スバル「ヴィヴィオ」デビュー。スバル・レックスの後継、世界に「軽自動車の凄さ」を見せつけた新世代【今日は何の日?3月9日】

■軽の新規格に対応して登場するも、ハイトワゴンブームが逆風に

1992年にデビューしたヴィヴィオ
1992年にデビューしたヴィヴィオ

1992(平成4)年3月9日、スバル(当時は、富士重工業)から軽自動車の新規格に対応した「ヴィヴィオ」がデビューしました。

ヴィヴィオは「レックス」の後継で、軽自動車ながら先進技術満載の質の高さが自慢でしたが、ハイトワゴンブームのなかでは存在感を高めることはできませんでした。

●名車スバル360の流れを汲んだレックス

1958年デビューして大ヒットした国民車スバル360
1958年デビューして大ヒットした国民車スバル360

1858年に国民車と位置付けられた軽自動車「スバル360」で成功を収めたスバルでしたが、その後1967年のホンダ「N360」の出現によって首位を奪われ、軽自動車界には熾烈な高出力時代が到来しました。

1972年にデビューした高性能レックス GSR
1972年にデビューした高性能レックス GSR

これに対応するため、1972年にレックスが登場。前年にデビューした大衆車「レオーネ」譲りのフロントマスクと、ワイド&ローのウェッジシェイプのスポーティなスタイリングが特徴で、駆動方式はスバル360以来の伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)です。

パワートレインは、水冷360cc直2気筒 OHC 2ストロークエンジンのシングルキャブとツインキャブ仕様の2種類と、4速MTの組み合わせ。トップレベルのエンジン性能によって、ゼロヨン(0-400m)加速は20秒を切る俊足ぶりを発揮しました。

その後レックスは、時流に合わせて水冷4ストローク化やFF化を経ながら、ファミリカーとして堅調な販売を続けていたのです。

●ホットモデルやレトロ調など多様なモデルを設定したヴィヴィオ

1990年、軽自動車の規格変更が行われ、全長が100mm延ばされ、エンジン排気量の上限は660ccに拡大されました。

1995年に登場したレトロ調ピストロ
1995年に登場したレトロ調ビストロ

当時の軽自動車はボクシーなフォルムが一般的でしたが、レックスの後継として登場したヴィヴィオは、曲面を多用した軽としては個性的なフォルムでした。

サスペンションも異例の4輪独立懸架、エンジンも一般的な3気筒でなく電子制御の660cc直4 SOHCエンジンが搭載されたのです。さらに、4バルブDOHCスーパーチャージャーの高出力エンジンを搭載したホットモデル「ヴィヴィオRX-R」を設定。何とこのモデルベースで、WRCのサファリラリーに参戦し、軽自動車で唯一のクラス優勝を飾るという、史上に残る快挙を成し遂げたのです。

続いて1995年にはレトロ調の「ビストロ」を発売。丸形2灯ヘッドライト、メッキ塗装のグリルやバンパーなどで好評を得て、その後の軽のレトロブームの火付け役となりました。

上質で技術的にも優れたヴィヴィオでしたが、ヒットモデルにはならず、1998年に軽最後の規格変更(車幅8mm拡大)とともに生産を終えました。

●ハイトワゴンのワゴンR登場が逆風に

1993年にデビュー、ハイトワゴンの元祖初代ワゴンR
1993年にデビュー、ハイトワゴンの元祖初代ワゴンR

ヴィヴィオが市場では高く評価されなかった理由として、1993年にデビューしたスズキの「ワゴンR」の存在があるでしょう。ワゴンRは、従来の軽自動車の常識を覆す車高の高さによって、圧倒的な居住空間を実現し、ハイトワゴンという新しいジャンルを開拓しました。

ワゴンRに続いて、ダイハツ「ムーヴ」、ホンダ「ライフ」などが追走して、市場はハイトワゴン時代へと突入。ヴィヴィオは、技術的に優れたスバルらしいクルマと言えばその通りですが、市場からは一風変わったクルマとして敬遠されてしまったのです。


技術にこだわりの強いスバルですが、それが個性的と評価されることもあります。が、いかんせん日本のクルマ社会において、軽自動車で求められるものは、使いやすさや実用性、価格なのでしょう。ヴィヴィオの世界一高い技術がオーバースペックと見られたのかもしれませんね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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