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■フォーラムエイト・ラリージャパン2022を盛り上げるには、ラリー競技を日本のお祭り文化にすることが大事
●ラリーストたちは競技では敵だけどみんな仲良し♪
2022年4月24日(日)、静岡県・富士スピードウェイで3年ぶりに行われた「モーターファンフェスタ2022」(以下、MFF)。
MFFでは、2022年11月10日(木)~ 13日(日)、愛知・岐阜をステージに、12年ぶりに日本で行われるWRC世界ラリー選手権の最終戦、第13戦『FORUM8 RALLY JAPAN2022 (フォーラムエイト・ラリージャパン2022)』開催を応援するべくラリーファンが集結。
特設ピットでは応援グッズ販売や特製ステッカー配布、また有名ラリーストを迎えたトークショーなどが行われました。
この日はあいにくの雨。ヘビーウェットのFSWメインストレートを使い、トヨタ・ヤリスWRC×勝田範彦選手、そしてSUBARU TEAM ARAI WRX STI×新井敏弘選手による同乗デモランも行われ、マシンの完成度や見惚れるほど凄いドライビングテクニックを魅せつけてくれました。
そして、その素晴らしいドライビングを披露してくれた「世界のトシ新井」こと新井敏弘選手、「照夫・範彦・貴元、親子3代ラリースト」の勝田範彦選手に加え、国際モータージャーナリスト「我らが親分」清水和夫選手もフォーラムエイト・ラリージャパン名誉!?応援団として、『ココだけのぶっちゃけ』的なトークショーを行ってくれました。
そこでは、お三方ともに根っからのラリーストであり、ラリー愛に満ち溢れたトークを繰り広げてくれました。
●PCWRC世界チャンプを2度獲得した「世界のトシ新井」
新井敏弘(Toshihiro Arai)選手は1966年12月25日生まれ、「ラリー天国」の群馬県出身。スバル・インプレッサWRX STIを駆って、全日本ラリー選手権(JRC)、世界ラリー選手権(WRC) などで活躍する日本を代表するラリースト。2005年、2007年にはPCWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)チャンピオンを獲得した、日本人唯一の世界ラリー選手権チャンピオンです。
Q:新井選手がラリーを始めたきっかけは?
新井:ラリーは大学生の頃、クルマの運転がうまくなりたくて18歳で始めたんだよね。
初めてモントレー(群馬県で行われる全日本ラリー選手権)を見たとき、ギャラリーが何万人も来ていて。コレ、よく轢かれないな!って思いながら観てたんです。
で、「オレこれに出よう!」と思った、それが18歳の時ね。まぁ~感動して、こんな世界があるんだ!って、その時に初めてラリーを知ったんです。
ラリーは一般道を速く走るので、いかに安全に速く走るか?が重要。サーキットと違って一般道はセーフティゾーンが無い、でもクルマを壊しちゃいけないので、ドリフトテクニックを憶えたりコッソリとクルマを回したり(8の字とか定常円旋回でしょうかね!)、いろんなテクニックを覚えたんです。
私の年代(現55歳)だと当時は毎日、赤城山へ行くんです。それこそ「頭文字D(イニシャルD)」の世界じゃないけど、林道など毎日走るんです。そうすると、どんどん運転がうまくなる。群馬はサーキットが無いからね~。
●照夫・範彦・貴元、「親子3代ラリースト」の勝田範彦
勝田範彦(Norihiko Katsuta)選手は1968年11月17日生まれ、愛知県出身のラリードライバー。父は初代全日本ラリー選手権王者で、WRCドライバーでもあり、カーショップ「LUCK(ラック)」を経営というラリー一家。が、実は本人、学生時代はバイクが趣味だったそうです。しかし、最終生産となるAE86を手に入れたのをきっかけに、ダートトライアルやラリーを本格的にスタート。1993年には全日本ラリー選手権にフル参戦。ターマック(舗装路)が速いことから『ターマック・キング』の異名を授かって活躍。2007年に年間6勝を挙げて自身初の全日本ラリーチャンピオンに。息子さんの貴元選手は、現在WRCで大活躍中と、3代続けてラリー一家の2代目です。
Q:勝田選手にとって、ラリーの魅力はどんなところにありますか?
勝田:いろんな道を走れることが一番の魅力ですね。そのいろんな道を走ることによって、技術が上手くなっていくんです。日本には難しい道がいっぱいある。でも、走り込んでいくと、それぞれの走り方の引き出しとか、テクニックが増えていくので、それが魅力だと思いますね。
それと、レースは1人だけど、ラリーはコ・ドライバーと2人。共感できるんですよね。
新井:お前は共感しないだろw!
勝田:落ちる(言葉通り、崖から落ちる)ときもあるじゃない、落ちなくてもリタイアするときとか。そんなとき、誰かが一緒にいるって凄く心強いんです。ボクは「道連れ」って言ってますけど!
清水:クラッシュしたり落ちるときはけっこう急だけど、ちゃんと「ゴメン!」って言いながらぶつかるねw!
●初代勝田選手と一緒に走っていた往年のラリースト、でも今は初心者?の清水和夫
クリッカーではこだわりインプレッションを動画で届けてくださっている、国際モータージャーナリストの清水和夫(Kazuo Shimizu)さんは、1954年東京生まれ。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久レース(現スーパー耐久)やGT選手権(現スーパーGT)、ル・マンやニュル24時間レースなど、国内外のレースにも参加している、レースとラリーの二刀流レーシングドライバー。ここ最近はヤリスCVTで全日本ラリー選手権やTGRラリーなど、ン十年ぶりにラリー競技へ再挑戦。昔と今とではラリーの走らせ方、ペースノートの作り方がまったく違うために日々勉強中と、70歳目前でも超元気!
Q:清水さんにとって、ラリーの魅力はどのようなところにありますか?
清水:私が最初に見たラリーは、東京の絵画館前をスタートする日本アルペンラリーを中学か高校生くらいのときに見たことがあって、なんかすごいな!って。静岡・富士~鹿児島・霧島5000kmラリーとか、みんな知らないでしょ?
オレにとってのラリーの魅力ね。レースは前後左右にクルマがいて、「何秒差だ!」とか「ペース上げろ!!」とか、チームからの無線がうるさい。変な話、戦争でいえば敵が目の前にいるんだよね。
でも、ラリーは走行中には順位が分からないから、戦艦と潜水艦の戦い、敵がどこにいるのか分からない、みたいな。だから、ラリーはまさに「自分との戦い」なんだよね。
新井:だからラリーは紳士のスポーツだって言われているんです。
勝田:新井を見ていると紳士のスポーツなんてのは分からないw!
清水:例えば、インプレッサでレースするとライバルはランエボなのよ。だからスバルのオレと三菱の連中とは、パドックで会っても目も合わせない。もうバチバチ! NISMOとTOMSの関係もバッチバチ!! もうね、レースはギスギス、バチバチなのよ。でも、ラリーはみんな仲いいのに驚いているんだよね。
Q:清水さんのCVTがなにかと話題になっていますけど…?
清水:オレが乗っているヤリスのCVT、最初はパンツのゴムが伸びたようなトランスミッションだった。オレがあんまり「パンツのゴム」を連呼するもんだから、トヨタの人たちが「清水和夫を黙らせろ!」と改良が進められて、今はダイレクト感があって「パンツードライブ」ですよw!
そのパンツのゴムってオレが最初に言ったってトヨタの人は言うんだけど、トヨタの車内用語でもラバーバンドフィールっていうから、トヨタもパンツのゴムだと思っていたんだよな。あ…ココに関係者いなきゃいいけどw。
●ラリージャパンの大成功を願って、スペシャリストたちからの一言二言三言…
2020年、2021年と、コロナの影響があり開催できなかったラリージャパンですが、2022年はようやく予定通り、11月10日(木)~ 13日(日)に開催できる予定です。いや、ぜひ開催していただきたいですよね!
そこで、ラリースペシャリストのお三方から、ラリージャパン無事開催へ向けてのエールなど、お言葉を一言二言三言…いただきました。
新井:ラリージャパンは2004年から2010年まで、6回にわたり北海道でやっていました。札幌ドームの中でやったりね。
2004年にラリージャパンを初めて帯広でやった時なんか、海外勢の皆さん、日本の交通法規を知らなくてね。日本とヨーロッパの交通法規ってまったく違うんですよ。「こんなに車速の遅い国は無い!」「高速道路をなんで70km/hで走らなきゃいけないんだ!」と。ワタシ、ずっと日本の交通法規を説明してたっていう大変な思いがありますw。
今年は、当時と違う新しいドライバーなので、また何かしでかすんじゃないか?って心配。そのへんはよく管理したほうがいいかと思いますよ。
勝田:今年のラリージャパンは私の地元、愛知がステージですから! 私がよ~く知っている道を走るんですよね。その道を世界のトップがどんな走りをするのか、凄い楽しみです。今年はトヨタスタジアムがサービスパークになるんですよね。
清水:WRCのスポンサーである旭化成は、日本の会社。フォーラムエイトも日本の会社。で、トヨタがWRCで今、一番元気! 結局、日本がWRCを支えているといってもいいよね。
だから、日本をラリーのホット国にすればいい。年1じゃなく、北海道と、富士は自衛隊の演習地走れるし、愛知、四国…とか。
あのさ、年1回開催しようとするから面倒クサイんだよ。年に数回やればオフィシャルも慣れるし、海外勢だって交通法規も分かる。新井ちゃん、どうよ?
新井:いい発想です。年4回、あの走りが観られるならいいですね!
清水:WRCは日本のお金でやっているみたいなところがあるのに、上のほうでルール決められて、日本はそのフォロワーになっている。日本がルールを決めに行けばいい。例えばハイブリッドじゃないとダメ、とかさ。
新井:以前は北海道だったけど、今回は本州の、しかも愛知・岐阜っていう日本の真ん中でやってくれるので、見てくれる人も多いと思いますよ。ラリーを日本全体に認知してもらうにもいいと思うんです。
北海道でやったときも凄い人数でしたからね。だから、日本にはラリーが好きな人も多いと思うんです。でも実際、走るのを見たことがある人は少なく、しかもレギュレーションで観戦できる場所の規制が厳しい。ヨーロッパなんかはどこでも観られるんだけど。
ヨーロッパではラリーはお祭り。スペインの牛追いなんかと一緒の考えなんです。日本で言う諏訪の御柱、大阪岸和田のだんじりとかと同じお祭りなんですよ。だんじりなんかラリーと同じじゃない? 街中を全開で行くし、ぶつかるし。でも、無くならない。
そのお祭り文化がヨーロッパでは残っているので、日本でもラリーを文化として今後、残してくれればいいですね。
清水:お金の話をすれば、WRCは日本のお金で運営しているようなものなのだから。
新井:日本のメーカーは景気が良かったらやる、景気が悪くなれば止める。それをまずは止めて欲しいよね。ヨーロッパではモータースポーツをやってるところは、景気がどうあれずっとやっている。
勝田:いい例がフォード。メーカーから援助はあまりないけど、でも細く長く続けている。だから、今も凄く強いクルマを作っている。シュコタやプジョーもそう。日本でもそういう文化になってくれればいいよね。
清水:ラリーをやっていないメーカーはダメだな!
●ぜひラリージャパンを生で観て欲しいね
最後は、お三方からラリーファンの皆様へ向けてのメッセージをいただきました。
新井:ラリージャパン、今年は開催されると思うので、ぜひ観に来てください。生で観てもらうと凄さが分かると思う。映像見てもらうと分かると思うけど、音も凄いし、ハイブリッドなので加速も凄い。その辺を観てもらって楽しんでもらえると嬉しいです。
勝田:ホント、ぜひ応援に来てもらって、貴元(息子さん)も今、WRCで頑張っているので、応援よろしくお願いします。
ついでに、ボクらが出ている全日本ラリー選手権も、お近くでやるときにはぜひ見に来てください!
清水:ボクは18歳の時にラリーからモータースポーツを始めたけど、今年免許取って50年。年間4万km、200万kmくらい、地球50周くらい走っているけど、まだ全日本戦などの近代ラリーは初心者なので、ふたりのテクニックを盗んでちょっとでも近づこうと思っています。全日本ラリー選手権もフォーラムエイト・ラリージャパン2022もよろしくお願いします!
(レポート:永光 やすの/画像:松永 和浩、MFF2022事務局、永光 やすの)
【関連リンク】
フォーラムエイト・ラリージャパン2022
https://rally-japan.jp/
モーターファンフェスタ2022 公式サイト
https://motorfanfesta.com/2022/