■かつては高かった輸入車のメンテ費用。今はどうか
かつて、輸入車のメンテナンス費用は高いことが当たり前でした。とくに正規輸入車をあつかうディーラーでの整備は高いものでした。そもそも輸入車自体が高額で、高額なクルマに乗っている人は高額なメンテナンス費用を払うことに抵抗がありませんでしたし、そうしたランニングコストを承知でクルマを買っていました。
そうした状況に一石を投じたのが、BMWジャパンが1993年に開始した「サービスフリーウェイ」です。新車のときに契約&支払いすることで、一定の期間の基本メンテナンス費用が無料になるというものです。
今では一般的になってきているこうした方式も当時は画期的でした。当初のシステムでは多くの交換部品もパックに含まれていて、とくに長距離を乗るドライバーなどには歓迎されました。
あまりの充実さにサービス内容は見直されましたが、今でも多くの輸入車が同様のメンテナンスパックを採用しています。
輸入車と国産車の整備費用を比較しようと思いましたが、ひとつひとつの細かい整備費用の比較は非常に難しいものがあります。
そこで、メンテナンスパックで費用比較をしてみることにしました。選んだ車種は、世界のベンチマークであるフォルクスワーゲン・ゴルフと、日本が生んだ大ヒット作トヨタ・カローラです。
まず料金ですが、フォルクスワーゲン・ゴルフは5万8000円で初回車検まで(車検関連費用は含まず)のメンテナンスパックが用意されています。一方のトヨタ・カローラはトヨタモビリティ東京の場合、シンプルなセレクト33というプランで5万8760円となります。
内容を比較します。
ゴルフの場合、車検までの3年間の1年ごとの法定1年点検が2回分無料です。この点検無料については新車に無料で付帯するものです。トヨタ・カローラは1カ月点検と6カ月点検が無料です。さらにメンテナンスパックに加入すると、さらに6カ月ごとの点検が無料となり、33カ月目に車検前チェックという点検が付きます。無料点検の数は同じです。
フォルクスワーゲン・ゴルフはパックを選んでも点検回数は増えませんが、トヨタはサービスパックを選ぶと点検の機会が5回増えます。
次は交換部品などを見ていきましょう。
フォルクスワーゲン・ゴルフの場合は次のようになります。
・エンジンオイル、オイルフィルター、ドレンプラグ:最大2回
・ダストポーレンフィルター(エアコンフィルター):最大1回
・ブレーキフルード:最大2回
・フロントワイパー:最大2回
・リヤワイパー:最大2回
・ウォッシャー液、エンジンオイル、冷却水、アドブルー各補充:無制限(必要時)
・キー電池:無制限(必要時)
・ライトバルブ:無制限(必要時、ハロゲンバブルに限る)
一方、トヨタは3年間の期間中に次の12のメニューの中から9つを選べる方式です。つまり、エンジンオイルを6回交換+オイルフィルター3回交換でもいいですし、オイル交換4回+オイルフィルター4回+クイックはっ水洗車1回でもいいという具合です。さらに1項目につき3000円の料金で追加購入することが可能です。
・エンジンオイル交換
・フロントガラスクイックコート
・オイルフィルター交換
・クイックはっ水洗車
・各種添加剤注入
・夏↔冬タイヤ履き替え
・フロントワイパーゴム交換
・クリ-エアフィルター交換
・リヤワイパーゴム交換
・クイックエアコン洗浄
・タイヤローテション&フロント2輪バランス調整
・ワイヤレスキーバッテリー交換
カローラの場合、9回の選択ができるプランが5万8760円ですが、これを12回選択+車検整備1回(諸費用、部品代別)で11万6060円とするプランや、20回選択+車検整備2回(諸費用、部品代別)で20万8000円とするプランなどもあります。
基本プランはフォルクスワーゲン・ゴルフとトヨタ・カローラの価格差が760円なのでほぼ同じと考えていいでしょう。
利用方法によってはトヨタのほうがオイル交換を頻繁にできるなどの違いはありますが、必要以上にオイル効果をすることもないので、同等と考えていいでしょう。
トヨタのほうが点検回数が多いですが、そもそも不具合がなければ点検は不要で、点検回数を増やしてディーラーへの来店機会を作り、ビジネスにつなげる手法にも見てとれます。
こうしてみると維持費についてはさほどの差を感じることはありません。クルマの故障や不具合については、カローラは3年または6万km、ゴルフは3年または距離無制限で保証されているので、事故での破損などがない限りは、維持費についてはさほど差はないでしょう。
ただし、メーカー保証やサービスパックの期間が過ぎてからの費用となると話は変わってきます。
一概にはいえませんが、輸入車系ディーラーのほうが時間工賃が高い傾向にあります。つまり、同じ1時間の整備でも輸入車ディーラーのほうが支払い額が高くなることが多くあります。また、部品代についても国産車よりも高いことが多く見かけられます。
輸入車に簡単にリーズナブルに乗るには、メーカー保証があり、サービスパックが使える期間にするほうがいいでしょう。そうした期間が過ぎてしまったクルマにリーズナブルに乗っていくには、また別のノウハウが必要です。その話はまた別の機会にお知らせしたいと思います。
(文:諸星 陽一)