トヨタの新型燃料電池車「ミライ」発表。世界初の量産型燃料電池車がデビュー【今日は何の日?12月15日】

■世界に先駆けて登場したFCV・ミライ

2014(平成26)年12月15日、トヨタはセダンの新型燃料電池車「ミライ(MIRAI)」の発売を開始しました。世界初の量産型FCVとして、次世代自動車らしい近未来的なスタイルと税制優遇込みで500万円程度の低価格が、世界中から大きな注目を集めました。

2014年にデビューした世界初の量産FCV「ミライ」
2014年にデビューした世界初の量産FCV「ミライ」

●ミライの高効率FCシステム

FCVは、車載タンクに充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池の電力を使って、モーターで走行します。EVの2次電池の代わりに燃料電池を搭載したシステムで、通常のガソリン車がガソリンを補給するように、水素を補給します。

ミライの燃料電池システム
ミライの燃料電池システム

ミライのFCシステムは、自社開発の固体高分子形FCスタックと高圧水素タンク、発生した電気を充電するリチウムイオン電池、駆動モーター、モーターへの電力供給を制御するコントローラーなどで構成。FCスタックは水素と酸素を化学反応で発電するFCセルを、数百枚ほど直列接続して1ユニットにまとめたものです。

高圧水素タンクを2基搭載して、122.4Lの水素を高圧70MPaで貯蔵。交流同期モーターで駆動して、減速時には発電機として機能させ、通常の電動車のように減速エネルギー回生を行います。

●近未来的なスタイリングでFCVらしさをアピール

ミライの燃料電池システム構成図
ミライの燃料電池システム構成図

ミライは、ひと目で次世代自動車とわかるような近未来的なデザインを採用。

斬新なスタイリングの特徴は、FCスタックを床下、大きな水素タンクを後部に搭載するために採用したヒップアップのセダンボディと、水素と反応する空気を大量に導入する左右に分かれた大きなフロントグリルです。まさに、FCVだからこうなったとアピールするようなスタイリングでした。

ボディサイズはカムリと同等ですが、車両重量は1850kgとやや重め。後席は左右に分かれた4人乗車、広い室内空間を確保しつつ、十分なトランク容量も確保。

前輪駆動(FF)で、モーターの最高出力154PS/最大トルク34.2kgmで、水素の充填時間3分で一般的なガソリン車と同等レベルの航続距離650kmが達成されました。

販売価格は723万6000円で、減税や補助金で500万円程度まで価格は下がりますが、何よりも水素インフラが整備されていないことが問題でした。2015年当時は、水素ステーションは全国で13箇所しかなかったのです。

●2020年にモデルチェンジして新型ミライが登場

ミライは、2020年12月にモデルチェンジして、2代目に移行しました。新型では、スタイリングの変更や後輪駆動(FR)になったこと、FCスタックの性能向上が図られました。

2020年に登場した新型(2代目)ミライ
2020年に登場した新型(2代目)ミライ

次世代プラットフォームTNGAを採用し、初代の近未来的なスタイリングからスポーティセダンへと変貌。インテリアには、12.3インチの高精細ワイドタッチセンサーディスプレイを採用して上質化。

さらに注目は、航続距離が650kmから850kmへと向上したことです。燃料電池システムが刷新されて効率が向上したこと、さらに水素タンクを2基から3基に増やしたことで、航続距離が延びたのです。そのほかにも安全装備を充実させるなど、大幅なレベルアップが実現されました。


カーボンニュートラルに全方位で対応するトヨタにとって、FCVも重要な将来技術のひとつという位置づけです。ただし、水素エンジンであれ、FCVであれ、水素インフラが整備されない限り、普及のシナリオは成立しません。世界的な、あるいは日本政府を動かすインフラ構築の活動が必要ですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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