「EV専用プラットフォーム+リヤモーター/リヤ駆動のEVはスゲェ!」清水和夫がVW ID.4で【サーキット/峠/オフロード登坂能力】を試した

■清水和夫がフォルクスワーゲンID.4をサーキット、峠、オフロードで容赦なくテストしてみた!

●リヤモーター/リヤ駆動はスポーティな走りもイケてます♪

VW ID4×清水和夫
VW ID4×清水和夫

国際モータージャーナリスト・清水和夫さんのフォルクスワーゲン ID.4徹底テスト。

前回のPart.1では、東名高速でのロングドライブで運転支援機能や電費テストをしました。今回のPart.2では、サーキット、ワインディング、そしてオフロードでの登坂性能をいってみましょう!


●サーキットを攻めてみたらクイクイ曲がって楽し~!

VW ID4×清水和夫
VW ID.4を清水和夫さんがテストしてみた

さぁ、いよいよフォルクスワーゲンID.4でサーキット初挑戦ですね。一体、どんなダイナミック性能を持っているでしょうか?

もう、こういうところでガンガン、ノーズが入るよね。タイヤをそんなに攻め込まなくても…。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4でサーキットを攻める清水和夫さん

おーっと! インに入ってくる! これはリヤモーター/リヤ駆動で、いわゆる『RR』という駆動力システムのお陰で、ハンドルに対してノーズがよくインを向きます。

ということで、ステアリングは本当に正確。狙ったラインにスーッと入っていけます。多少縁石をタッチしてバンピーなところにいっても、バネ上が乱れないし、ヘアピンのトラクションも凄い。後ろからグーっと押している感じがあります。

中速コーナーでのステアリングの正確性も悪くないし、切り返したときもバネ上のボディのロール感がよく抑えられています。横Gは結構大きいんだけど、シートのホールド性は悪くないですね。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4のコクピットを、なんとなく清水和夫目線で見たら、こう!

このクルマ、決してスポーティを狙っているわけじゃないんだけど、元々がなんていうか、VWゴルフの時代から培ってきた走りっていうものが感じられますね。

でもって、それがEVになって、エンジン車ではできなかったようなことができているっていうところが、この“走り”のところで見ることができます。

●ブレーキの回生具合はどうか?

これから、峠の下りでどれだけエネルギーを回生できるかをテストします。走行モードはエコモードにしました。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4×清水和夫。峠の上り下りで電費はどうか、テストしてみた

山中湖に向けて、けっこうキツい下り坂が続きます。今はずっと、いわゆるエンジンブレーキで、運動エネルギーを電気エネルギーに回生し、バッテリーに電力を戻しています。

下まで降りてきて、バッテリーの残量が55%から56%なので、1%増えた、という感じですね。このID.4は「Pro」というモデルなので総電力量は77kWhですから、1%というと0.7kWhくらいは回生したかなという感じ。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4電費テスト

今度は同じところを上っていきます。今度はどれだけ電気を消耗したか?っていうことになります。下りで1%、約0.7~0.8kWhの電力を回生しました。登りでどれだけ消費するでしょうか?

お~。上りだと約2%消費しています。で、下りで1%回収したというデータになりました。

●リヤモーター/リヤ駆動はこ~んな悪路の登坂性能もいいんだなぁ~

VW ID4×清水和夫
VW ID.4はぬかるんだ上り坂でどんな威力を見せるのか?

今回のVW ID.4は、せっかくのリヤモーター/リヤ駆動、昔のワーゲンビートルやポルシェみたいなRRです。だから、かなりトラクション性能もいいと思うんです。ということで、けっこうキツい坂なんですけど、トラクション性能はどうか?

VW ID4×清水和夫
悪路登坂、VW ID.4はスイスイ上がっちゃいました♪

エンジン車だと、どうしてもタイヤのブロックひとつずつがガバッとなって、エンジンのトルクの出し方が荒い。だけど、モーターだと本当にそのブロックの細かいところひとつずつ、こういう風にトラクションを出せると思うんです。

ですから、こういう雪道とかアイスバーンやオフロードの登坂性能というのは、モーター駆動とRRというのは素晴らしくいいのではないかと思うので、テストしてみます。

はい、Dレンジに入れました。

凄いなぁ! ハハハッ♪ 普通のサマータイヤで上っちゃいましたね!

●EV専用のプラットフォームで作られたクルマは、走行性能もヨシ!

私は長くエンジン車に乗ってきて、自分の血管にはガソリンが流れている、なんて思っていたんですけど、最近いろんな電気自動車に乗ると、数年前は『やっぱりこんなもんか…』と思っていた電気自動車が、今ではどんどん性能が良くなってきました。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4のテストを終え、電気自動車をとりまく社会を考えてみる

やっぱりそのひとつは、エンジン車ではないバッテリーEV専用のプラットフォームで作られたEVは、本当に素晴らしい走りの走行性能を持っているということ。

何度も言いますけれども、バッテリーが低い位置にあるから、低重心。これはエンジン車では出来ないんですね。このID.4の場合はリヤモーター/リヤ駆動ですから、フロントに大きいエンジンとトランスミッションがガバッと無いわけですよね。

ということは、ハンドル操作に対してクルマがもの凄く意のままに動く。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4×清水和夫

そういうところでEVは、生まれながらにしてスポーティなクルマになるんだな!っていうのが分かってきたわけです。

まぁそういった意味で、大袈裟に言えば、専用プラットフォームで作られたEVは、もうなんか破壊的なイノベーションが起きるんじゃないかなという気がして、そういったところで私は個人的に今、物凄くEV車に興味があります。

●環境問題、安全問題…は多方面から考察するべし!

まぁ、自動車の話題になるとね、環境問題とか安全問題とか、スポーツ走行による速さとか、なんかそういう風に機能が分かれているような話がたくさん出てくるんです。

だけど、いちユーザーとしてみたら、やっぱり安全なクルマは欲しいし、安心して楽しいクルマも欲しい。しかも、『自分が乗っているクルマは環境にも優しいよ!』って言いたいわけですよね。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4×清水和夫

ですから、なにかひとつの事柄でストーリーができているのではなくて、ユーザーの立場で考えたらいろんな物語を連続的に、ストーリー立てて自分とクルマとの価値を見い出すんだと思うんです。

だから、環境だけ取り出すとか、『自分はEVに乗っているから環境に優しい人なんだ!』じゃなくて、でもそれだって電気のエネルギーのことをちゃんと考えなきゃいけない。国によっては石炭発電で電気を作ったら、それは環境にあまり良くないかも分からないですしね。だから、そういうことの知識も入れなきゃいけない。

VW ID4×清水和夫
VW ID.4×清水和夫

自動車って、そのくらい社会としっかり向き合っていかなければいけない乗り物なのです。

このクルマは10年、15年、長く付き合えるクルマだと思いますから、ここに新しいフォルクスワーゲンの、ゴルフで成し遂げてきたひとつの世界の、次のジェネレーションの新しいゴルフがこのID.4なのかな、と私は思います。ちょっとクルマ、大きいですけどね。


電気自動車だから環境に優しい♪じゃない。電気自動車だから偉いでしょ♪なんてことを言ってたら恥ずかしいのかも。

そういう、現在の自動車社会を取り巻く話題を、分かりやすく、耳と目から学べるのが、清水和夫さんのYouTubeチャンネル「StartYourEnginesX」です。アーカイブも含め、年末年始は清水さんとクルマの勉強をしてみてはいかが?

「チャンネル登録もヨロシク~♪」by清水和夫

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

VW ID4×清水和夫
VW ID.4の主なスペック

【SPECIFICATIONS】

●Volkswagen ID.4 Pro Launch Edition
全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm
ホイールベース:2770mm
車両重量:2140kg
最小回転半径:5.4m
乗車定員:5名
モーター最大出力:150kW(204ps)/4621-8000rpm
モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4621rpm
駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
総電圧:352V
総電力量:77.0kWh
交流電力量消費率:153Wh/km
一充電走行距離:561km
駆動方式:後輪駆動
サスペンション形式(前/後):マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(前/後): 235/50R20/255/45R20
車両本体価格(税込):6,365,000円

●Volkswagen ID.4 Lite Launch Edition
全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm
ホイールベース:2770mm
車両重量:1950kg
最小回転半径:5.4m
乗車定員:5名
モーター最大出力:125kW(170ps)/3851-15311rpm
モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-3851rpm
駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
総電圧:352V
総電力量:52.0kWh
交流電力量消費率:144Wh/km
一充電走行距離:388km
駆動方式:後輪駆動
サスペンション形式(前/後):マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(前/後共): 235/60R18
車両本体価格(税込):4,999,000円

【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

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この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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