スズキのアルトが累計生産台数400万台突破。初代は、低価格の軽ボンネットバンブームをけん引【今日は何の日?8月1日】

■主軸モデルのアルトが、デビュー22年で累計400万台達成

2001(平成13)年8月1日、スズキは軽乗用車「アルト」の累計生産台数が400万台を突破したと、発表しました。1979年にデビューした初代アルトは、ボンネットバンという新しいジャンルを開拓して大ヒット。その後は、スズキを代表する軽乗用車として、スズキの成長を支えた主軸モデルです。

1998年にデビューした5代目アルト。この世代から、軽商用車から軽乗用車へ変更
1998年にデビューした5代目アルト。この世代から、軽商用車から軽乗用車へ変更

●スズキの成長を支えた軽ボンネットバンの初代アルト

排ガス規制対応で後れを取ったスズキは、1979年に商用車でありながら乗用車スタイルの新型車アルトを発売しました。

1984年にデビューした2代目アルト。。初代に続いて軽ボンネットバンスタイルを継続
1984年にデビューした2代目アルト。初代に続いて軽ボンネットバンスタイルを継続

商用車にすることのメリットは、物品税が非課税のため販売価格が下げられることです。軽商用車のアルトは、定員は4人ながら実質2人乗りで荷室が広い「軽ボンネットバン」という新しいジャンルを開拓。軽ボンネットバンが誕生した背景には、モータリゼーションが一段落して主婦層が足として利用するセカンドカー需要の増加、また日常で使用する乗車人数は通常2名以下である、といった社会背景がありました。

47万円という低価格で登場したアルトは、発売ととともに月販台数1万8000台を受注する空前の大ヒットモデルになりました。

●市場は、軽ボンネットバンからハイトワゴンへ

アルトに続いて他社からも続々とボンネットバンの軽自動車が登場して、1980年代の軽自動車市場を席巻しました。ところが、1989年消費税が導入されたことで物品税が廃止され、商用車と乗用車の税制格差がなくなりました。これによって、軽ボンネットバンの大きなメリットがなくなり、人気は下降し始めました。

1993年にデビューしたワゴンR。ハイトワゴンのパイオニア
1993年にデビューしたワゴンR。ハイトワゴンのパイオニア

そして1990年代には、新たな軽自動車のブームとしてハイトカーブームが起こりました。ハイトカーブームをけん引したのは、1993年に登場したスズキの「ワゴンR」です。最大のポイントは、車高を高くしてホイールベースを広げ、シートも上げることで大人4人が余裕をもって乗れる室内空間を確保したことでした。このブームは、さらに背の高いスーパーハイトワゴンへと進化して、現在軽自動車の約70%をハイトワゴン(含む、スーパーハイトワゴン)が占めるようになりました。

●2000年以降、ハイトワゴンの勢いに押されてアルトは苦戦が続く

2021年にデビューした新型(9代目)アルト。若い女性を意識した可愛いデザインを採用
2021年にデビューした新型(9代目)アルト。若い女性を意識した可愛いデザインを採用

2001年に累計400万台を記録したアルトですが、ハイトワゴンの躍進ととともに人気は右肩下がりになり、2020年度の販売台数は、6.1万台にとどまっています。かつては一世を風靡したアルトも、現在は高齢者や営業用の法人向けに限られているようです。

そのような中、人気挽回を狙った7年ぶりのフルモデルチェンジで昨年9代目アルトが登場しました。マイルドハイブリッドや安全運転技術、7インチディスプレイオーディオなど先進技術を採用し、可愛い丸みを帯びたデザインで若い女性ユーザーの獲得を目指しています。


スズキは、2021年5月に軽自動車累計販売台数2500万台を記録しましたが、累計台数が最も多いのがアルトで524万台、続いてワゴンRの481万台です。しかし、アルトはこの20年で124万台、ワゴンRはデビューから30年足らずで481万台、2000年以降の両モデルの勢いの違いが明らかですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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