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■ウルトラの上のウルトラが登場した
グッドイヤーはスポーツ系のタイヤに「イーグルF1」のブランドネームを使っています。その「イーグルF1」シリーズのなかで、ウルトラハイパフォーマンスと呼ばれた「イーグルF1アシメトリック5」を上まわる、ウルトラUHP(ウルトラ・ウルトラハイパフォーマンス)に位置づけられるモデル「イーグルF1スーパースポーツ」に試乗しました。
「イーグルF1スーパースポーツ」はロータス・エミーラの純正タイヤとして装着されるほか、ポルシェ911GT3の認証タイヤにもなっている、まさにウルトラUHPタイヤなのです。
●テストフィールドがワインディングだったわけ
ハイパフォーマンスタイヤの試乗会ではあるものの、テストフィールドはサーキットではなく、公道のワインディングが選ばれました。実際に試乗してみるとその理由がはっきりとしました。
意外なほどに乗り心地がよく、静粛性も高いのです。装着車両は日産スカイライン400R。クルマ側もそれなりに静粛性や乗り心地にも気をつかいながらハイパフォーマンスが与えられているモデルなので、この組み合わせはベストだなと思えるものでした。
よくよく考えれば、ハイパフォーマンスタイヤといってもサーキットで走る時間は限られ、普段は一般道を走っています。Sタイヤならばサーキット試乗ですが、ハイパフォーマンスタイヤならワインディングで試すのが当たり前でしょう。
●高速での遠心力に負けない強い内部構造
縦方向、つまり加速のトラクションと減速のグリップは限界に至ることがなかったので、公道では十分に満足のいくレベルです。このあたりの性能について現代では不満はまず起きないと言えます。
強めの加速、ABS介入レベルのブレーキングでも十分なグリップを発揮します。とくにABS介入レベルのブレーキングでは、ペダルフィールもわかりやすいものでした。とはいえ、この領域はクルマとの相性も関係してきます。
従来のタイヤは高速時には遠心力の働きでトレッド面の横幅が狭まる傾向にあったものの、「イーグルF1スーパースポーツ」ではアラミドとナイロン素材を混紡した高剛性オーバーレイヤーを採用したパワーラインカバーテクノロジーとすることで、トレッド変化を抑制しトレッド幅の狭まりを解消しているといいます。こうした効果も高速走行時の安定性に寄与しているのでしょう。
冒頭にも書きましたが、「イーグルF1スーパースポーツ」はハイパフォーマンスタイヤとしては静かで乗り心地のいい部類に入るという印象です。路面の継ぎ目を乗り越えたりした際の突き上げ感も上手にいなされています。なによりも、ノイズがよく抑えられていました。とくに高音成分がないので、いやな音という印象がないのも好感でした。
●微少舵角での反応のよさと安定したハイスピードコーナリング
今回の試乗では、比較試乗として「イーグルF1アシメトリック」が用意されていました。装着車はスバルBRZだったので、完全な比較というわけにはいきませんが、「イーグルF1スーパースポーツ」が1段上にあるモデルであることを感じることができました。
こぶし半分程度の微少舵角での反応は「イーグルF1スーパースポーツ」のほうがシャープな動きです。「イーグルF1アシメトリック」と比べると半テンポくらい速く反応します。かといってグリップの立ち上がりが急激というほどではないので、レーンキープアシスト時もクルマがひょこひょこ動きづらいでしょう。
この部分はクルマ側のセッティングも関係してきますが、このタイヤを装着しようというクルマなら最初からある程度スポーティなタイヤを履いているはずです。たとえば、サイズが合うからミニバンに装着してしまおう…という考えは持たないほうがいいでしょう。
横Gがたまるような回り込んだコーナーでは、グッと路面をつかんでいて、どこまででもグリップしそうな感覚。エスケープゾーンがない公道で限界を試すこともできずでしたが、グリップが高次元まで持続するのは間違いないという感触です。
大型化されたショルダーブロックと強化されたサイドウォールの組み合わせは、コーナリング時の横方向グリップを高くしています。また、このように横Gが掛かった状態で左右にステアリングを振ってみた際の動きも素晴らしく、クイックでスポーティなものでした。
トレッドの左右ショルダーより部分のアウターセクションはドライ向きのコンパウンド、ストレートグルーブに囲まれたセンターセグメントはウエット向きのコンパウンドと、異なるコンパウンドを組み合わせ使うことで路面状況の変化にも対応しています。
ドライ性能のみを追い求めるSタイヤとは異なり、ロードタイヤの頂点を目指した「イーグルF1スーパースポーツ」はまさにウルトラ・ウルトラハイパフォーマンスを実現したタイヤといえるでしょう。
(文:諸星 陽一/写真:小林和久、日本グッドイヤー)