マイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツAクラスの「斜め座り感」に慣れる?

■スポーティになった外観、先進的で使い勝手が向上した内装

以前お伝えしたように、メルセデス・ベンツAクラスがマイナーチェンジを受け、内外装が刷新されました。

最新の「MBUX」や「MBUX ARナビゲーション」の採用など、使い勝手の向上もトピックス。Aクラスは、ハッチバックだけでなく、貴重なコンパクトセダンも設定しているのも特徴で、ハッチバックとセダンでは、雰囲気も走りも異なる世界観が表現されています。

マイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツAクラス
マイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツAクラス

改良前からスポーティなエクステリア、先進的なインテリアが魅力で、マイナーチェンジでよりスポーティな外観になり、未来感と質感の高さを抱かせる内装を手に入れています。

エクステリアをおさらいすると、鮫のとがった鼻先を思い起こさせる「シャークノーズ」フェイスをはじめ、ボンネットフード中央部に2つのプレスラインが際立つ「パワードーム」と呼ぶ膨らみが配されています。

パワードームは、控えめなボリューム感ではありますが、すっきりしていた改良前のボンネットフードと比べると、アクセントになっているのが分かります。

メルセデス・ベンツAクラスのリヤビュー
メルセデス・ベンツAクラスのリヤビュー

また、「AMGライン」のフロントグリルに無数の「スターパターン」を散りばめることで、精緻な雰囲気を醸し出しています。

ヘッドライトユニット(ヘッドライト内部)が新デザインになっているほか、「アダプティブハイビームアシスト」が標準化されています。こちらは、対向車や先行車など周囲の状況に応じてハイ/ロービームを切り替えのはもちろん、ヘッドライトの照射範囲を自動で調整する機能。

Aクラスセダンのエクステリア
Aクラスセダンのエクステリア

そのほか、リヤディフューザーの形状変更、新デザインのテールランプ(こちらも内部のみ)が採用されています。フロントと比べると、後ろ姿の印象は大きく変わっていません。また、足元には、標準の17インチアルミホイール、「AMGラインパッケージ」の18インチアルミホイールが新デザインになっています。

外観よりも内装の変化が大きく感じられます。「AMGライン」がスポーティな3本スポークのステアリングホイールになったほか、ステアリングに静電容量式センサーを備えることで、アダプティブクルーズコントロールである「ディスタンスアシスト・ディストロニック」の使い勝手が向上。軽く握っているだけでもACCを使用できます。

「AMGラインパッケージ」のアルミホイール
「AMGラインパッケージ」のアルミホイール

また、センターコンソールに設置されていたタッチパッドが廃止され、すっきりとしたセンターコンソールまわりになりました。「MBUX」に慣れるとタッチパッドを使わなくなるはずで、ステアリングスイッチでも同等の操作ができますから、タッチパッドの廃止は操作性に影響をあまり及ぼさないはず。

さらに、オプションの「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」を選択すると、シックで高級感のある本革ブラックが選択できるようになっています。

●Sクラスと同等の「MBUX」にアップデートし、「MBUX ARナビゲーション」を初採用

なお、車内やパッケージの面で気になるのが、運転席の左足が押されるように狭く感じる点です。フットレストに正対して座ることができず、斜め座りのような姿勢に若干なってしまいます。ペダルのオフセットはほとんど気にならないので、運転にはもちろん支障はありません。

Aクラスのフロントシート(AMGレザーエクスクルーシブパッケージ)
Aクラスのフロントシート(AMGレザーエクスクルーシブパッケージ)

「斜め座り感」は、オーナーになれば慣れるでしょうが、ほかの国産車やフォルクスワーゲン・ゴルフなどの輸入車のライバルではあまり感じさせない感覚。なお、後席の広さはCセグメント級としては十分。ルーフが低いため、閉塞感は若干あるものの、空間自体は狭くありません。

また、Bクラスと比べると全高が低い点に加えて、シートの着座位置も低めに設定されているため、乗降性はそれなり。しかし、実用車として十分に普段使いできるレベルに収まっています。

Aクラスの後席(AMGレザーエクスクルーシブパッケージ)
Aクラスの後席(AMGレザーエクスクルーシブパッケージ)

マイナーチェンジ最大のハイライトが、最新世代の「MBUX」と「MBUX ARナビゲーション」の採用です。前者は、Sクラスと同世代にアップデート。目的地設定をはじめ、選曲や選局、エアコンやシートヒーターなどの設定はもちろん、照明なども対話型インフォテイメントシステムにより操作できます。さらに、音声操作に加えて、ステアリングスイッチでも操作可能。

Aクラスのインパネ
Aクラスのインパネ

慣れれば発話だけでよく使う機能を呼び出し、発話だけで設定や操作ができるようになるはず。音声への反応自体は、マイクの感度により左右されそうですが、目的地設定やエアコン、シートヒーターなども設定はほぼ一発でクリアしてくれました。

Aクラスのインテリア
Aクラスのインテリア

Eクラスのビッグマイナーチェンジで初採用された、拡張現実を使った「MBUX ARナビゲーション」も、A180をのぞき標準装備されました。ディスプレイに映し出された映像に矢印などが重ねて表示され、進むべき方向がひと目で分かるようになっています。

なお、オプションでヘッドアップディスプレイも設定されているため、ニーズに応じて多彩な表示方法を選択できます。

●2.0Lディーゼルは力強く、1.3Lガソリンエンジン車はかなり軽快

以前お伝えしたように、2023年4月末に「AMG」モデルも加わり、エンジンバリエーションが増えたAクラス。

今回試乗したのは、ハッチバックがA200d。セダンがA180でした。前者は、2.0L直列4気筒ディーゼルを積み、110kW(150PS)/3400-4400rpm、320Nm/1400-3200rpmというスペックの持ち主。WLTCモード燃費は、19.1km/Lでトルクフルなだけでなく、燃費の良さも享受できます。

2.0Lディーゼルエンジン
2.0Lディーゼルエンジン

組み合わされるトランスミッションは、8速ATで駆動方式はFF。試乗車には「AMGラインパッケージ」をはじめ、「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」「アドバンスパッケージ」、メタリックカラーの「ローズゴールド」もペイントされていて、総額117万3000円ものオプションが加わっています。

マイナーチェンジを受けたAクラスの走り
マイナーチェンジを受けたAクラスの走り

「A200d」の試乗車は、先述したように「AMGラインパッケージ」の225/45R18タイヤが装着されていました。乗り味はかなり引き締められていて、見た目はスポーティですが、街乗りにはややオーバースペックという印象を受けます。箱根の山道では、少し飛ばしても確かなグリップ感が得られ、公道レベルでは十分といえる性能を享受できます。

ただし、乗り心地も重視するのであれば、今回は乗る機会がなく想像の域を出ないものの、一般的には、1インチ小さな標準の17インチタイヤの方が向いていそう。

A200dの走り
A200dの走り

後述する1.3Lガソリンエンジンと比べると、パーシャル域からの力感をはじめ、最大回転数を発揮する領域ではグイグイと加速。同時に、実用域であれば高速側の伸びも必要十分で、ディーゼルエンジンの割に軽快に回るのも印象的。高速道路を使ったロングドライブでは、グランドツアラーとしてのキャラも享受できるのが「A200d」の魅力といえそうです。

一方の1.3Lガソリンエンジン車「A180」の試乗車はセダン。ハッチバックよりもボディの剛性感が高く、山岳路ではひと回り小さくなったかのような一体感が強く印象に残りました。Aクラスの購入層では、ハッチバックの方が少し若く、女性比率も少し高いそうで、あり体に言えばセダンは、「おじさん向け」かもしれません。

Aクラスセダンの走行シーン
Aクラスセダンの走行シーン

しかし、100kW(136PS)/5500rpm、200Nm/1460-4000rpmというスペックにもかかわらず、ボディのしっかり感も含めて、思いのほかスポーティなフットワークを披露してくれます。8速ATになるA200dに対して、A180は、7速ATになるものの、変速フィールの面ではとくに不利という感覚は覚えませんでした。

ハッチバックのA200dの車両重量は1540kgで、セダンのA180dは1370kg。じつに170kgもの重量差がありますから、スペックの差を埋める軽快感を味わうことができます。

「A180 セダン」の試乗車にもオプションの「AMGラインパッケージ」「ナビゲーションパッケージ」が用意されていて、オプション価格は総額で71万1000円となっています。

Aクラスセダンのリヤビュー
Aクラスセダンのリヤビュー

マイナーチェンジを受けた新型Aクラスは、ハッチバックもセダンもCセグメントモデルの中でスポーティな外観と走り、先進的なインテリアと操作性を享受できます。

ドライブモードスイッチ
ドライブモードスイッチ

●車両本体価格
「A 200 d」:558万円
「A 180 セダン」:505万円

(文:塚田勝弘/写真:塚田勝弘、メルセデス・ベンツ日本)

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この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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