日産・エクストレイルとマツダ・CX-60、アプローチは異なるが運転する楽しさを味わえる国産ミドルサイズSUV【新型車比較】

■日産「エクストレイル」とマツダ「CX-60」を乗り比べてみた

その年に登場したクルマの中から、No.1を選ぶ日本カー・オブ・ザ・イヤー。その10ベストカーが発表され、そのなかに国産ミドルサイズSUVの日産エクストレイルとマツダCX-60も選ばれています。

ここでは注目度の高い国産ミドルサイズSUVのニューモデル、日産エクストレイルとマツダCX-60を比較してみます。

●積極的に介入していることがわからない日産・エクストレイルの電子制御技術は圧巻

エクストレイル外観02
エクストレイルの走行シーン

4代目となる現行型日産・エクストレイルは、2022年7月に登場しました。初代モデルからのDNAである「タフギア」を継承しつつ、新たに「上質さ」を加えて、商品力に磨きを掛けています。

現行型エクストレイルは販売開始から約2週間で受注1万2000台を突破し、歴代モデルの中で最短の日数で1万台を超える受注を獲得。現在は受注を停止するほどの人気となっています。

現行型エクストレイルのセールスポイントは、進化した第2世代「e-POWER」と「VCターボ」、そして電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載したことです。

エクストレイル外観03
エクストレイルのフロントスタイル

現行型エクストレイルは、全車に発電用にVCターボを採用した1.5Lエンジンのe-POWERを搭載しています。VCターボというのは、日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジンのことで、常用域から加速時までエンジン回転数を抑え、圧倒的な静粛性を実現しています。

エクストレイル外観04
エクストレイルのリアスタイル

そして、現行型エクストレイルのもう一つのセールスポイントが、新4WDシステムのe-4ORCEです。このシステムは、日産の電動化技術と4WD制御技術、シャシー制御技術を統合した、電動駆動4輪制御技術です。

前後2基の高出力モーター、左右のブレーキを統合制御することで、4輪の駆動力を最適化し、雪道や山道の走破性に力を発揮するとともに、市街地走行などの日常シーンをはじめ、あらゆる路面状況においても、乗る人すべてに快適な乗り心地を提供してくれます。

エクストレイル内装02
エクストレイルのインパネ

現行型エクストレイルのボディサイズは、全長4,660mm×全幅1,840mm×全高1,720mm。乗車定員は2列シート仕様の5人乗りと、3列仕様の7人乗りを用意しています。

クルマの骨格にあたるプラットフォームも刷新されており、ボディ剛性と静粛性を向上させており、エンジンが始動した際の音や振動を抑えています。

また運転支援システムは、360度全ての方向の安全を確保する「360°セーフティーアシスト(全方位運転支援システム)」を採用。さらに「SOSコール」も搭載されています。

エクストレイル内装05
プロパイロットのスイッチ

ロングドライブなどで効果を発揮する、高速道路の単一車線での運転支援技術「プロパイロット」に「ナビリンク機能」を追加。これによりナビゲーションと連動し、地図データをもとに、制限速度に応じて設定速度の切り替えや、カーブに応じた減速支援など、ドライバーの操作頻度を軽減してくれます。

現行型エクストレイルに試乗して、最初に感じるのが高い静粛性です。これまでのe-POWERはエンジンが掛かっていないときは静かですが、発電のためにエンジンが掛かるとノイズが車内に入ってきました。

エクストレイル内装01
エクストレイルに搭載されているe-POWER

しかし、現行型エクストレイルに搭載されているVCターボを採用したe-POWERはエンジンが掛かったとメーターパネルに表示されても、エンジン音や振動はほとんど感じられません。

そして、新4WDシステムのe-4ORCEは、コーナリング時でもロールを抑えたフラットな乗り味が特徴です。初めて走行したワインディングでも、まるでクルマが道を知っているかのようにスムーズにコーナーを曲がってくれるので、運転していて、気持ち良いです。

エクストレイル内装06
シーンによって走行モードを切り替えできる

同乗者もロールなどの揺れが抑えられているので、快適そのもの。現行型エクストレイルは、乗員すべてが快適に楽しく移動できるクルマに仕立てられています。

一つ残念なのは、初代は200万円を切るリーズナブルなモデルでしたが、現行モデルは最も安いS 2WD車でも319万8800円と、かなり価格が高くなってしまっています。質感の高さを考えると致し方ないですが、誰もが手が届くような、もう少しリーズナブルなモデルが欲しいところです。

●マツダ「CX-60」のハンドリング性能は超絶ものだが、乗り心地やトルク感に物足りなさを感じる

続いては、2022年6月に受注を開始し、9月から販売開始されたマツダCX-60です。

9月から販売されているのは、マイルドハイブリッドを採用した3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンのみで、注目のPHEVなどは12月以降の発売。車両本体価格は299万2000円〜626万4500円と幅広くなっています。

CX-60外観01
CX-60の走行シーン

CX-60の受注も好調で、6月予約開始から約2ヵ月半で8,726台と、月販販売台数の4倍を超える受注となっています。そのうち約8割のユーザーが、直列6気筒ディーゼルターボを選択しています。

CX-60は、マツダの新世代ラージ商品群第1弾となるモデルで、現代のクルマに求められる高い安全性と環境性能を兼ね備えながら、高い走行性能とマツダデザイン、そしてクラフツマンシップの上質を纏わせたSUV。

CX-60のボディサイズは、全長4,740mm×全幅1,890mm×全高1,685mmと、エクストレイルより一回り大きいですが、全高は低くワイド&ローのフォルムが特徴です。

CX-60外観02
CX-60のフロントスタイル

新開発されたプラットフォームは、縦置き高出力パワーユニットに対応した「SKYACTIVマルチソリューションスケラーブルアーキテクチャー」を採用。

サスペンション形式はフロントにダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク。CX-60は人間中心の開発思想に基づきサスペンションをスムーズに動かすことで、どんなシーンにおいてもしなやかな乗り心地を実現しています。

CX-60内装01
CX-60に搭載されている3.3L直6ディーゼルターボエンジン

搭載する3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力254ps、最大トルク550Nmを発生。さらに最高出力12ps、最大トルク153Nmを発生するモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムです。

組み合わされるトランスミッションは、新開発のトルコンレス8速ATを採用。多段化による滑らかで応答の良い変速とワイドレンジ化により、走りと環境性能を両立しています。

CX-60外観03
CX-60のリアスタイル

現在販売されているディーゼルハイブリッド車の駆動方式は、2WD(FR)と新開発の後輪駆動ベースのi-ACTIV AWD。高いトラクション性能と理想的なハンドリング特性を実現しつつ、燃費性能は4WDでもWLTCモードで21.0〜21.1km/Lという優れた数値を発揮します。

そのほかにも、さまざまな走行シーンに最適化した「人馬一体の走り」を提供する「マツダインテリジェントドライブセレクト(Mi-Drive)」や、人馬一体の走りの楽しさをさらに高める「キネマティック・ポスチャー・コントロール」を採用しています。

CX-60内装04
CX-60のインパネ

快適装備では、「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」を採用しました。この機能は、ドライバーの体格に合わせて理想的なドライビングポジションを自動調整する自動ドライビングポジションガイドなど、すべてのお客様にクルマとの一体感、安心・安全を提供するものです。

CX-60の乗り味は、縦置きのエンジン+FRレイアウトが生み出す楽しい走りが特徴です。その中でも最も優れているのは、ハンドリング性能だと感じました。

CX-60内装06
Mi-DRIVEの切り替えスイッチ

試乗はタイトなカーブの続く箱根で行いましたが、CX-60はカーブの進入からハンドルを切ると、カーブを抜けるまでハンドルを切り足したり、戻したりすることなく抜けていきます。

ハンドルの切る量がピタッとはまるので、コーナリング中のクルマの姿勢も安定しており、乗員に安心感を与えてくれます。

CX-60内装05
CX-60のアダプティブクルーズコントロールのスイッチ

全幅1,890mmという大きなサイズのCX-60ですが、高いハンドリング性能によって、ボディの大きさを感じさせないシャープな身のこなしには驚かされました。

ややディーゼルらしい音が大きめなことと、低速域からのトルク感が薄く感じましたが、今後登場するPHEVなどに大きな期待を持たせてくれます。


注目度の高いエクストレイルとCX-60を乗り比べましたが、アプローチは異なります。が、両モデルとも運転する楽しさを追求しているのはハッキリと伝わってきます。走行安定性を電子制御が積極的に介入するエクストレイルと、控えめなのがCX-60です。

個人的には電気モーターを使用した4WDシステム、e-4ORCEの細やかな制御による走行安定性の高さに、乗員全員に対する高いホスピタリィを感じました。

(文・写真:萩原 文博)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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