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■ティザームービーの排気音が新たなBEVの可能性を暗示
日産自動車が2023年3月28日、同社の公式Twitter上で最新の電動化技術により、R32型「GT-R」をBEV(電気自動車)にコンバージョンすると発表しました。
名車の電動化では、トヨタ自動車が「AE86」をベースにカーボンニュートラルに配慮したBEVのレビンとH2(水素自動車)のトレノを製作して東京オートサロン2023に出展。来場者から大きな注目を集めたばかり。
同車の最大の特徴はBEVでありながらマニュアルミッションを搭載しており、エンジンを搭載していないにもかかわらず車内にリアルな4A-GEのエンジンサウンドが響き渡るところ。
これは実エンジンのサンプリング音をアクセル開度に応じて発生させるシステムによるもの。
車外からはエンジン音は聞こえませんが、ドライバーは当時のハチロクと同様に、クラッチ&シフト操作をしながらDOHCサウンドに酔いしれることができるというわけです。
●日産もR32「GT-R」をBEVにコンバージョン
一方、今回日産がBEVにコンバートするのは1989年に登場した「GT-R」。
往年のスポーツカーである同車は2.6L直6ツインターボエンジン(RB26DETT)を搭載し、当時の国産車で最強の最高出力280psを発生しました。
Twitterには「R32 EV」の表記と共にリヤビューが掲載されており、ティザームービーにはエンジン始動時のセル音や、低く響くアイドリング音が収録されています。
興味深いのは画像の明度を上げると、排気口がノーマル仕様より大口径化されており、これが何を意味しているのかが大いに気になります。
また、同車のスペックは明かされていませんが、前後にモーターを搭載するAWD仕様の可能性が高く、走行時のシチュエーションに合わせて前後トルク配分を自在にコントロール可能な構造と推測されます。
●スポーツカーから「音」を奪ってはならない
今回のようにガソリン車をBEV化すればマフラーが不要となり、当然ながら排気音も無くなります。
にもかかわらず、日産がティザームービーでGT-Rのセル音やアイドリング音を強調する背景には、やはり何らかの意図がありそうです。
クルマ好きにとってスポーツカーの楽しみと言えば、自己顕示欲を満たしてくれるエンジンサウンドや車外に轟く排気音であり、BEV化で消失するなどあり得ない話。
実際、Twitterには稀少な個体のBEV化に反対するコメントも多数見受けられ、往年のスポーツカーから個性とも言えるエンジン音を奪ってはならないと思うのは筆者だけではない筈。
●GT-Rの排気音を電子デバイスで再現
そこで日産ではトヨタに対抗すべく、GT-Rが発するエンジンサウンドや排気音を予めサンプリング。アクセル操作に合わせて再現するといった隠し技を用意している可能性があります。
前述のとおり、BEV版のAE86では、アクセル操作に応じたDOHCサウンドを車内で満喫できるだけでなく、マニュアル車の楽しみでもあるクラッチ&シフト操作まで実現しています。
後発となるBEV仕様のGT-Rでは、車内のエンジンサウンド再現に留まらず、車外についても擬似マフラー(スピーカー)で排気音を響かせて欲しいところ。
今回の「R32 EV」が異様に太い排気口を装備しているのは、この部分にGT-Rの排気音を再現するための装置を組み込んでいる可能性があります。
ちなみに、トヨタの現行HEV(ハイブリッド)の場合、低速走行時に周囲への安全喚起のため、「ゴォーッ」という車両接近音をスピーカーから発しているのは周知のとおり。
●カーボンニュートラル実現には既販車の対策が必要
トヨタによれば、多くの自動車メーカーが2030年~40年頃をターゲットにBEVへのシフトを目指しているものの、新車販売は保有台数の1/20程度に過ぎず、今後発売する新型車をBEV化するだけでは2050年のゼロカーボン達成は不可能としています。
同社はカーボンニュートラル実現には既販車も含めた対策が必要であり、航続距離で有利なガソリンエンジンの水素化技術など、旧車へのコンバートも含めた新たなシステムの開発に余念がありません。
日産の今回の取組みは面白いと思いますが、その一方で今後はBEV開発に留まらず、他国の資源に依存する必要が無く、且つ排気音も維持できる水素エンジン技術の開発が期待されます。
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【関連リンク】
日産 R32 EV
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