新型フェアレディZに搭載されたターボエンジン、実はZへ積むことを念頭に開発されていた?

■新型フェアレディZの見どころは、なんといってもZ史上最強のエンジン

日産としては、高出力エンジンをモーターと組み合わせずに積む最後のモデルになるのではないか、なんて噂されている新型フェアレディZ

確かに二酸化炭素排出抑制の流れから言えば、燃費に不利な高出力エンジンをモーターと組み合わせずに車両へ搭載できる時間は限られていて、猶予はそう長くありません。そんな視点でいえば、新型フェアレディZは間違いなく歴史に残る1台となるでしょう。

新型フェアレディZは、日産で最後のピュアハイパワーエンジン車になる可能性が高い

いずれにせよ、Z史上最強となる405psのターボエンジンが新型フェアレディZの最大の注目ポイントだということに異論をはさむ人はいないのではないでしょうか。

ご存じのように、いくつかの変更や改良がおこなわれているものの、VR30DDTTエンジン自体はすでに「スカイライン400R」に搭載されているもの。

しかし、その開発時にフェアレディZへの搭載予定があったかと言えば、答えは「NO」。プロジェクトとしては、エンジンが開発されてからZとも組み合わせることが決まったのです。

●スカイライン400R用に開発されたエンジン、設計者はZへの搭載も考えていた?

しかし、エンジン開発担当のエンジニアによると、「VR30DDTTはZへの搭載が決まる前から、Zへの搭載に向けたポイントが設計に盛り込まれていた」と言います。

新型フェアレディZのエンジンルーム。タワーバーがエンジン上部の部品に食い込んでいる

それは、エンジンの上部の部品の形状。フェアレディZのエンジンルームはギッシリとメカが詰まっているうえに、エンジン上部はタワーバーと接触しないように“逃げ”を作る必要があります。

実はVR30DDTTは、Zへの搭載が決まる前から、あらかじめこの逃げとして左右のシリンダーブロックに挟まれたエンジン最上部にある部品の上部がくぼんだ形状になっているのでした。

パッとみても単にエンジンカバーだけが凹んでいるように見えますが、実はその下の部品(400Rと共通)もしっかりタワーバーを逃げる形状になっています。

担当の開発エンジニアによると、「エンジン開発時はZへの搭載は決まっていませんでした。だから上部を凹ませるのは設計要件ではなかったのですが、『このエンジンがZにも載ればいいな』と考えて、Zのエンジンルームに納まるようにあらかじめ設計しておきました」とのこと。

最高出力405psは文句なしにZ史上最強!

そんな彼らの配慮が、フェアレディZへのVR30DDTTエンジンの搭載をスムーズにしたというわけです。

もしフェアレディZのボンネットを開ける機会があれば、そんなところにも注目してみてはいかがでしょうか?

(文:工藤 貴宏

この記事の著者

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工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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