ホンダのバイクからエンジンが消える日は20年内にやって来る?【週刊クルマのミライ】

■ホンダが二輪のカーボンニュートラル計画を発表

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2025年までには趣味的な電動バイクも日米欧で販売する計画だ

2050年に企業としてのカーボンニュートラルを目指しているホンダが、二輪部門における取り組みと計画を発表しました。

結論からいえば『2040年代に全ての二輪製品でのカーボンニュートラルを実現することを目指し、ICE(内燃機関)の進化にも継続的に取り組みながら、今後の環境戦略の主軸として二輪車の電動化を加速させる』ということです。

ICE=エンジンを止めるということはないといいますが、それには販売地域においてカーボンニュートラル燃料(農産物やバイオなどによるCO2排出がないとされる燃料)が普及することが前提条件となります。

逆にいえば、カーボンニュートラル燃料を計画していない国や地域においてはエンジンを積んだ二輪は販売しないというわけです。

日本政府は、現時点でカーボンニュートラル燃料についてはそれほど積極的とはいえません。むしろ水素社会を目指している節があります。そして、ホンダの見解としては二輪には水素タンクを積むことが物理的に難しく、水素燃料電池や水素エンジンというのは難しいといいます。

つまり、ホンダの見立てを展開して理解すれば、20年以内に日本市場ではエンジンを積んだホンダのバイクを買えなくなるのかもしれません。

●2025年までにグローバルで電動二輪車を合計10モデル以上投入

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2030年あたりに販売するバイクの15%が電動タイプとなると見込まれている

さて、グローバル市場での電動化については確実に進んでいき、それに対応するというのがホンダのスタンスになります。

具体的には、5年以内にグローバルで100万台の電動バイクを生産、2030年にはホンダの総販売台数の約15%にあたる350万台レベルの電動バイクの販売を目指すということです。

とはいえ、電動化はビジネスユース、近距離ユースから進むという風にもホンダは想定しています。すでに日本でも郵便配達などでは郵政カブから電動スクーターへの置換が進んでいますが、そうした領域での電動化がまずは先行することでしょう。

また、アジア地区では電動モペットなどの普及も進んでいます。パーソナルユースであっても低速で使われるモビリティが電動化に進むと予想されるのです。

●快適に楽しめる電動スポーツバイクに期待

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趣味領域の電動バイク、スクータータイプとアメリカンタイプ、ネイキッドタイプが用意される模様

もちろん、冒頭で記したように2040年代に二輪部門でのカーボンニュートラルを目指すということは、ホンダがファン領域と呼ぶ、スポーツモデルなど趣味性の強いバイクも電動化が進むはずです。

当然ながら2040年になって、いきなり電動バイクを出してライバルと市場を奪い合うというのは現実的ではありません。すでにファン領域の電動バイクを出しているメーカーは出てきていますから、ホンダも遅れを取るわけにはいかないのです。

今回の発表では、ファン領域の電動バイクを日米欧で2024~2025年にローンチするという計画も明らかとなり、そのシルエットも公開されました。イラストから予想するに重心の低そうなアメリカンタイプ、ネイキッドタイプ、スクータータイプを計画しているようです。

モーター駆動のトルクフルな特性は、リッターバイクに乗っているようなフィーリングが期待できます。そうした余裕のトルクを、エンジンからの排熱を感じずに楽しめるのであれば筆者個人としては大歓迎ですが、皆さんはどう思いますか?

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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