■埼玉・群馬・栃木の三県境は田んぼの中に!
三つの県に跨がる「三県境」は、全国に40ヵ所以上もあると言われていますが、そのほとんどは川の上や山奥などにあって容易に行くことはできません。
しかし、全国でも唯一、電車の最寄り駅から歩いて行けるような平地にある三県境があります。
それが埼玉・群馬・栃木の三県境です。
この三県境は、埼玉県加須市・群馬県板倉町・栃木県栃木市にあります。三県境の周囲は田んぼとなっていて、すぐ北には道の駅かぞわたらせ、北東には渡良瀬遊水池があり、南西にある東武鉄道日光線の柳生駅から歩いても10分程の場所です。
現在、三県境は観光スポットとして整備されていて、栃木県側には駐車場と遊歩道があります。
県境は用水路で区切られていて、中心には県境を示すプレートがある杭が建っています。杭の周りは歩けるように整地されていて、三県を3歩で一周することができます。
三県境の栃木県側には記念スタンプとシートが用意されています。スタンプは県境のプレートをイメージしたデザインです。
●なんでこんなところが三県境に?
それにしても、なんでここが三県境なんでしょう? 序盤にお話しましたが、三県境がある場所のほとんどは川の上や山の上にあります。これは、川や山の尾根・頂上が自治体の境界になることが多いことからも分かるかと思います。実はこの三県境がある場所も、昔は川だったのです。栃木県に沿っている水路の部分は旧渡良瀬川で、埼玉県と群馬県の間にある水路の部分は旧谷田川でした。
渡良瀬川の上流には鉱毒事件で有名な足尾銅山がありました。政府は鉱毒を沈殿させるため、1912〜1918年にかけて渡良瀬遊水地を造成。その際に渡良瀬川と谷田川の流路を大きく変更しました。
三県境に残った旧河川は民地として払い下げられ、三県境付近は沼地になっていたそうです。その後、1970年代に埋め立てて農耕地として整備した結果、全国でもここだけとなる平地の三県境が誕生しました。
しかし、土地の変化と共に三県境の境界点が不明瞭になったそうで、2016年1月に加須市・栃木市・板倉町合同で測量調査を実施。その際、1980年に群馬県が設置した県境確認用の杭が泥の中から発見されました。そして現在の三県境が定められています。
3市町は観光スポットとしてアピールするため、2018年に三県境を整備。手作りの説明板も設置されました。
現在も全国から多くの観光客が訪れている人気スポットになっていて、取材した日も遠く福岡から来た方がいました。
三県境の駐車場のキャパは少ないことと、アプローチする道路が狭いので、初めて訪れる人は道の駅かぞわたらせにクルマを駐めて歩いた方が便利なようです。
渡良瀬遊水地レジャーと合わせたドライブにいかがでしょうか。
(ぬまっち)