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■GR86に受注停止ではなく生産終了の噂
SNS界隈で「GR86生産終了」といった話が、まことしやかに流れています。SNSの特性上、もはや一次情報がどこにあったのかはわからない状態で、噂が噂を呼んで既成事実化しているという状況になっています。
はたして、GR86が生産終了になるという話がどこから出てきたのか、いくつかのファクトを整理してみることにしましょう。
まず、現時点(2022年9月末)ではGR86について生産終了という公式のアナウンスは出ていません。
トヨタのホームページで確認できる工場出荷目途によると『詳しくは販売店にお問い合わせください』となっていますから、順調に生産できているわけではないのは事実といえます。そのため販売店単位でいえば受注停止という対応になっているところが多いはずです。
しかしながら、GR86の兄弟車であり、生産を担当しているスバルで販売されるBRZについては、メーカーの発表として工場出荷時期の目途は3~4ヵ月程度となっています。少なくとも、この表記を見るかぎりBRZについては、それなりのペースで生産できているという風に見ることができます。
GR86の販売が終わってもBRZを作り続ける可能性がゼロとはいいませんが、兄弟車の片方がディスコンになって、もう一方が継続生産になるというのは自然な話とは思えません。
●欧州仕様は2年間限定と公言されている
ただし、GR86が販売終了になるという点についてキーワードだけでいえばファクトに思えるようなソースがあるのも事実です。
日米に遅れて、2022年6月に欧州での販売が始まったGR86ですが、発売開始の時点で『 ヨーロッパでの販売はわずか2年限定』となることがメーカーのリリースとして発表されています。
期間限定となる理由が何なのか、公表されていないのですが、ビジネス的な戦略としての限定というよりは、何らかの法規対応に関係する話であると考えることができます。
たとえば、EU圏でいえば、ちょうど2年後の2024年7月には乗用車におけるAEB(衝突被害軽減ブレーキ)とLKAS(車線維持アシスト機能)の義務化がはじまることになっています。
GR86/BRZともAT車についてはスバルの先進運転支援システム「アイサイト」を装備していますので、こうした法規へは対応しているといえますが、現時点ではMT車はアイサイト非搭載となっていますから、今のままではGR86のMT車は2年後にEU圏で売れなくなってしまうわけです。
ちなみに、日本でもAEBについては義務化となることが確定しています。国土交通省の発表によれば、国産の継続生産車においては2025年12月までには、一定条件下において停止車両・走行車両への追突を防ぎ、横断する歩行者との事故も避ける機能が必須となるのです。
いずれにしても、先進運転支援システムを持たない仕様のGR86/BRZが日本で販売できなくなるという未来は確定しています。
●2025年までにMTは消滅するかもしれない
あらためて、GR86生産終了の噂に関係しそうなファクトを整理してみると、次にようになります。
・GR86の生産終了についての公式発表はない
・BRZの工場出荷目途は3~4ヵ月程度
・EUでのGR86は2024年6月頃までの期間限定販売
・日本では2025年12月までにAEBが義務化になる
AEBについては、メーカーによってはMTとの組み合わせも存在していますが、スバル・アイサイトについては急制動によるエンストなどを問題として、MTとの組み合わせは基本的に認めてきていないという経緯があります。
バイワイヤのクラッチシステムなども存在していますので、技術的に解決できない話ではありませんが、スバルのスタンスが変わらない限り、MTのGR86/BRZにはアイサイトは装備されないと考えられます。
つまり、GR86/BRZにおけるMTの設定は、AEBが義務化になる段階で消滅してしまうかもしれません。そうならないよう、様々なアプローチからの技術開発を期待したいものです。