デビューは2024年度末?中央線快速用2階建てグリーン車が完成

■2階建てグリーン車で初めて両開き扉を採用

JR東日本が中央線快速電車に連結を予定している2階建てグリーン車が、神奈川県横浜市のJ-TREC横浜事業所で完成。7月12日(火)〜13日(水)に中央線の豊田車両センターに輸送されました。

J-TRECから豊田車両センターに輸送されている中央線快速電車用グリーン車

グリーン車の車体には、中央線のラインカラーであるオレンジバーミリオンの帯が配されています。車体中央部の客室は2階建、車端部は平屋構造となっていて、2階建て部分と平屋部分の間に幅1300mmの両開きドアが配置されています。

2階建てグリーン車で初めて両開きドアが採用されています

両開きドアの2階建てグリーン車はこれが初めてで、東京駅での短い折り返し時間内でスムーズな乗降を図ることが目的です。

なお、JR東日本では東海道線・宇都宮線・高崎線(上野東京ライン・湘南新宿ライン)・横須賀線・総武線快速・常磐線快速(中距離電車)に2階建てグリーン車を連結していますが、これらは幅810mmの片開きドアとなっています。

上野東京ラインの2階建てグリーン車は片開き扉です

●中央線快速にグリーン車は必要?

中央線快速電車グリーン車連結編成の運用範囲は、東京・新宿〜高尾・大月・青梅間となります。快速のほか速達列車として、中央特快・青梅特快・通勤特快・通勤快速を運転していますが、平均して混雑率が高くなっています。

そのため、ラッシュ時の着席保証列車として特急「はちおうじ」「おうめ」を運転しているほか、日中に運行している長距離特急の「あずさ」「かいじ」も着席列車として一定の需要があります。

このような事情から、有料座席車の需要はある程度あると思われます。

中央特快・青梅特快などの速達列車を数多く運行しています
実は特急列車も有料着席列車として定着しています

加えて、中央線快速のライバルである京王線は、朝夕のラッシュ時に新宿〜京王八王子間で有料座席指定列車「京王ライナー」を運転。中央線快速・青梅線のライバルとなる西武新宿線・拝島線も、夜間に西武新宿〜拝島間を有料座席指定列車「拝島ライナー」を運転しています。

これらの列車は運転する時間帯が限られているため、フルタイムでグリーン車を連結するメリットが生きてくると思われます。

京王線新宿〜京王八王子間を運行する「京王ライナー」
西武「拝島ライナー」は西武新宿〜拝島間を運行しています

●グリーン車の連結準備は目下進行中

中央線快速・青梅線のグリーン車は2両を現行の10両編成に挿入して12両編成化。4・5号車をグリーン車とします。最終的には58編成で運用する予定となっています。

12両編成化に際して、現在多くの駅でホームの長さを10両編成対応から12両編成対応に延長する工事を行っています。一部の駅では線路やポイントなどの設備の移設といった大がかりな工事も実施されます。また、これと並行してバリアフリー工事も進めています。

ホーム延伸工事中の荻窪駅
三鷹駅はポイントの移設を予定しています

既存のE233系普通車についても、2019年から順次4号車(12両編成化後は6号車)に車椅子対応トイレを設置する改造工事を進行中。これはグリーン車にトイレを設置していることに関連しています。

実は国土交通省の指導により、編成にトイレを設置する場合は、そのうち1箇所を車椅子対応トイレとしなければなりません。しかし、車椅子対応トイレは広いスペースが必要で、グリーン車に設置すると座席数が少なくなってしまいます。

そこでグリーン車には通常のトイレを設置する代わりに、既存車に車椅子対応トイレを設置して対応しています。

グリーン車を連結予定の編成にはホーム検知装置も設置しています。これは編成の端部に設置した超音波センサーによってホームの存在を検知する仕組みで、ホームが検知できない時はドアを開けられなくします。これによって12両編成化によって必要なホームを延長する長さをできるだけ短くすることができます。

●改造過渡期の珍編成にも注目

E233系にグリーン車を組み込む改造を行う期間中の車両不足を補うため、中央線快速電車には改造期間中だけの暫定的な編成が3編成運用しています。

常磐線・地下鉄千代田線から転属した209系1000番代

まずは209系1000番代。元々は常磐線・地下鉄千代田線用として1999年に登場した車両で2編成が製造されました。中央線のE233系0番代は2006年登場ですので、結講古い電車です。

2018年に常磐線・地下鉄千代田線から撤退して、中央線向けに手直しされて豊田車両センターに転属後、2019年から中央線快速電車で運用しています。地下鉄対応車で車体幅が狭くて、前面に非常ドアがあるのが特徴。また、製造が古いため車内の情報ディスプレイや自動放送がないほか、VVVFインバータ装置の素子も古くて、機器のノイズが大きいなど異彩を放っています。209系1000番代は、グリーン車組み込み完了後に引退すると思われます。

2020年に新造したE233系0番代T71編成

2020年にはE233系T71編成が新造されました。この編成も暫定用で、ホーム検知装置は装備していますが車椅子対応トイレはありません。グリーン車組み込み完了後は他線区に転出すると思われます。

●グリーン車の営業運転開始は2024年度末以降?

実は、中央線快速電車のグリーン車の営業開始は2020年度を予定していました。しかし、地上設備の工事に想定以上の時間と費用がかかることが判明して、営業開始を2023年度末に延期しました。さらに今年4月に半導体不足の影響により、さらに最低1年程度導入が遅れることが発表され、グリーン車の導入は2024年度末以降となっています。

豊田車両センターでE233系に組み込まれて8両編成となった2階建てグリーン車

営業開始3年弱前に登場したグリーン車の第1陣ですが、搬入された7月13日に早速E233系に組み込まれて8両編成を組成しました。当面は設備の確認試験などに使用されると思われます。

ある程度グリーン車の数が揃ってから順次編成に組み込みを開始して、過去の宇都宮線・高崎線・常磐線での事例から見れば、営業開始までPRを兼ねてグリーン車の無料開放を行うのでは?と予想されます。

筆者も実は中央線快速電車ユーザーなので、グリーン車の導入が待ち遠しいです。

ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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