「RIBPORT RIB-Z38L」国内デビュー。ワークボートやミリタリーイメージが強いRIBをプレジャーユースとしたフラッグシップ

■日本プロデュースのプレジャーユース大型RIB(リジッド・インフレータブル・ボート)をシートライアル

日本国内では、水害などのレスキュー艇や海上保安庁の小型ワークボートやミリタリーでのイメージが強いRIB(リジッド・インフレータブル・ボート)だが、地中海を中心とするヨーロッパでは、レジャーユースの新しいカテゴリーとして、60フィートクラスまで登場するポピュラーな存在だ。プレジャーユースのRIBを日本国内に普及させる活動を積極的にやってきた「RIBPORT」が、本格的なプレジャーユースの大型RIBを設計建造し、「RIB-Z」シリーズとしてスタートさせた。そのフラッグシップ「RIBPORT RIB-Z38L」が国内デビューした。早速夏の終わりの湘南でシートライアルを行った。


●エア入りの浮遊体を船体周囲に持つRIBをラグジュアリーに

国内最大級38フィート、全長11.50m全幅3.15mのRIBが誕生した
国内最大級38フィート、全長11.50m全幅3.15mのRIBが誕生した

大型ラグジュアリーRIBは地中海エリアでは絶大な人気を誇り、欧州の主なボートショーでは専用ブースが設けられ、RIB専用ボートショーも開かれている。国内では30フィートを越えるRIBを見かけることは少ない。

株式会社RIBPORTは長年に渡り、イタリアのRIBのトップブランドZAR(ザール)の輸入販売を行ってきた。主に湖の作業船や小型観光船としての需要だ。本場の欧州では、そのソフトな乗り心地や走破性能、エア入りの浮遊体を船体周囲に持つ安全性等から、プレジャーユースの可能性が認知され、急速にプレジャーRIBのマーケットが拡大している。

そこでRIBPORT社は、オリジナルプロジェクトとして日本プロデュースの大型RIBの開発に挑んだ。なんと38フィート全長11.50m、このサイズのRIBを国内で見たことはない。

コロナ禍での建造、プロジェクトは国際的な広がりを見せた。設計はRIBの本場イタリア、建造現場は中国の青島、国際的なプロジェクトだが主体はRIBPORT社、RIBの可能性に掛ける伊藤英一社長の情熱が自らを推し進め実現したのだ。

●38フィート全長11.50m、チューブ含めて全幅3.15m、スリムでスタイリッシュ

夏はまだ煌きを残している。湘南の海に浮くRIB-Z38L。ブラックハルにホワイトのチューブ、ブラックのサイドバンパーベルト、ブラックのTトップ、真赤なシート類、ホワイトのエンジンフードのアウトボードはYAMAHA-F300G、300ps×2基。色彩のコントラストが艶やかだ。

そのたたずまいはなかなかスタイリッシュ。38フィート全長11.50m、チューブ含めて全幅3.15m、スリムなスタイリング。デッキレイアウトは中央にセンターコンソールを設けたフルオープン、フォアデッキはU字型シートとテーブルが用意され、サンベッドへの変換も可能だ。バウトップにこだわりの仕上げが見られる。

デッキ両舷のブルワークトップはチューブを見せず、ハルのFRPを伸ばしチークを貼り込むこだわり。フロア全面にチークが貼られ、アフトのブルワークトップにもチークがおごられている。センターコンソールの両舷サイドは、チューブがデッキサイドに露出され、ヘルムステーションへの乗り降りの気遣いが施されている。RIBを知り尽くした上での設計だ。

センターコンソール右舷サイドにヘルムステーションが設けられ、バケットタイプのキャプテンシートが2座用意される。コンソール前方にはラップアラウンドしたフロントスクリーンが立ち、ウッドグリップのステアリングの右にスロットル、その上にバウスラスタータブ、埋め込みも可能だがこの艇には後付けのGPSプロッターが用意される。

●YAMAHA F300G2基、計600psを採用。設計上2基で500ps~700psに対応

各種スイッチを含め、スパルタンなレイアウトを見せる。コンソール左舷からコンソール内のロアデッキに至る。チークフロアのそこはU字シートを持つミニキャビンとヘッド(トイレ)が用意され、仮眠は可能だ。ヘルムシートの背後にはギャレーが用意される。

アフトデッキもバウデッキ同様U字シートが回り込み、中央にはテーブルがセットされ、また大型サンベッドへの変換も可能だ。ボートピクニックの楽しさを満喫できる設えだ。シート下のストレージ、フロア下にも用意される。トランサムには清水シャワー、トーイングポール、スイミングプラットフォーム、スイミングラダーを装備、マリタイムのエンターテイメント対応に抜かりはない。

RIB船体を見てみよう。チューブの内側の船体モノハルはFRP、両サイドに3本のストレイキーが入るコンケーブのVハル。船底後部に一段のステップが切りこまれる。Hypalon(ハイパロン)素材のチューブは9つの気室に分かれ、そのチューブ径は0.45~0.56m、欧州の同クラスに比べて細身だ。マリーナのポンツーンに付けられていてのチューブを乗り越えての乗降に差しさわりはない。

搭載されるパワートレインはアウトボード2基掛け、250ps2基から350ps2基まで対応可能。このRIBにはYAMAHA F300G2基、計600psが採用されている。設計上の対応は2基で500ps~700psと。燃料タンクは700L、清水タンクは320Lを装備している。

●オープンスポーツカーの醍醐味、43ノット/5500rpmで快適に走行

軽快な走りを約束するハルとエンジンの好バランス、最高速43ノットを誇る
軽快な走りを約束するハルとエンジンの好バランス、最高速43ノットを誇る

湘南の夏、三浦半島南西に位置する長井の荒崎シップヤードを離岸しスロットルを入れていく。晴天、気温28度、南西風3m、波高0.5m。穏やかな湘南の海に迎えられる。38フィートの大型RIB、穏やかな海面、ハンプからプレーニングへスムーズな加速が続く。沖合にはセーリングヨット、遊漁船、刺し網。様々な海の状況を判断しながら、沖合の安全海域へ向かう。

一旦船速を落とし停船する。両舷前進ゆっくりとスロットルを入れていく。YAMAHA F300G 2基600psの駆動が水中に伝播する。一気に25ノット、トリムを上げ更に加速を続ける。高速域で水面剥離に寄与するステップドハル、更にスロットルを入れる。水面に近い低重心のフォルム、オープンスポーツカーの醍醐味が近似する。安定した姿勢で心地よい加速が続く。

30ノット、ターンを試みる。軽度のインサイドバンクを伴い回頭を続ける。強度な横Gを感じさせながらニュートラルなイメージ通りの半円を描く。そのまま8の字ターンに。自らが巻き起こした波に突っ込むが衝撃は柔らかい。両サイドのチューブのソフトな波当たり、海面ダンパーの役割を果たしている。

更にアクセル全開のフラットアウトを試みる。この日の最高速は43ノット/5500rpm。大型プレジャーRIBの魅力は、快適な走行性能と、ギャレーやヘッドを装備しアイランドホッピングやボートピクニックの楽しみを満喫できる設えを持つ、新しいカテゴリーの提案と言える。油壷湾に入りオープンデッキでのランチピクニックを満喫する。マリタイムの新潮流、ネクストステージが見えている。日本プロデュースの大型RIB、お楽しみはこれからだ。

●Z-38Lスペック

全長 11.50m
全幅 3.15m
チューブ径 0.45〜0.56m
気室数 9
深さ 0.5m
船体重量 3993kg
搭載馬力 500-700馬力
定員 14名
船体素材 FRP
チューブ素材 Hypalon1670dtx
燃費タンク 700L
清水タンク 320L
販売価格 3500万(搭載エンジンヤマハF300G2基込み・税別)

(山崎 憲司)

【関連リンク】

株式会社リブポート(〒158-0085東京都世田谷区等々力5-4-2-401/TEL・FAX 03-3701-8138)
http://ribport.com

この記事の著者

山﨑 憲治 近影

山﨑 憲治

1947年京都生まれ。子供のころから乗り物が大好き、三輪車、自転車、バイク、車、ボート。まだ空には至ってはいない悩みがある。
車とプレジャーボートに対する情熱は歳を得るとともに益々熱くなる。
日本人として最も多くのプレジャーボートのテスト経験者として評価が高い。海外のボートショーでもよく知られたマリンジャーナリストである。2000年~2006年日本カー・オブ・イヤー実行委員長。現・評議員。2008年~現在「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」実行委員長。パーフェクトボート誌顧問。
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