目次
■富士のコースにピッタリだった、BUSOU raffinee GT-R+ダンロップタイヤ
●2022 AUTOBACS SUPER GT Round2「FAV HOTEL FUJI GT 450km RACE」
今年2022年、4年ぶりにスーパーGT GT300にGT-Rで参戦しているクリッカー・ハイパー系試乗テストドライバーの井出有治さん。
初戦の岡山(4月16日-17日)は予選18番手、決勝11位と、チームの目標であったポイント獲得まであとひとつ…。
そして、5月3日(火・祝)-4日(水・祝)に行われた第2戦の富士では、なんと! 参戦2戦目にして予選4位から決勝2位と大躍進♪
この日、井出さんチームのBUSOU Drago CORSEは全GTレースファンの心を魅きつけました。
が、レースとしてはいろいろ波乱が起き…。
ということで、井出有治さんに富士でのチームのこと、レースの現場で思ったこと、次戦の鈴鹿戦に向けてのことなどを語っていただきました。(clicccar永光)
●参戦2戦目での2位表彰台は、チーム道上のGT300にとっても最上位♪
4年ぶりのスーパーGTで、12年ぶりに表彰台に上った井出有治です♪
そう、あれは…2010年Rd.6鈴鹿、GT500のAutobacs Racing Team Aguri(ホンダ・HSV-010 GT)で優勝して以来です。
でも、今回は最後まで戦って勝ち取った2位ではないのがちょっと残念、と言えばそうかも…。
●予選結果、ふたり合わせて90歳コンビが107歳コンビに負けた~
GT-RはRd.1の岡山より富士のコースに合っていることは以前から分かっていたことなので、足まわりのセッティングを富士用にしたくらいで、マシンに大きな変更は無し。
ボクは2組に分かれて行われる予選Q1を担当しました。コレでQ2にいけるかどーか…責任重大。でも、終わってみたら2番手♪
Q1を終えピットに帰ってタイムを見たら、予選に全集中していると思われる#96 K-tunes RC F GT3の1’35.816以下、2番手のボク#32 BUSOU raffinee GT-R(1’36.210)から7番手の#4 グッドスマイル 初音ミク AMG(1’36.295)まで、コンマ2秒台が6台も! ワンミスでQ1落ちだったのを知ったときにはビビりました。これってF1の予選よりも僅差ですよね(汗)。
Q2では柳田真孝選手(以下、マー)がボク以上に頑張ってくれたおかげで、1’35.367を出し決勝は4番手から。トップは2戦連続ポールとなった、2021チャンプの#61 SUBARU BRZ R&D SPORT。
ちなみにね。ボク(47歳)とマー(42歳)の年齢は合わせて89歳(マーは6月4日が誕生日なのでほぼ90歳!)。予選でボクらの前にいるK-tunes RC F GT3の新田守男(55歳)/高木真一(52歳)組は合計100歳越えの107歳。
同じGT300ではグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝(51歳)/片岡龍也(43歳)は計94歳。で、アールキューズ AMG GT3の和田久(60歳/ボクがカートに乗っていた時、和田さんはF3に乗っていて憧れていました)/城内政樹(59歳)組の計はなんと119歳! ボクらはまだまだ若いほう?なので、負けていられないです(笑)!
●「GT-Rドライバー・道上龍選手」が観られる日も近い…かも?
今回の富士は450kmと長距離レースなので、3名ドライバー体制のチームも多かったんです。なので、実はボクらのBUSOU Drago CORSEも半分本気で監督の道上龍さん(ちなみに49歳)と3人で出ようか!って話もあったんですよ。
もちろん、道上さんは乗る気満々! それに、GT300ではチーム道上として予選4位は最高リザルト(決勝2位もチーム道上として最高位)。「クルマも調子良さそうだからオレも乗りたい!」って。
でも、フリー走行での練習時間もないし、ダンロップ枠のタイヤテストもできない。調子いいとはいってもクルマはまだまだ仕上がっていないので、もうちょっと落ち着いたところで、皆さん待望の「道上龍選手登場!」にしようか?と。
「GT-Rで走ってみたいな…」って道上さんも言ってくれているので、機会があればぜひ乗ってもらいたいです。次の長距離レースの時には…期待してもいい…かも(超未確定)?
●決勝はダンロップのおかげもあり、2番手まで浮上…が
スタートはマーが担当。30周でピットインしボクに交代するまでの間に、予選4位から107歳コンビのK-tunes RC F GT3を抜いて3番手へ浮上! 交代後、タイヤがパフォーマンスを発揮してからは、トップを走るタイヤがきつそうな#10 TANAX GAINER GT-Rを射程距離に置き、2番手で様子見をしていました。
今回、ダンロップさんが用意してくれたタイヤが調子よくて、この位置にいられたのはタイヤパフォーマンスのおかげが物凄く大きかったですね。結果、GT300の6位までの間に、ダンロップタイヤを履いているマシンが5台も! それをみても、今年のダンロップはパフォーマンスに大貢献してくれているんです。ありがたい!!
他チームのピットインタイミングもあり、見た目は6番手=実質3番手での44周目(GT500の)、#22 アールキューズ AMG GT3が、抜きにかかっていたGT500にラインを譲ろうとしたときに単独クラッシュ、FCY(フルコースイエロー/全車80km/h制限)の後に赤旗に。
その後、リスタート時には2番手へ浮上です。やはりタイヤがきつそうな、1秒ほど前を行くトップのTANAX GAINER GT-Rもタイヤは同じダンロップですが、コチラはタイヤマネージメントに関してベテランだし、得意。ボクのほうがタイムも良かったので、あと10LAPくらい様子見たら…。
いける? いけそう? いけちゃうかも♪
●61周でレース終了、ポイント半分だけど2位確定。実はあの時…トイレ我慢中だった(汗)
皆さんもご存じのように、ストレートでGT500による大クラッシュが起きたことで2度目の赤旗中断となり、最終的にはGT500の100周予定が61周(GT300は58周)で終了し、ボクたちのBUSOU Drago CORSE はポイント半分だけど、GT300の2位が確定しました。
2度目の赤旗からレース再開となった場合、ダブルスティントでレース最後までボクが乗る予定でした。
でも「乗りたくない…」。それがボクの正直な気持ちでした。
時間的な理由からも、リスタート後2周のセーフティカーラン、全61周でレース終了でしたが、ストレート上の壊れたガードレールの前にタイヤバリアを積んだ状態を見たら、あの場にいたドライバーならだれもが思ったことなのではないでしょうか。
リスタートで全員がアドレナリン最高潮の中、もしあの場でまた何かがあれば、あのタイヤバリアでは取り返しのつかない状況になるのは想像に容易いです。ガードレールであれば当たっても滑ってくれるのでまだマシなんですけどね。
あの時、ボクはリスタートの準備として水分補給もしっかりやって待っていたのですが、なかなか再開せず、気温も下がってきて身体も冷え…。いよいよリスタートとなりマシンに乗り込んだ時、実はボク…「トイレ行きたい!」状態でした。その意味でも2周で終了してホッとしました。
現在のポイントランキングは、チームが12ポイントで5位。ドライバーは7.5ポイントで7位です。優勝もちょっと見えていたし、その点は途中終了がクヤシイです。フルでポイント獲れていればなぁ~。
でも、応急処置としてタイヤを並べてみたけど、やはりあの状態では危険が伴う状態でした。最終的にGTAがパレードランでレースを終わらせたのは、正解だったと思います。
新規チームとして参戦2戦目で、予選4位からの2位は出来すぎ!? 道上監督にとっては、ドライバーとしても監督としても、GT300参戦最上位を記録できたし。とにかく今回のRd.2富士は、ダンロップタイヤのパフォーマンスに大きく助けられた、それが1番ですね!
●あの時、何が起こってしまったのか? ボクの思いは…
59周目。GT500のトップ3台(#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra/#3 CRAFTSPORTS MOTUL Z/#37 KeePer TOM’S GR Supra)による激しいバトル中、トラブルのためにストレート右端をスローダウンしていたGT300(#50 Arnage MC86)を避けた時に起こった大アクシデント。
実際、あの時に何がどうして起こったのかは、本人にしか分からないことです。
直後に出回っていたSNS上では、「GT300がストレートであんなゆっくり走るなんて…」というのを見かけましたけど、トラブルでレコードラインを外し、キチっと右端を走っていたので、あのドライバーはまったく悪くありません。
とにかく、タイミングが悪かった…というのが、全て。
あのクルマが、あのスピードで、あの場所にいるときに、あの3台が、しかも#3が#39のスリップから出る瞬間でもありました。
#39が左に動いた瞬間、#3はけん制で左に動いたと思い右にハンドルを切りました。その瞬間、目前にスロー走行の#50がいたため慌てて左に避けたので、まさにドリフトの振り込みと同じ状態。1回右に切ってすぐ左なので、それでうわぁ~っと滑ってしまったんですね。
あとクルマ1~2台分くらい開いていれば避けられたと思うし、それに#39にピッタリとスリップに付いていたNissan Z GT500は左ハンドルなので、右前方はなおさら見にくいです。
●レースアクシデントとスポーツマンシップ
とにかく最悪なシチュエーションでした。そして、その真実はやはり、本人にしか分かりません。
あの瞬間の映像を見ただけだと、#39の関口雄飛選手の動きは「危ない!」と、皆さんは思ったかもしれません。
スロー走行車両に気付くのが遅かったのか? でも、認識していた可能性もあります。パッと見て0.5秒もあれば、ゆっくり走っているかどうかはすぐに分かるハズだし、ストレート右端を走っている時点で、クリアな状況じゃないのは明瞭です。
ただ、ミラーで後ろとの距離感をチェックしたり、メーターパネルを見ていた時間があって、スロー走行車両の発見が遅れて距離感を見誤った可能性だってあります。
また、スロー走行車両でもいいから、ほんのちょっとでもスリップが欲しくてギリギリまでいったのかもしれません。が、仮にそうだったとしても、通常は抵抗が無いよう、もう少し手前からなだらかにスリップから出るんですが、通常と比べたらあれは唐突な動きのようにも思えました。
しかし、勘違いして欲しくないのは、スロー走行車両をギリギリまで使ったとしても、違反ではないんです。またあの直前、ピットロードに入るクルマ(#31 apr GR SPORT PRIUS GT)のスリップも関口選手は使っていました。が、あれもレースではよく使う手段。誰もがちょっとでもスリップを使いたいですから。
皆さんに見えていたあの状態は、「レギュレーションはどうあれ、スポーツマンシップ的にどうか?」というふうに思われた方がいらっしゃったかもしれません。でも、スリップを最大限に使うことは、レースをする上で、レースに勝つうえでの手段なので、関口選手のあの行動は誰も非難できないものなのです。
●最悪が重なった末のレースアクシデント…と信じています
あの瞬間、あのGT300車両が、あの速度で、あの位置で、GT500がスリップから出る瞬間で…。
それが1秒、0.5秒でもずれていれば、ああはならなかったんです。誰かが意図的に誰かをはめた…そんなことは無いと、ボクは信じています。
#3 高星明誠選手は大クラッシュになってしまいましたが、あの状態でも#50の左後ろバンパーに軽くこすっただけでした。高星選手は、あの状況でよく咄嗟に避けられたな、と思います。関口選手が左横に出る瞬間、高星選手は反射的に車幅半分くらい右に切ったけど、それがなければ#50に軽くでも当たってないし、スピンもしていない可能性は高いです。
#39 、#3、#37の3台が連なっていたあの時、#31から離れた後に、#50がストレート右側をスロー走行していたことは、高星選手には見えていなかったと思います。
高星選手に大きな怪我がなく済み、また、グランドスタンドに大きなパーツが飛び込まなくて本当に良かったです。
そして、レースを楽しみにしてくれていたスーパーGTファンの方々に、後味の悪い残念なレースだと思われてしまったこと、本当に申し訳ない思いでいっぱいです。
●次戦の鈴鹿は大好きなコース。でもGT-Rにはちょっと不利?
気を取り直して!
次戦Rd.3は5月28日(土)-29日(日)の鈴鹿「2022 AUTOBACS SUPER GT Round3 たかのこのホテル SUZUKA GT 300km RACE」です。
鈴鹿ではまだ一度もGT-Rで走っていませんが、レイアウト的には…ちょっと難しいかなぁ。作戦は…無い!? 新しいセッティングを試したりはしますけど、フリー走行は土曜日の午前中に1時間しかないですから、そこで試せるのは限られています。あんまりギャンブルなセッティングも出来ないしね。
目標は、シングルでゴールできたらいいな。ン~Rd.2富士と同じく、タイヤ次第かな。
速いかどうかは別として(笑)、鈴鹿はボクが好きなコース。2008年(TEAM KUNIMITSU/ホンダNSX)や2010年(Autobacs Racing Team Aguri/ホンダ・HSV-010 GT)で鈴鹿を走ったときはポールを獲れたので。鈴鹿で連続ポイントが獲れるよう、皆さん応援していてくださいね!
(文:井出 有治/画像:(株)クレアーレ、松永 和浩/アシスト:永光 やすの)
【2022 AUTOBACS SUPER GT Round2 FAV HOTEL FUJI GT 450km RACE】
[GT300クラス 決勝結果]
順位 ゼッケン 車両名(ベース車名) ドライバー タイヤ
1位 #10 TANAX GAINER GT-R(NISSAN GT-R NISMO GT3) 富田竜一郎/大草りき/塩津 佑介 DL
2位 #34 BUSOU raffinee GT-R(NISSAN GT-R NISMO GT3) 柳田真孝/井出有治 DL
3位 #61 SUBARU BRZ R&D SPORT(SUBARU BRZ GT300) 井口卓人/山内英輝 DL
4位 #11 GAINER TANAX GT-R(NISSAN GT-R NISMO GT3) 安田裕信/石川京侍 DL
5位 #88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3(Lamborghini HURACAN GT3) 小暮卓史/元嶋佑弥 YH
6位 #96 K-tunes RC F GT3(LEXUS RC F GT3) 新田守男/高木真一 DL
(タイヤ:DL=ダンロップ/YH=ヨコハマ)
【関連リンク】
井出有治オフィシャルwebサイト
https://www.yuji-ide.com/
株式会社クレアーレ BUSOU-JAPAN DESIGN-
https://creare-busou.co.jp/
有限会社ドラゴ
https://www.facebook.com/DRAGO.CORSE/
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