ヤマハ発動機が省力樹形の果樹園での貢献を目指す、果樹園作業支援自動走行車の開発者の想い

■目指す姿は、果樹園での「動く脚立」

ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」。今回のテーマは、同社が注力している農業分野です。

2022年10月に開催された国内最大の農業・畜産見本市「農業Week」に出展した同社は、農業用ドローンや農業用無人ヘリコプターとともに、果樹園作業支援自動走行車も披露しています。

ヤマハ発動機 ニュースレター
開発中の果樹園作業支援自動走行車と本田さん

果樹園作業支援自動走行車の開発者である本田士郎さん(NV・技術戦略統括部)は、「生産者の皆さんにとって、収穫は喜びの瞬間。技術で、その作業を輝かせるような力添えをしたいです。

労働力の減少や高齢化といった課題に対して、たとえばロボットアームなどを使った先進技術で農業の未来を描きながらも、直面している今日、明日の課題を置き去りにしてはなりません」と、果樹園作業支援自動走行車への想いを語っています。

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「動く脚立」をコンセプトに開発中の果樹園作業支援自動走行車(コンセプトモデル)

果樹園作業支援自動走行車は、導入しやすく、高齢者でも扱いやすい自動化ソリューションの開発を目指しているそう。

「コンセプトは、動く脚立です。機械に追い立てられることなく、収穫を行う生産者さんのペースで、ゆっくりと、少しずつ前進していく作業台と集荷台をイメージしています。近年、注目を集めている省力樹形の果樹園で、剪定、受粉、摘果、収穫などの作業にすぐにでも役立つ車両を開発しています」と続けています。

この省力樹形とは、樹を列状に密植するとともに、果実が実る面を均一に整える果樹成型の方法だそう。収量や品質を低下させることなく、機械化にも適した果樹園の在り方として、生研支援センターの支援を受け、農研機構や各県の果樹試験場が中心になり、研究や普及が進められています。

本田さんは、「多くの果樹園は、斜面や凹凸、樹木間の幅など、不規則な形状によって省力化に役立つ機械が入りにくく、結果として無理な姿勢でたくさんの手作業や運搬をこなす重労働が発生しています。こうした課題をクリアしていくためには、生産側の環境と、自動化技術が互いに歩み寄っていかなくてはなりません」と、果樹園での自動化の課題を説明。

現在、日本の農業従事者の平均年齢は約68歳で、その約半数が70歳代だそうです。さらに、「時間はありません。10年後の農業現場を思い浮かべれば、1人の生産者が収穫できる量を増やす取り組みが急がれています。この課題に対し、ロボティクスとモビリティをともに事業として展開する会社として、弊社の知見や技術が貢献できると考えています」と続けています。

各地の農業試験場で行われた実験では、省力樹形と自動走行車の組み合わせで年間作業時間を3割以上削減できることが示されているとのこと。

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業者のペースに合わせて一定の距離を進み、自動で停止する「寸進」機能。
コントローラーは、分かりやすく扱いやすいインターフェイスにも配慮されている

また、「農業Week」の会場では、生産者から「こういうものが欲しかった」と共感を得るなど、開発が進む「動く脚立」に大きな手ごたえを感じているそうです。

航空工学の専門性をもつという本田さんは、入社以来、長く産業用無人ヘリコプターの開発を堪能。「技術で人や社会に貢献したい。そう実感できることが仕事のモチベーション」と語っていて、空からの農業の近代化に貢献してきました。

開発のフィールドを果樹園に移した現在もその思いはますます強まり、農業現場でのフィールドワークを重ねて見えてきた本質的な課題の解決に挑戦しているそうです。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘

塚田勝弘 近影
1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。クルマ、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。