■ポルシェが992型911にオフロード仕様を投入
911は、その卓越した走行性能をサーキットだけでなく、オフロードでも数多く披露してきました。
たとえば1978年の911 SCサファリは、5000kmの悪路を走破する東アフリカの「サファリラリー」に参戦。72台中13台のみがゴールラインを越えることができたという過酷なレースで、フォード・エスコートや三菱コルトランサーなど強敵を相手に2・4位の成績を収めています。
●1万km以上のオフロードでテストを敢行
そんな“砂漠の911”に、最新バージョンが誕生します。それが「911ダカール」です。992型911の派生モデルとなるこのクルマは、2022年11月16日のLAショーでアンベールされる予定となっています。
「911ダカール」の車名は、1984年にポルシェが4WDの911で初めて総合優勝を果たした1984年のパリダカにちなんだもの。その栄光の名前に負けぬよう、開発テストでは1万kmを超えるオフロード走行を繰り返したということです。
開発チームはヴァイザッハのオフロードコースだけでなく、1万kmのオフロードコースを含め、累計50万km以上の限界走行を世界中で実施しました。
その中には、南フランスの有名な“シャトー ド ラストゥールのテストコース”も。「すべてのダカールチームは、ラリーの前にヨーロッパでテストをするために、ここへ車両を持ち込むんです」 ポルシェのワークスドライバー、ロマン・デュマはそう説明しています。
2度の世界ラリー王者に輝くポルシェのレジェンドドライバー、ワルター・ロールもテストに参加しました。彼が試乗したのは、スウェーデンのアリエプローグの凍てつく湖の上。
素晴らしいコンディションにしつらえられた理想的な圧雪路で911ダカールの性能を吟味したワルターは、「信じられないくらい運転するのが楽しいクルマです。すべてがとにかく正確で、穏やかに作動します」とコメントしています。
レーシングドライバーのイェルク・ベルクマイスターも、その完成度に驚きの感想を漏らしました。「これだけの地上高とオールテレインタイヤを与えられたクルマが、アスファルトの上でも『ポルシェ911らしく』感じられるなんて思ってもみませんでした」
氷点下の北極圏では氷上や深い雪の中を、40度を超えるドバイやモロッコでは50mもの険しい砂丘を繰り返し走って実力を磨きあげてきた911ダカール。911の“もうひとつの顔”を見せる新しい派生モデルは、まもなく正式デビューを迎えます。
(三代やよい)