日産が次世代のLiDARを使用した最新技術を公開。緊急回避性能の飛躍的な向上をめざす

■急ブレーキを作動後も危険を回避し、次第にブレーキを解除

先進安全装備の普及やコロナ禍による交通量の減少もあり、交通事故による死亡事故は年々減っています。警視庁が発表した2022年の交通事故死亡者数は2610人で、6年連続で最小となっています。自社製品が関わる死亡事故ゼロを掲げている自動車メーカーが増える一方で、完全にゼロにするのは困難なのも現状です。

交差点での出会い頭の事故を防ぐ技術を開発
交差点での出会い頭の事故を防ぐ技術を開発

このほど日産は、緊急回避性能の飛躍的な向上につながる、次世代のLiDAR(ライダー)を使う運転支援技術が搭載された試作車のデモンストレーションを公開しています。

同社は、日産車が関わる交通事故の死亡者数を実質ゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」というビジョンを掲げています。

スカイラインをベースとした試作車
スカイラインをベースとした試作車

試作車のシステムは、フロントにカメラとレーダー、LiDARが配置され、さらに9つのサラウンドカメラ、4つのサイドレーダー、リヤにも2つのレーダーが配置されています。

次世代LiDAR、カメラ、レーダーのセンサーを融合させることで、周囲の形状、位置をとても高い精度で3次元計測が可能になる技術が搭載されています。次世代のLiDARは、検知距離、検知範囲、分解能ともに、大幅に向上しているそうです。

次世代LiDARやカメラ、レーダーなどを満載している
次世代LiDARやカメラ、レーダーなどを満載している

各センサーの役割は、次世代LiDARが空間の構造と物体の形、位置を3Dプリンタのように正確に再現。カメラは、車両と道路構造の区別、車両の種類、標識の文字や数字などシーンの意味を理解します。レーダーは、周囲の移動物の動き(距離と速度)を把握できます。

このほど公開された技術が搭載された試作車は、交差点での出会い頭の事故を防ぐ技術。信号や標識の見落としなど、ドライバーの不注意により発生することが大半で、重大事故につながる恐れがあります。日産は、こうした事故が起こる恐れがある際に、高度なセンシングと判断能力で、衝突を自動的に回避する技術を開発。同技術がドライバーを支援することで、事故低減に大きく貢献することが期待されます。

次世代LiDAR、カメラ、レーダーのセンサーを融合させ、独自のアルゴリズムを開発
次世代LiDAR、カメラ、レーダーのセンサーを融合させ、独自のアルゴリズムを開発

信号や標識を見落とした車両が目の前に現れた時には、相手の位置や速度の変化を高い精度で計測し、必要なブレーキ操作を瞬時に判断して、衝突を回避。なお、急ブレーキを作動させた後も、危険を回避して次第にブレーキを解除するなど、状況の変化にすぐに対応するそうです。

交差点での出会い頭事故を防ぐ技術を開発
交差点での出会い頭事故を防ぐ技術を開発

日産は、現在開発している高性能な次世代LiDARを使った技術を「グラウンド・トゥルース・パーセプション技術」と命名していて、とても判断が難しい複雑な状況でも周囲の情報を正確に捉え、瞬時に判断し、危険を回避することを可能とするそうです。

同技術の開発は、2020年代半ばまでの完了に向けて順調に進んでいるそうで、リアルワールドで発生する複雑な事故の分析を進め、事故を防ぐ能力を飛躍的に向上させる技術の開発が推進されています。この技術は、自動運転技術に向けても開発されています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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