フェラーリ・エンツォのデザイナー「ケン・オクヤマ」がデザインしたヤンマーのフラッグシップに乗った【YANMAR X47 Express Cruiser】

■ヤンマー100周年の集大成、クーペフォルムのスポーツボート「YANMAR X47 Express Cruiser」

ポルトフィーノのX47 Express Cruiser。エレガントなたたずまいを見せる
ポルトフィーノのX47 Express Cruiser。エレガントなたたずまいを見せる

真夏の青い海、ホワイト&レッドのコントラストを際立たせたシャープなクーペフォルムのスポーツボートが、スプレーを煌めかせカッ飛んでいる。湘南逗子沖での遭遇。謎めいた魅惑的なそのスポーツボート、さっそく正体に追ってみる。

浮いている姿の美しさ
浮いている姿の美しさ

その名は「YANMAR X47 Express Cruiser」。ディーゼルエンジンやフィッシングボートの名門、「ヤンマー」のフラッグシップとして2019年12月、カリブ海はバハマのラグジュアリーリゾートでお披露目された。ヤンマーが協賛するプロゴルフプレーヤー、タイガー・ウッズ主催のアメリカPGA外競技「ヒーローワールドチャレンジ」でのワールドプレミア。デザインは奥山清行ヤンマーホールディングス取締役。フェラーリ・エンツォやマセラティ・クアトロポルテのデザイナー、あのケンオクヤマ、その人。

ヤンマーのicon誇らしげに
ヤンマーのicon誇らしげに

基本モデルは2017年にマイアミでお披露目されたX39 Express Cruiserがその前身となる。ヤンマー創業100周年を機にスタートした「プレミアムブランドプロジェクト」の一環として誕生した。X47に比べて一回り小型のX39コンセプトモデル。2基のヤンマーFY01ディーゼルエンジンにヤンマーZTスターンドライブの組み合わせで43ノットを保証した。コンセプトモデルと銘打った通り数艇が建造された。

さてこのX47、その誕生には華々しいストーリーが潜んでいる。

カリブ海のリゾートでアイランドホッピングを
カリブ海のリゾートでアイランドホッピングを

基本コンセプト&プロデュースはヤンマー、船体建造はイタリアのAZIMUT Yachts。プロゴルファー タイガー・ウッズ、アーニー・エルス、歌手ジャスティン・ティンバーレイク、英国の投資家ジョー・ルイス、彼らが共同で創設したハイエンドリゾート開発や資産マネージメント等のサービスを提供する「NEXUS Luxury Collection」が協業して完成した。バハマのNEXUSリゾートでのデビューは富裕層のアイランドイクスプレスとしてイメージされ、第36回アメリカーズカップの公式VIPクルーザーとして提供された。

●クラシカルフォルムにモダンが潜む、鮮烈な色彩のX47

アフトデッキとサロンの繋がりがわかる
アフトデッキとサロンの繋がりがわかる

目の前にX47がいる。バウトップからガンネル、リアレーダーアーチまでの煌びやかな赤、ハルのスーパーホワイト、舷窓を潜ませるブラックアウトされたハルサイドのウィンドウライン。ルーフトップのブラック、バウデッキのホワイト、鮮烈な色彩のインパクト。ロングノーズショートデッキのクラシカルなフォルム、レーダーアーチの存在感、随所にモダンが潜む。

乗り込んでみる。スイミングプラットフォーム右舷サイドからアフトデッキへ、最新トレンドのシンセティックチークのフロアは、キャットウェイを通るウォークアラウンドでバウデッキへ至る。アフトデッキは、ホワイトレザーのコの字シートとカーボン仕様のテーブルが開放的なオープンラウンジを展開する。サロンドアは全開閉し、アフトデッキと一体感あふれるサロンが広がる。

ルーフトップのサンルーフは電動でオープンされ、一枚ガラスのフロントウィンドウと両サイドウィンドウからのたっぷりの採光に迎えられる。濃いブラウンウッドモードのフロア、左舷にコの字のホワイトレザーシート&テーブル、右舷にはホワイトオークのキャビネットにストレージのファニチュアが設えられる。その前にヘルムステーションがある。ボルスタータイプの2脚のヘルムシート。素材はホワイトのマリングレードのエコレザー。その前方にSIMRADのタッチスクリーンマルチモニターディスプレー2面を中心に据えたインスツールメントが展開する。

中央側のシート前にマルチスポークのスポーティなステアリングホイールが位置し、その右のコンソールテーブルには搭載エンジンのスロットルコントローラー、バウスラスター、ジョイスティックが位置する。その上部にアナログ表示のデジタルエンジンモニターが3面並ぶ。

搭載エンジンはヤンマー8LV370Hp(4.46L8気筒コモンレールツインターボ)×3基
搭載エンジンはヤンマー8LV370Hp(4.46L8気筒コモンレールツインターボ)×3基。ドライブはヤンマーZT370スターンドライブ×3基の組み合わせ。全て自社製。ヤンマーは更な大型エンジンを持つがそれの2基ではなくコンパクトなエンジンの3基を選んだ。トータルパワーと燃費はもとよりエンジンルームの収まりの良さを合理的に選択した

搭載エンジンはヤンマー8LV370Hp(4.46L 8気筒コモンレール・ツインターボ)×3基。ドライブはヤンマーZT370スターンドライブ×3基の組み合わせ。注目は3基掛けと言うこと。エンジン&ドライブ共にヤンマー自社製だ。全ての情報が集中するヘルムコンソール、ストイックな機能美にほれぼれとする。

ヤンマー8LV370Hp(4.46L8気筒コモンレールツインターボ)エンジン。コンパクト、軽量、高燃費
ヤンマー8LV370Hp(4.46L8気筒コモンレールツインターボ)エンジン。コンパクト、軽量、高燃費

ヘルム脇のコンパニオンウェイからロアデッキに。エンターテーメント空間が広がる。ロアラウンジだ。右舷にシンク、バーナー冷蔵庫などフル装備のギャレー、左舷にホワイトのコの字ソファ。ソファ後部にはシンクとシャワーのパウダールームが用意される。この空間、ファニチャーの淡いブラウン、トリムとギャレーテーブルのブラック、フロアの濃いブラウン、なんともシックなロアラウンジの演出がうかがえる。

その前方、バウにはスイートステートがある。アイランドタイプのベッド、クローゼット、トイレ&シャワーのパウダールーム。ノイズキャンセリングの下敷き、フロアにはカーペットが敷かれる。ファニチャーはホワイトオーク、そのファニチャーの淡いブラウンを中心にトーンコントロールされたデザインホテルのスイートの趣きだ。その設えはロアサロン後部ミジップにあるフルビームのスイートステートにも採用される。建造はイタリアトリノのAZIMUT Yachtsで行われた。インテリア素材はイタリア製、当然リュクスな雰囲気に包まれる。アフトデッキからキャットウェイを通りバウデッキに。ここにはカップル用のサンベッドがありリラクゼーションゾーンを見せる。

●新しいサロンクルーザーのカテゴリーを示唆

MAX3600rpm36.3ノットの走り
MAX3600rpm36.3ノットの走り

シートライアルを試みる。静かな息遣い、3基のエンジンは揃ってアイドリング550rpmを示している。離接岸はジョイスティックでイージーに。このシステムもヤンマー自社製だ。5ノットの制限海域を抜けるとスロットルを入れていく。スムーズな加速が始まる。リニアに加速を続け静寂の中で速度を掴んでいくジェントルな加速感に満たされる。左右スロットルをシングルレバーに切り替える。3基掛けの制御はセンターエンジンの回転数とギアを自動制御、右舷左舷エンジンに同調させる。回転制御はヤンマーVC20システム。3基計1110Hpをシングルレバーで管理する。

1200rpm7.7ノット16L/h(時間当たり消費燃料)、1600rpm9.5ノット33L/h、2000rpm10.8ノット63L/h、2400rpm13.1ノット84L/h、波を切りわける水音が聞こえる。ZIPWAKEのオートトリムはオートに。ハンプから一気にプレーニング、ZT370の二重反転ペラ3基の駆動が力強い。2800rpm25.4ノット108L/h、転舵を試みる。横揺れ防止のシーキーパージャイロが邪魔をすることはなく、軽いインサイドバンクを伴ってイメージ通りのトレース感で半円を描く。

デッドスローで走るシーン
デッドスローで走るシーン

スラロームを試みる、左右の切り返しにもスムーズな反応、軽快感に満たされる。直線走行、更にスロットルを入れていく。3000rpm30ノット120L/h。3200rpm32ノット138L/h。トランサムデッドライズは17度のディープV。3600rpm36.3ノット186L/h。最高速へのチャレンジは開発陣からのテクニカルデータを記す。3800rpm40.4ノット(74.82㎞/h)213L/h。素晴らしい。クーペフォルムのX47Express Cruiser、世界にサロンクルーザーの新しいカテゴリーの誕生を示唆したようだ。

新たに限定モデルも発表された。なんとルイ・ヴィトンやナイキ、タグ・ホイヤー等とのコラボ等、裏原のカリスマ、アーティスト藤原ヒロシFragment Designがプロデュースした「X47FRGMT」。オールブラックのハル、常識にとらわれないチャレンジャブルなインテリアが話題。仕掛けは整えられた。新たなラグジュアリークルーザーのネクストステージの提案だ。

アンカリングすればたおやかで豊かな時間が流れる
アンカリングすればたおやかで豊かな時間が流れる
バウデッキのサンベッド、緩やかに
バウデッキのサンベッド、緩やかに

さあ湾口を出て水平線のかなたに出かけよう。360度海しかない大海原を駆け抜けあのアーキペラーゴへ。島々をアイランドホッピング、パラダイスを目指すクルージングに出かけよう。その先へさあ、エンドレスサマーが始まる。

(文:山崎 憲治/写真:YANMAR)

この記事の著者

山﨑 憲治

山﨑 憲治 近影
1947年京都生まれ。子供のころから乗り物が大好き、三輪車、自転車、バイク、クルマ、ボート。まだ空には至ってはいない悩みがある。
クルマとプレジャーボートに対する情熱は歳を得るとともに益々熱くなる。日本人として最も多くのプレジャーボートのテスト経験者として評価が高い。海外のボートショーでもよく知られたマリンジャーナリストである。2000年~2006年日本カー・オブ・イヤー実行委員長。現・評議員。2008年~現在「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」実行委員長。パーフェクトボート誌顧問。