635mm。ホイールベースは2,850mmで、サイズ的にはNXとRXの間となります。
RZ450eは操縦安定性や乗り心地の向上のために、ボディ骨格の接合にレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用接着剤、レーザーピニング溶接技術を採用、フードには軽量のアルミを採用しています。
さらに、ドアモールディング/ホイールアーチモールディング/バックドアガーニッシュには発泡樹脂成型を採用するなど、軽量化に取り組んでいます。
四輪駆動力システムDIRECT4により、発進時や加速時は、車両のピッチングを抑え、ダイレクトな加速感が得られるように、前輪:後輪=60:40~40:60程度で制御するなど、レクサスが培ってきた電動化技術と車両運動制御技術を融合させることで、ドライバーの感性に寄り添った走りを実現しています。
BEVらしい、高い静粛性も注目ですが、圧巻だったのは、コーナリング性能です。ステアリングを切り始めてから脱出するまで、どんなコーナーでも自分の思いどおりにラインをトレースすることができます。
BEVのRZはさらに制御が素早く、制御も細やかになり、ドライバーの意思どおりに走行することが可能です。レクサスRZは、ブランド初のBEV専用車とは思えないほどの仕上がりで、ドイツのプレミアムブランドのBEVに走りやクルマ作りの質感で肩を並べています。
また、ブレーキ時も前後方向のピッチングを抑えてくれるので、同乗者も快適に移動できます。20インチという大径タイヤを装着しているにも関わらず、路面からの衝撃もいなしてくれて、非常に乗り心地も良いのが特徴です
レクサスRZは登場まで時間が掛かりましたが、ブランド初のBEV専用車としてじっくりと熟成させ、高い完成度を感じることができます。
●RZのライバルとなる日産「アリア」。B9 e-FORCEは受注停止中でB6 2WD車のみ販売中
レクサスRZのライバルと言えるのが、日産「アリア」でしょう。4WD車のみのレクサスRZに対して、アリアは2WD車も用意。加えて、バッテリー容量が66kWhのB6というエントリーグレードを用意し、車両本体価格は539万〜790万200円と、RZよりもリーズナブルな価格設定です。
レクサスRZと同等のスペックとなると、91kWhバッテリーを搭載した最上級グレードのB9 e-4ORCEが該当します。フロントとリアに最高出力218ps、最大トルク300Nmを発生するモーターを搭載。システム合計出力は394psを発生します。
駆動方式はe-40RCEと呼ばれる4WDで、前後2つのモーターと4輪のブレーキを瞬間的に統合制御します。その結果、前後左右の揺れを抑えた上質な乗り心地と、優れたハンドリングを両立させています。
アリアのボディサイズは、全長4,995mm×全幅1,850mm×全高1,665mmです。全幅はRZのほうが大きいですが、長さや高さはアリアのほうが上回っており、ユーティリティの高さはアリアのほうが上と言えるかもしれません。
しかし、インテリアの質感の高さに加えて、フラットライドな乗り味はレクサスRZのほうが大きく上回っています。
そしてなにより、2023年6月13日現在、アリアB9 e-FORCEは受注停止となっていますが、RZ450eは2.5ヵ月で手に入れることができるのは朗報でしょう。
ただRZで惜しいのは、満充電時の走行距離がWLTCモードで494kmと500kmを切ってしまっていること。アリアB9 e-FORCEは560kmとなっています。
RZのようなプレミアムSUVであれば、実走で500kmは走行してもらいたいところ。この点がクリアとなれば、現状、国産SUVの中でNo.1と言える実力をもつモデルだと思います。
【Specification】
■レクサスRZ450eバージョンL:全長4,805×全幅1,895×全高1,635mm、ホイールベース:2,850mm、車両重量:2,100kg、モーター種類:交流同期電動機、フロント最高出力:203.9ps、最大トルク:266Nm、リア最高出力:109ps、最大トルク:169Nm、WLTCモード電費:494km、タイヤサイズ:フロント235/50R20、リア255/45R20、車両本体価格:880万円
■日産アリアB9e-4ORCEリミテッド:全長4,595×全幅1,850×全高1,665mm、ホイールベース:2,775mm、車両重量:2,230kg、モーター種類:交流同期電動機、フロント最高出力:218ps、最大トルク:300Nm、リア最高出力:218ps、最大トルク:300Nm、WLTCモード電費:560km、タイヤサイズ:255/45R20、車両本体価格:790万200円
(文・写真:萩原 文博)